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不動産オーナーさま向けコラム

アパート経営をやめるタイミングとは?出口戦略を徹底解説

2024.05.15

不動産経営が成功したか失敗だったかの最終的な答えが出るのは、出口戦略がうまくいくかどうかにかかっています。

 

アパートオーナーの中には、物件の収益については安定して確保できたものの、出口戦略でつまずいてしまい、トータルでは大きな損失になってしまったという方も少なくありません。

 

それくらいアパート経営の際には、取得時から常に出口戦略を考えて経営することが重要といわれています。

 

では、どのように考えていけば出口戦略はうまくいくのか、改めて出口戦略の重要性を確認しておきましょう。

 

この記事では、30年後に考えられるリスク、出口戦略の選択肢、売却のタイミング、出口戦略の成功のポイントなどを解説します。

 

ぜひ最後までお読みいただき、ご自身のアパート経営の参考にしていただきたいと思います。

不動産経営の出口戦略とは

投資の世界では、投下した資金からどれだけの利益をあげたかが重要となります。

 

購入した金額よりも高い金額で売却し、手数料や借入金利などを差し引いて、しっかりと利益が出ていれば成功だと言えます。

 

ただし、不動産の場合は株式投資などとは違った特徴がありますので、詳しく見ていきましょう。

 

出口戦略とは

不動産経営では、取得・運用・売却・処分までが事業の一連の流れとなります。

 

賃貸アパート経営の場合であれば、取得した物件を貸し出して家賃を得ていきますが、どんな物件であってもいつかは出口を迎えると考えておいたほうがよいでしょう。

 

市場の変化や物件の経年劣化、居住者ニーズの変化等によって、次第に家賃を得るのが難しくなってくる時期が来ます。

 

したがって、どのタイミングで撤退するのがよいのかを、しっかりと見極めて決断することも必要になります。

なぜ出口戦略が重要なのか

不動産経営では、最終的に売却したところで収支が確定するものです。

 

つまり、ローンで物件を購入した場合は、売却金額でローンの残額を返済し、賃貸運営で得た収入と税金や諸経費を計算して、初めて最終的な損益が明らかになります。

 

不動産経営には、家賃収入による「インカムゲイン」と、不動産売却で得られる「キャピタルゲイン」の2種類の収益があるためです。

 

不動産では市場の変動により価格が変動しますので、よいタイミングで売却できればキャピタルゲインで大きな利益を得られますが、市場の状況が悪ければ大きなマイナスになる可能性もあります。

 

一方、運用中はマイナスであったとしても、売却で大きなキャピタルゲインが得られれば、最終的にはプラスになることも珍しくありません。

 

それだけ出口戦略は、不動産経営の成否を決める大きなカギとなります。

 

30年後に考えられるリスクとは

物件を取得しアパート経営を始めてから30年後は、売却などの出口戦略を実行する目安となる時期といえるでしょう。

 

しかし、30年経過した物件には、経年による劣化や市場の変化などさまざまな要素が関係してきます。

 

ここでは取得した物件の30年後にどのようなリスクがあるのか、考えてみましょう。

空室リスク

30年経過した物件は、定期的なメンテナンスをしていたとしても老朽化は避けられません。

 

築浅の物件と比べると、外観デザインや設備が古くなり、入居者が付きにくくなります。

 

築浅物件であれば、退去者が出たとしてもすぐに別の入居者が見つかりますが、築古物件では新しい入居者を見つけるのが困難です。

 

次第に空室が増えることになり、家賃収入が低下するリスクがあるでしょう。

 

空室が増えて家賃収入が少なくなる一方で、修繕費用などがかさむようになるため、収支が次第に悪化していきます。

家賃の下落リスク

取得後30年の物件で入居者を確保するためには、入居者のニーズに合ったリフォーム工事の実施や、場合によっては家賃の減額などの対応をせざるを得ないでしょう。

 

特に、周囲に新しい賃貸物件ができて競争となった場合には、新しい物件に入居者が流れていくのに対抗するために付加価値となる設備などを導入して差別化を図ることも必要になります。

 

因みに2018年の総務省の調査によると、賃貸物件の家賃は毎年0.8%程度の下落が見られるとのことです。

 

それが30年間続くと、25%近く家賃を値下げすることになります。

 

減少した年間の家賃収入で、ローンの返済や税金、経費の支払い、修繕の費用などがカバーできるかどうか、しっかりと見極めなければなりません。

 

尚、昨今では物価高騰等によりインフレの状態であるため、賃料自体は上昇傾向にあります。

 

よって金利上昇を想定する中で、賃料の下落率を考慮する必要があるということになります。

 

