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不動産オーナーさま向けコラム

マイナス金利解除が不動産投資に与える影響を徹底解説

2024.07.01

2024年3月、8年間続いたマイナス金利政策が解除され、17年ぶりに政策金利が引き上げられました。

 

この政策転換により、不動産投資を行っている方の中には、金利が大幅に上昇してローンの返済負担が増えるのではないかという不安を抱える人もいるかもしれません。

 

なぜ、この長期に渡って続いた『異次元の金融緩和』が終わりを迎えたのでしょうか。

 

その背後には、国内外の経済状況や金融政策の変化が大きく影響しています。

 

本記事では、マイナス金利政策の解除に至った背景を詳しく探り、これからの不動産投資にどのような影響が及ぶのかを解説します。

マイナス金利政策とは

マイナス金利政策とは、金融機関が中央銀行(以下、日本銀行または日銀)に預ける預金に対して、マイナスの金利を適用することです。

 

通常の場合、金融機関は日本銀行に預金すると一定の利息を受け取ります。

 

これに対し、マイナス金利では日本銀行にお金を預けると手数料を支払う形になります。

 

そのため、事実上預けるだけでコストが発生する状態になるのです。

マイナス金利政策の目

マイナス金利政策の主な目的は、デフレや低成長に直面する経済を刺激し、消費や投資を促進することです。

 

金融機関が日本銀行に預ける預金に対してマイナスの金利を課すことによって、日本銀行に資金を滞留させることを回避させ、企業や個人への貸し出しを増やすように誘導します。

 

これによって資金が市場に出回りやすくなり、経済活動を活発化させることが大きな狙いです。

 

また、マイナス金利政策は市場全体の金利を低下させる効果があります。

 

住宅ローンや企業の借入コストが下がり、消費者の購買意欲や企業の投資意欲が高まることも狙いのひとつです。

 

住宅ローン金利が下がることで、住宅購入がしやすくなり、不動産市場が活性化します。

 

その他、低金利環境は株式市場にも好影響を与えると考えられます。

 

低コストで調達した資金が株式市場に流れ、株価を押し上げる効果があるからです。

 

総じて、マイナス金利政策は多方面から経済の活性化を図るための効果的な手段といえるでしょう。

日本におけるマイナス金利の導入背景

2016年1月、日本銀行は長年にわたり低迷する国内経済とデフレ脱却を目指し、マイナス金利政策を導入しました。

 

日本経済は1990年代のバブル崩壊以降、持続的な低成長と物価の下落に苦しんでおり、バブル崩壊後の経済低迷期において、企業の収益悪化や雇用環境の悪化が続き、消費者の購買意欲も低迷を続ける状況だったのです。

 

そこで導入されたのが、アベノミクスの『三本の矢』として知られる経済政策で、量的・質的な金融緩和政策が実施され、公共投資や構造改革も進められましたが、期待された物価上昇率2%の目標は達成されませんでした。

 

そのため、デフレからの脱却を目指すためには、さらに強力な金融緩和策が必要と判断されました。

 

その結果、金融機関が日本銀行に預ける預金に対してマイナス金利を適用することが決定されたのです。

マイナス金利解除の背景

2024年3月、日銀はマイナス金利政策の解除に踏み切り、政策を転換しました。

 

ここでは、その背景について解説します。

経済回復と物価上昇

マイナス金利政策の導入から8年が経ち、日本経済は徐々に回復の兆しを見せています。

 

2016年に日本銀行がこの政策を導入した際の目的は、景気刺激とデフレ脱却でした。

 

長期間続いた低成長とデフレの克服が大きな課題でしたが、近年では経済成長率の向上と物価上昇の安定化が確認されるようになっています。

 

企業の収益が改善し、企業の設備投資の活発化や新規事業の展開と既存事業の拡大が進みました。

 

これにより、雇用が創出され労働市場も活況を呈しています。

 

このように雇用が安定することで、消費者の購買意欲も向上し、住宅購入や高額消費が増加している状況です。

 

また、世界経済の回復も日本経済にプラスの影響を与えています。

 

