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不動産オーナーさま向けコラム

老朽化したアパートを放置するとどうなる?対応策も解説(賃貸経営)

2023.11.15

アパートの所有者の中には、老朽化による建物の劣化や入居者とのトラブルリスクに目を瞑り、放置する方もいます。

 

しかし、このような放置は、予想を超える危険やトラブルの原因になりかねず、場合によっては人命にかかわる大きな事故につながる可能性もあり、大変危険です。

 

この記事では、老朽化したアパートの放置がもたらす潜在的な問題と、それに対する効果的な対応策について詳しく解説します。

老朽化したアパートを放置するとどういう問題が起こるのか

アパートの中には、建ててからメンテナンスや対策が行われずに数十年放置されているものも少なくありません。

 

当然ながら、時間の経過とともに老朽化は進行していきます。

 

老朽化が進行すると、建物の倒壊などの重大な問題が生じる可能性が高まるため、単純に費用と手間がかかるといった理由で放置するのは非常に危険です。

 

ここでは、アパートの老朽化と放置がもたらす様々な問題やリスクを詳細に解説していきます。

建物倒壊の危険性と責任

老朽化したアパートが直面する最も深刻な問題は、建物の倒壊です。

 

特に1981年6月以前に建築確認済証が発行された旧建築基準法(いわゆる旧耐震基準)が適用された木造建物では、現行の耐震強度基準(震度6強〜7程度の地震に耐える能力)を満たしていないケースが少なくありません。

 

日本は世界有数の地震大国であり、2011年の東日本大震災の際には震度7が観測されるなど、大きな地震が発生するリスクが常に存在します。

 

実際、国土交通省は南海トラフ地震の発生確率は今後30年以内に7~8割であると予測を発表しました。

 

このような大震災時には、老朽化したアパートは倒壊の危険が高まります。また、台風の影響での倒壊のリスクも否定できません。

 

倒壊した場合、入居者に大きな被害が及ぶことが予想され、アパート所有者としての法的責任も発生する可能性が高いので、放置せず今後の対策を講じるようにしましょう。

水道管などの劣化が原因による損害

老朽化したアパートは、建物の外壁や屋根、共有スペース、見えにくいところで上下水道配管やガス配管の劣化など、さまざまな問題を引き起こします。

 

そして、劣化によって入居者(賃借人)に損害が生じると、アパートの所有者(賃貸人)は民法606条の建物修繕義務に基づき、損害賠償を請求されかねません。

 

例えば、古い建物の中には鉛管を使用している場合があり、鉛管が原因で健康被害を引き起こしてしまうと、修繕義務違反に認定される可能性が高いです。

 

また、コンクリートブロック塀や屋根の劣化が原因で通行人や近隣住民に被害を及ぼした場合、民法717条第1項の工作物責任により、損害賠償責任が問われる可能性があります。

 

このような法的責任を背負うリスクがあるため、老朽化アパートの放置は危険性が非常に高いことを理解しておきましょう。

修繕トラブルが発生する

アパートは建物の劣化に伴い、改修工事や修繕が必要になります。

 

さらに老朽化が進行すると、これらの対処の頻度や規模は大きくなっていくことでしょう。

 

とはいえ、民法606条第1項に基づき、アパートの所有者(賃貸人)にはこれらの費用を負担する義務があります。

 

資金面が苦しいからと放置してしまうと、修繕費が増加するリスクがあるうえに、賃借人からの修繕要求を所有者が対応しない場合、民法611条に基づく賃料の減額や支払い拒否などの2次トラブルが発生する可能性が高いです。

 

余計な労力や費用を発生させないためにも老朽化アパートの維持管理は、放置せずに早期に行うようにしましょう。

入居者が集まりにくく収益が低下する

老朽化が進行したアパートは、入居者から見れば魅力が少なく映ります。

 

多くの人が家を借りる際、立地や家賃だけでなく、より新しく綺麗な建物に住むことを希望するため、古く劣化したアパートは避けられがちです。

 