参照:総務省統計局「借家家賃の経年変化について」

建物の老朽化リスク

建物は目で見てもすぐにわかりませんが年々劣化しており、10年単位で見れば、はっきりとわかるような形で現れます。

 

例えば、外観では外壁の劣化・汚れ・割れ、鉄部の錆、屋根材の劣化、室内では水回りやエアコン、給湯器などの室内設備の故障が発生しやすくなるものです。

 

30年も経過すると、あちこちで不具合が発生するようになり合わせるとまとまった出費が必要になります。

 

この場合の修繕や設備改修には数百~数千万円単位の費用がかかりますが、怠ると居住者の生活に支障が出る漏水や水道管の破損など大きなトラブルが発生する可能性が高まります。

金利上昇リスク

アパート経営をする方の多くが金融機関からの借入で物件取得しているため、変動金利の場合は金利上昇のリスクも頭に入れておかなければなりません。

 

リスクを考慮していないと、金利が上昇してしまって毎月の返済額が上がり、経営を圧迫する可能性があります。

 

金利の変動を完全に予想することはできませんが、アパート経営を行う場合は金利のことも頭に入れておくようにしましょう。

 

なお、金利上昇のリスクを完全になくしたいのであれば、金利はやや高くなりますが固定金利のローンでの借り入れがおすすめです。

 

また、変動金利であったとしても金利上昇の局面に入ったところで、ローンの借り換えで対応できます。

 

通常、金利上昇の局面になると固定金利が先に上昇し、その後に変動金利が上がるというサイクルがあります。

 

金利の変動に常に気をつけていれば対応は可能です。

周辺環境の変化リスク

30年の経過で街の様子が大きく変わることがあります。

 

再開発や大型施設の進出で人の流れが変わり、これまで好立地であったところが、ある日を境にそうでなくなる可能性があるのです。

 

また、アパート周辺に大学や大企業の工場などがあり、毎年一定の需要が見込めていたところも、移転や撤退してしまうとアパート経営にも大きな影響があります。

 

こうした周辺環境の変化には、事前に情報が公開されるので見落とさないようにしましょう。

 

しっかり情報収集して対応を考えておくことが重要です。

出口戦略としての選択肢

出口戦略の如何によってアパート経営の成否が決まります。

 

物件を売却するのが一番多いケースですが、それ以外にも選択肢があります。

 

出口戦略を検討する際には、どのような選択肢があるのか知っておいたほうがよいでしょう。

そのまま売却

建物の修繕や維持にかかる費用をなくし、手元の現金を増やしたい場合にはそのまま売却する選択肢が考えられます。

 

取得時よりも土地の値段が上がっていれば、十分な利益を得られることでしょう。

 

そういった場合はよいのですが、売却して利益を確定するのがよいのか、そのまま保有して家賃収入を継続して得るのがよいのか迷うケースもあると思います。

 

その場合は、売却利益から売却にかかる経費や税金を差し引いた金額が、年間の家賃収入の5倍以上あるかどうかがひとつの目安としてください。

 

入居者がいる状態であっても、そのままオーナーチェンジが可能で、入居者がいるほうが売りやすくなります。

更地にして売却

建物が老朽化して修繕費用が多くかかるような場合は、取り壊して更地にすると売却しやすくなります。

 

更地のほうが利用の自由度が高まるため、早く高く売れる可能性が高まるでしょう。

 

ただし、入居者がいる場合には立ち退いてもらわなければなりません。

 

立ち退き交渉をすることや、立ち退きにかかる費用や要する期間のことも検討しておくことが必要です。

 

その他、解体費用がかかることや、更地にすると住宅用地の特例がなくなり固定資産税が最大6倍にも高くなることも頭に入れておく必要があります。

自己使用

区分所有のマンションや戸建ての借家は、投資用の物件ではなく、自己使用物件として活用するのも出口戦略の一つの選択肢です。

 

例えば、自分や家族が住む家として利用する場合や、賃借人が購入しそのまま住み続けるケースもあるでしょう。

 

賃借人が住み慣れた家であれば、通常に売り出す場合よりも高値で買い取ってもらえる可能性もあります。

 

ただし、投資用として運用していた不動産を自宅にすると、減価償却ができなくなりますので注意が必要です。

建て替え

建物が老朽化してきたとしても、周辺環境から見てこの先のニーズが見込めるエリアであれば、新しい建物に建て替えてアパート経営を再スタートすることも選択肢として考えてもよいでしょう。

 

現在の居住者の立ち退きや、建て替え費用などの問題があるので、不動産管理会社や金融機関、建築会社などと相談しながら話を進めていくのがおすすめです。

売却に最適なタイミング

 

出口戦略では、売却を選択するケースが多いのですが、そのタイミングはいつがよいのでしょうか。

 