グローバルな景気回復に伴い、日本の輸出産業は恩恵を受け、貿易収支が改善しました。

 

特に、自動車や電子機器などの輸出が増加し、製造業全体の収益が向上しています。

 

これらの要因が重なり、消費者物価指数も徐々に上昇し、デフレの懸念が薄れてきました。

 

物価上昇は企業の収益をさらに改善し、賃金の引き上げやボーナスの支給増加に繋がっています。

 

こうした状況を踏まえ、金融政策を正常化し、過度な緩和状態からの脱却を図るために、マイナス金利の解除が決定されたのです。

中央銀行(日銀)の判断

マイナス金利の解除には、この政策の長期化によって国内金融機関の収益性が低下し業績が圧迫されていたという背景もありました。

 

金融機関は、低金利環境の中で利ざやが縮小し、収益を上げるのが難しくなっていました。

 

とりわけ、地方銀行や中小金融機関では収益源の多様化が進まず、経営が厳しい状況に置かれていたのです。

 

このため、日銀は金融機関全体の健全性を確保するために金利の正常化が不可欠と判断しました。

 

また、欧米諸国で金利引き上げの動きが見られているため、日本も金利を引き上げることで、資本流出を防ぐ必要がありました。

 

欧米諸国が金利を引き上げる中で、日本だけが低金利を維持し続けると、投資家はより高いリターンを求めて資金を海外に移動させる可能性が高まります。

 

金利の正常化は、こうした資本流出を防ぎ、国内経済の安定を図るためにも重要です。

賃金の上昇傾向

もう一つの背景として、賃金上昇の傾向が見られるようになったことも挙げられます。

 

長年にわたり日本企業において従業員の賃金は抑えられ続けてきましたが、2023年以降、従業員の賃金に上昇傾向が見られるようになりました。

 

この賃金上昇は、日銀が適度なインフレを目指す中で歓迎されています。

 

賃金の上昇は消費の拡大につながり、経済の活性化にプラスの影響があるからです。

 

適度なインフレは企業の収益性を高め、新たな投資や雇用の創出を促します。

 

こうした循環によって日本経済全体のバランスが取れ、安定した成長が期待されているのです。

 

賃金の上昇とインフレ率の安定化を実現して、経済の持続的な成長を促進しようとしているのが今回の政策転換の大きな狙いです。

マイナス金利解除がローン金利に与える影響

マイナス金利が解除されたことでローンの金利にどのような影響があるでしょうか。

 

ここでは、2024年4月以降のローン金利の状況と今後の変動の可能性について解説します。

2024年4月の変動金利はほぼ据え置き

2024年4月、大手金融機関は変動型の住宅ローンの適用金利をほぼ据え置きました。

 

変動金利の多くは短期金利に連動しており、その動向が住宅ローンの金利に反映されますが、現時点では大きな変動は見られません。

 

これは、銀行が市場の競争力を維持し顧客を引き留めるために適切な金利水準を維持しているためです。

 

こうした金利の据え置きは、金融機関の顧客サービス戦略の一環として位置づけられています。

今後のローン金利上昇の可能性

マイナス金利解除がローン金利に与える影響は、それほど大きくないというのが大方の専門家の見方です。

 

確かに、マイナス金利が解除され金融機関が日銀に支払っていたコストが変わりますが、それだけがローン金利上昇の要因ではありません。

 

ローン金利は、経済の成長率やインフレ率、競争状況、さらには国際的な金利動向など多くの要因によって決定されます。

 

また、金融機関は競争力を保つための戦略を実行することも考えられます。

 

市場でのシェアを守るために、各銀行は顧客を引き留めるための金利を維持し続ける可能性があるでしょう。

 

そのため、マイナス金利解除が直ちにローン金利上昇にはつながらず、影響は限定的であると予想されます。

投資用不動産市場への影響

マイナス金利が解除されて投資用不動産市場にどのような影響があるでしょうか。

 

ここでは、不動産賃料への影響について解説します。

賃料への影響

不動産投資市場では、賃料への影響が考えられます。

 

一般的に、不動産の賃料は物価上昇に遅れて反応する傾向があります。

 