この結果、空室率が上昇し、収益の低下に繋がります。空室を埋めるための対策として、賃料を地域相場よりも大幅に下げなくてはならない事態も考えられます。

 

所有者にとって、老朽化したアパートの収益性を維持することは大きな課題と言えるでしょう。

老朽化したアパートの対策方法

老朽化アパートの問題の解決策を考えると、最も効果的な対策は建て替えです。

 

しかし、建て替えの場合、現在住んでいる入居者(賃借人)の立ち退き交渉を行う必要があります。

 

この点を考慮しつつ、老朽化アパートのリノベーションや維持対策について、以下で詳しく解説します。

アパートをそのまま利用する

老朽化の程度がまだ進んでいないアパートの場合、単に入居者が少ないだけであれば、大規模な改修やリノベーションをせずとも、適切な空室対策を実施することで対応可能です。

 

例えば、賃料の調整を行うことで、入居率を向上させることが期待できます。

 

具体的な空室対策について、以下の表にまとめたので参考にしてみてください。

 

 対策1 資料や入居者のターゲットを見直し、募集の門戸を広げる

 対策2

家賃の減額や敷金の値下げ・廃止をすることで入居者の初期費用負担を減らす
 対策3 既存の設備を最新型の製品に交換するなどアピールポイントを増やし、内覧ができる機会を増やす
 対策4 共用部の定期清掃や植栽剪定をこまめに実施し第一印象のイメージアップを図る
 対策5 家具などを仮置きしてモデルルームを作り、内覧の際に実生活の想像ができるようにする
 対策6 入居者優遇のキャンペーンやフリーレントの設定などで他の物件との差別化を図る
 対策7 インターネット無料やCATVの導入など、入居者にとって有益な環境を整える
 対策8 内装の一部の変更や外壁のペンキ塗りなどの小規模のリフォームをする

 

上記を参考にして経営しているアパートで有効な対策を実施してみてください。

アパートを売却し買い替える

アパート経営者としては、老朽化した物件を売却し、新しいアパートの経営を考えることも一つの選択肢です。

 

この方法を選択する利点は、アパートの取り壊し費用が不要となる点や現在の入居者への立ち退き交渉の手間も省ける点が挙げられます。

 

しかし、築年数が経過しているアパートの売却価格は低くなる傾向があるため、売却から新築への投資計画には十分な注意が必要です。

 

特に、著しく老朽化が進んでいるアパートの場合、修繕費が高くなることや買手の融資が付き難いことなどが理由となり、売却価格が予測よりも低くなるリスクが高まりますので、適切な売却戦略と再投資計画の策定が求められます。

老朽化したアパート建て替える

建て替える方法だと新しい建物で好条件で入居者が募れますので、長期的に見ると有利ですが、十分な調査が必要です。

 

たとえ建て替えたとしても、立地や建築プランなどの面で費用対効果に問題があれば、十分な収益が得られない可能性があるためです。

 

実際に建て替えるには、入居者への立ち退き料や取り壊しの費用、新しい建物の建設費と、投資額が相当大きくなります。

 

さらには、立退きや取り壊しから新築物件に借手がつくまでは賃料収入が入ってきません。

 

そのため、投資額が十分回収できるかどうか、収支計画をもとに事業の採算性を見定めるようにしましょう。

老朽化したアパートをリノベーションする

建て替えに比べて低予算でアパートの価値を向上させたい場合、リノベーションが適切な選択となる場合もあります。

 

リノベーションとは取り壊しを行わず、現在の建物に新たな機能や付加価値を加えるために、主に間取りや空間のデザインを変更する手法です。

 

ただし、築年数が経過し老朽化が進んでいるアパートの場合、構造躯体(建物の骨組み部分)も老朽化していることがあります。

 

これに対処するためには、大掛かりなリノベーションが求められ、その結果として予算オーバーとなる可能性も考慮しなければなりません。

 