いくつかのパターンが考えられますので、チェックしてみましょう。

不動産市場の値上がり時

不動産の売却のタイミングを決める一番の決め手は、市場の状況でしょう。

 

値段が上がって売却で十分な利益が得られるタイミングで売却したいところですが、値上がりがいつまで続くのかも気になるところです。

 

国土交通省の「不動産価格指数」によると、不動産価格は2013年から上昇が続いています。

 

特に東京などの大都市圏では、人件費や資材費の値上がりで建築費が大幅に高くなっていることから不動産価格が上昇し、特にマンションの値上がりが目立っている状況です。

 

また、地方では値下がりが続いていますが、値下がり幅は小さくなってきています。


参照:国土交通省「不動産価格指数」

減価償却期間の終了

アパートの建築費などは、一括で支払った場合でも耐用年数で分割して費用計上することが可能です。

 

この減価償却制度によって、帳簿上の利益を減らせるので節税効果が高いのですが、木造アパートでは22年間で減価償却期間は終了します。

 

減価償却期間が終了すると、計上できる費用が大幅に減り、課税額が上がることになります。


減価償却期間が終わるころは、建物の老朽化も進み、家賃収入も減少が予想されることから、売却のタイミングとして捉えているケースも多いようです。

入居者の退去時

区分マンションや戸建て物件などでは、居住用として購入する可能性もあるため、入居者が住んでいない状態のほうが、購入対象が広がり売却しやすくなります。

 

立地がよく間取りや設備がニーズに合っていれば、売却金額が高くなる可能性があるでしょう。

大規模修繕工事前

建物は年月とともに劣化していきますので、定期的な修繕が必要になります。具体的には10年~15年の頻度で大規模な修繕工事が必要です。

 

賃貸アパートの場合、大規模修繕工事にかかる費用はオーナーが負担します。

 

オーナーは大規模修繕工事にかかる費用を賃貸収入から積み立てておくのが一般的ですが、修繕後の家賃収入の増加も見込めないということであれば、その前にうまく売却するというのもタイミングとしてはよいでしょう。

所有から5年経過後

個人事業主の場合、所有期間が5年以下の不動産の売却で得た収入に対する税金は以下のように設定されています。

 

所得税30%、住民税9%、復興特別所得税(2037年まで)0.63%で、合計39.63%です。

 

一方で、5年を超えると、所得税率15%、住民税率5%、復興特別所得税0.315%で合計20.315%と、かなり安くなります。

 

早く売却したい場合でも、5年間経過してからというのが目安になるでしょう。

出口戦略で成功するためには

出口戦略で成功するためには、考えておくべき重要なポイントがいくつかあります。

 

あらかじめ確認しておきましょう。

購入時に売却のことを考えておく

アパート経営をするには、物件を購入するときに出口戦略をとりやすい物件を選ぶことが、何よりも重要です。

 

購入した後では、建物の立地を変えることはできませんが、立地は不動産投資をするうえで1番重要といっても過言ではありません。

 

賃貸ニーズのあるエリアか、周りに競合物件が多すぎないか、などしっかり考えてから購入するようにしましょう。

自己資金を多く使って取得しておく

物件購入時には自己資金をできるだけ多く投入しておくと、ローン返済の負担が軽くなり、出口戦略を考えやすくなります。

 

物件の売却時にローン残高が多い状態だと、売却価格によってはローンの残金を完済できない可能性が出てきます。

 

そうなると、売却のタイミングが難しくなるでしょう。

 

また、毎月の返済額が少なければその分手取り額が増えるため、出口戦略の対策に使う費用も捻出しやすくなります。

物件価値の維持に努める

オーナーチェンジ物件として売却をする場合には、建物の価値が十分残っているかどうかが重要になります。

 

物件の維持管理には日頃から気をつけておきましょう。

 

建物の管理状態がよく、きれいに維持されていれば、入居者も付きやすく、高値で売却しやすくなります。

 

ただし、リフォームを検討する場合には注意が必要です。

 

リフォームをしたからといって、工事費用に見合う分の売却価格になるとは限らないからです。

 

リフォームで家賃を高めて物件を保有し続けるか、リフォームをせずに売却するか、どちらがよいのかシミュレーションをしてみる必要があります。

まとめ

不動産経営では、出口戦略がうまくいくかどうかで、最終的な成否が判定されます。

 

不動産の取得の段階から出口戦略を頭に入れて物件選びをすることが、何よりも大切といえるでしょう。

 

また、物件購入した時点から、減価償却期間や大規模修繕工事のタイミングはある程度想定できますので、それらの要素を加えたシミュレーションをしておくことをおすすめします。

 

運用を始めてから細かな修正を加えていくと、さらに成功の確率が高まるので、覚えておきましょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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