つまり、物価が上昇すると、一定のタイムラグの後に賃料も上昇する可能性があるということです。

 

実際に一部の地域では、既に賃料の上昇が見られています。

 

そのため、今後インフレが進んで大幅な物価上昇があったとしても、賃料市場もその動きに連動すると予想されます。

 

不動産投資家は、市場の動向を注視しながら、適切な賃料設定をする必要があるでしょう。

不動産価格への影響

マイナス金利の解除後も、金融政策は引き続き緩和的な傾向を示しています。

 

こうした状況の影響で、都市部などの好条件の物件は依然として価格上昇を続けており、不動産市場は堅調に推移する見込みです。

 

ただし、一部の物件では引き続き価格の下落傾向が見られています。

 

そのため、物件ごとの市場状況や需要動向を見極めることが重要です。

 

投資を検討する際には、地域や物件の特性を十分に分析し、リスクを最小限に抑えるための戦略を慎重に考える必要があります。

中長期的な経済動向

この先の中長期的な経済動向を考えるうえで、日本社会の人口減少とそれに伴う国内市場の縮小は気になるところです。

 

人口減少による人手不足は、企業にとって賃金アップの圧力となり賃金の上昇が見込まれる一方で、国内市場の需要は減少していく傾向があります。

 

このような状況下では、デフレを防止するためには適度な物価上昇が必要です。

 

そのため、大幅な物価上昇がなければ、緩和的な金利政策は維持されるでしょう。

 

これは、経済の安定性を保ちつつデフレリスクを回避するための戦略的な判断となります。

今後とるべき不動産投資の戦略

マイナス金利が解除された後も、緩和的な金利政策が維持されると予想されます。

 

そうした状況で、今後どのような不動産投資の戦略をとるべきかを解説します。

金利上昇リスクを想定した投資

今後の不動産投資戦略として、金利上昇リスクを想定しておくことが重要です。

 

大幅な金利上昇は見込まれませんが、ローン選びは慎重に行う必要があります。

 

金利の動向に留意しながら、金利変動リスクやローンの借り入れ条件を吟味することが肝要です。

 

また、物価上昇や賃金上昇などの経済指標を常にチェックし、インフレ動向にも注視する必要があるでしょう。

 

もしインフレが進行すれば、市場動向を見極めながら適正な賃料設定を行うことが不可欠です。

 

投資家はリスク管理を徹底し、市場の変化に柔軟に対応することが求められます。

物件の見極めが重要

不動産投資において、物件の選定は非常に重要です。

 

近年、好立地の物件は価値が継続的に上昇しています。

 

円安の影響もあり、海外からの投資も拡大しているため、人気エリアの物件は今後も値上がりが期待できるでしょう。


また、新たな不動産購入を検討する際には、立地条件だけでなく、人口動向や地域の発展計画なども考慮することが重要です。

 

地域の将来性や需要の見込みを正確に判断することで、投資リスクを最小限に抑えることができます。

まとめ

2024年3月、8年間続いたマイナス金利政策が解除され、17年ぶりに政策金利が引き上げられました。

 

長きにわたった『異次元の金融緩和』が方針転換したことで、市場からも大きく注目されました。

 

しかし、今のところ固定型・変動型ともに金利に大きな変化は見られていません。

 

現在の経済状況や市場の反応を見ていると、今後金利上昇の可能性があるのは、追加の利上げが発表された後だと考えられます。

 

しかし、欧米のような大幅な物価上昇や賃金の上昇がなければ、日本国内の金利上昇の可能性は少なく、緩和傾向は続いていくと予測されています。

 

実情、日本のインフレ率や賃金上昇は依然として低水準にとどまっており、急激な金利上昇のリスクは低いというのが一般的な考えです。

 

ただし、金利の動向は不動産市況や投資家への影響が大きいため、引き続き注意する必要があります。

 

不動産投資においては、金利の上昇は借入コストの増加につながり、収益性に直結するため、不動産投資を行っている方は最新の金利動向を常に把握しておきましょう。

 

長期で安定した不動産経営を続けていくためには、常に経済の変化に気を配り、素早く対応できるよう備えておくことが求められます。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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