リノベーションの予算や費用対効果を検討し、想定した予算を大きく超える場合は、建て替えも選択肢として検討することをおすすめします。

老朽化したアパートをリフォームする

アパートの老朽化の進行具合に応じて、全面的なリノベーションの前に部分的なリフォームが適切な場合もあります。

 

リフォームは、お風呂の浴槽の取り替えやキッチンの更新、壁や床のクロスの張り替え、外壁塗装の塗り替えなど、特定の部位の改修のことです。

 

このような部分改修は、リノベーション全体に比べて工事期間が短縮され、費用面でのメリットが期待できます。

別の土地活用を検討する

土地を所有している場合、アパートを単純に建て替えるだけではなく、さまざまな土地活用の方法を検討するのもおすすめです。

 

立地や土地の広さに応じて、最適な活用法を選ぶことで、長期的な収益向上が期待できます。

 

以下に、土地活用の代表的な方法をまとめたので確認してください。

 

メリット デメリット
アパート・マンション ・安定した収入が得られる
・固定資産税や都市計画税を大幅に減額できる
・初期投資の費用が高額になる
・空室のリスクや修繕費がかかる
駐車場 ・初期費用が他の活用方法よりも安価
・狭い土地でも活用できる
・更地に戻しやすい
・賃貸不動産と比較すると節税効果と収益性が低い
・立地によっては需要が低い
医療施設 ・需要が増している
・地域の貢献度が高い
・転用が難しい
・流動性が低い
高齢者向け施設 ・需要が増している
・安定した収入が得られる

・転用が難しい
・初期費用が高額

オフィスビル ・賃料単価が高い
・需要が高い地域ではテナントが集まりやすい
・安定した収入が得られる
・立地によっては需要が低い
・初期費用が高額
・空室時のリスクが大きい
借地 ・コストが抑えられる ・30年以上の長期契約になる
・転用難しい
コインランドリー ・管理者が必要ない
・狭い土地でも利用できる

・設備の導入費用が高額
・競合との差別化が難しい

 

老朽化したアパート対策を実施する際の注意点

老朽化したアパートの対策にはさまざまな方法がありますが、その際に注意すべき点がいくつかあります。

 

ここでは老朽化したアパート対策についてどうすればよいかを紹介していきます。

費用がかからない空室対策で効果があるのかよく検討する

アパートやマンションの空室対策を検討する際、まずはリノベーションや建て替えといった大掛かりな方法を選択する前に、低コストで効果的な方法がないかを探ることが重要です。

 

確かに、老朽化が進行していれば、建て替えが避けられない場合もあります。

 

しかし、まだ建物がそこまで劣化していない場合、さまざまなアイデアや工夫によって入居率を向上させることも可能です。

 

建て替えを決める前に、その実際の必要性を十分に検討し、最適な対応策を見つけ出しましょう。

費用対効果をよく検討する

アパートやマンションの入居率が低下する原因は多岐にわたります。

 

例えば、近隣の会社や工場、ショッピングセンターの移転や撤退が入居率の低下に影響している場合も少なくありません。

 

建物の老朽化だけが原因でない場合も多いため、大規模なリノベーションや建て替えを検討する前に、地域の状況や市場動向を把握しましょう。

 

大きな投資をする前に、ROI(投資対効果)を検討し、適切な戦略を立てることが重要です。

まとめ

放置された老朽化アパートは、倒壊リスク、増加する修繕費、入居率の低下、賃料の下落という悪循環に陥る危険があります。

 

そのため、リフォームやリノベーションはもちろん、状況に応じては建て替えも視野に入れて対策を迅速に行うことが必要です。

 

しかし、建て替えなどは入居者との立ち退き交渉が必要になるなど、実行するには困難も少なくありません。

 

そこで、この記事では、老朽化したアパートの放置がもたらす潜在的な問題と、それに対する効果的な対応策について解説しました。

 

古いアパートやマンションを所有している方は、今後の賃貸経営計画にこの記事を参考にしてみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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