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不動産オーナーさま向けコラム

不動産投資における円安の影響とは?メリット・デメリットを解説

2024.06.01

新型コロナの影響が落ち着いた2022年から円安傾向が続いていますが、円安は日本経済全体に影響し、私たちの生活にも大きく関わっています。

 

不動産経営をする方の中には、円安によって不動産投資がどのような影響を受けるのか心配に思う方もいるかもしれません。

 

この記事では、円安が不動産投資にどのような影響があるのか、円安のメリット・デメリットや今後の予測について解説します。

円安が続いている原因

円安が続いている要因について解説します。

アメリカ経済好調でインフレ抑制の動き

2020年初頭から広まった新型コロナの影響によって、世界経済は大きなダメージを受けました。

 

厳しい経済状況から回復させるため、各国では金利を大幅に下げてお金が市場に回りやすくする政策をとりました。

 

この時、アメリカの政策金利も0%まで引き下げられています。

 

その後、新型コロナはおさまり、好調だったアメリカ経済が急回復したことでインフレ傾向が強まりました。

 

そこでアメリカは2022年3月に金利を上げて経済の引き締めに方向転換したのです。

日本は金融緩和(低金利)を維持

各国で利上げの動きがある中で、日本銀行は2024年3月にようやくマイナス金利政策を解除しましたが、低金利を維持し続けています。

 

日本でも多少のインフレ傾向はありますが、目標のインフレ率である2%には安定的に達していないことから、大幅な利上げはしないというのが日銀の説明です。

 

一方、金利を上げられないのは、日本経済の状況の他に、日銀が多くの国債を保有していることも理由のひとつといわれています。

 

政策金利を上げれば国債の金利も上がりますので、その分国が返済しなければならない借金の額が増えます。

 

それを賄うためには、社会福祉や防衛にかける予算を減らしたり、増税をしたりしなければならなくなる可能性があるからです。

 

そのため、日本の金利は現状のまま続くという予想も多くなっています。

円安の不動産業界への影響

円安によって輸入品の値上がりなど私たちの生活に影響が出ていますが、不動産業界にはどのような影響があるのでしょうか。

海外資本の流入

以前から日本の不動産は海外の投資家から人気がありました。

 

円安によって割安に見えるため、投資対象としての魅力が上がっています。

 

海外の投資家が日本の不動産を買う動きが目立ってきており、今後も海外資本が日本の不動産市場に流入してくると予想されます。

建築費の高騰

日本で使われている建築資材の多くが輸入品であるため、円安になると値段が上がります。

 

新型コロナが終息して世界的に需要が急回復したことで、ウッドショックやアイアンショックといわれる物資不足になりました。

 

加えてウクライナ戦争の影響もあり、建築資材は大幅な値上がりを続けていました。

 

同じタイミングで円安になったため、さらに価格が上昇しています。

 

また、人材不足による人件費の高騰や原油価格の上昇による電気やガソリンの値上がりなども加わり、建築費の高騰が続いています。

不動産価格の上昇

海外資本の流入や建築費の高騰で、都市部の新築マンションの価格が値上がりを続けています。

 

不動産経済研究所の調査によると、2023年の東京23区の新築マンション平均価格は1億1,483万円であり、前年比+39.4%という値上がり率を記録し、調査開始から初めて1億円を超えました。

 

価格上昇の背景には、海外資本の流入等の他、複数の超高級マンションの販売時期が重なったことも要因の1つといえます。

 

2024年4月の調査では、東京23区の新築マンションの平均価格は9,168万円となっており、1億円は割っているものの、依然として高い水準で推移しています。

 

 

参照:不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023 年のまとめ」

ローン金利の上昇

固定金利型ローンの代表である住宅金融支援機構のフラット35の金利が2022年以降上昇しています。

 

それに対して日銀は金融緩和政策を継続しているため、短期金利は据え置かれている状態です。

 

今後も円安が続き日銀が短期金利を引き上げれば、住宅ローンの変動金利も上昇していくことが予想されます。

不動産投資は円安状況下においても強みがある

今後も日本とアメリカの金利差は簡単に解消されず、円安傾向は続く可能性があります。

 

しかし不動産投資は、円安にも強みがあります。ここではその理由について解説しましょう。

不動産投資はインフレに強い

円安によって輸入品が値上がりし、さまざまなモノの値段が上がるインフレ状態になってきています。

 

モノの値段が上がるということは、現金の価値が相対的に下がっているということです。

インフレになるとこれまで100万円で買えたモノが買えなくなってしまいます。

つまりそれは現金100万円の価値が下がったということです。

 

一方、100万円の不動産の価値は、インフレになっても100万円で変わりません。

逆にインフレの影響を受けて値段が上がっているかもしれません。

不動産はインフレに強く、円安の影響を受けにくい資産です。

 

インフレに対抗するためには、現金で持っておくよりもインフレに強い資産に換えて保有しておくほうがよいでしょう。

家賃への影響は少ない

インフレになったとしても、すぐに家賃に影響が及ぶことはありませんが、さまざまなモノの値段が上がり、管理費用や修繕費等も増えていくため、インフレの進行から少し遅れて家賃相場は緩やかに上がっていく傾向にあります。

 

不動産経営をするオーナーは、相場に合わせて家賃を上げていくことで、インフレで家賃収入を増やすことも可能になります。

 

このように、不動産投資は預金等の金融商品と比較すると、円安によるインフレに対して強みがあるといえます。

円安がもたらす不動産投資におけるメリット

円安になると不動産投資には下記のようなメリットがあります。

 

●    大型工場などの進出


●    ホテルや民泊需要増加


●    不動産市場の活性化

 

それぞれのメリットについて説明しましょう。

大型工場などの進出

円安によって製造拠点を日本国内にシフトする企業が増え、地方に新たな大型工場が進出しています。

 

熊本県菊陽町や北海道千歳市では半導体の大型工場が建設されることで、付近に新たな不動産需要が生まれました。

 

従業員向けのアパートやマンションが建設され、地価の上昇も見られ、新たな不動産需要が生まれています。

 

円高の頃には盛んに海外での生産が進められていましたが、国内生産に移行する動きも目立つようになっています。

 

また海外企業も日本に生産拠点を作るケースも増えてきました。


このように、大型工場などの新たな進出によって、周辺地域の不動産市場によい影響を与えています。

ホテルや民泊需要増加

円安の効果によってインバウンド需要が急増しており、訪日外国人向けのホテルや旅館、民泊施設への投資が拡大しています。

 

2003年に約520万人だった訪日外国人は2019年には約3,200万人となって、これまでの訪日外国人数の過去最高を記録しました。

 

その後、新型コロナの影響で大きな打撃を受けましたが、円安の効果もあり2023年の訪日外国人数は2,500万人を記録し、コロナ前の2019年の8割程度まで回復しています。

 

東京都心や京都など外国人観光客に人気の地域ではホテル建設が続いており、民泊特区の土地を民泊施設として運用するケースが増加しています。

不動産市場の活性化

都市部や人気の観光地には海外からの投資が集まるようになり、その効果が周辺地域にも及ぶケースが現れています。

 

北海道の人気のスキーリゾート地ニセコには、海外からの多くの観光客が集まり、高級リゾートマンションが次々に建設されているところです。

 

周辺地域の地価にも影響があり、その経済効果はニセコバブルといわれるほど大きなものとなっています。

円安がもたらす不動産投資におけるデメリット

円安による不動産投資へのデメリットとして、下記のようなことがあります。

 

●    外国人労働者の減少

 

●    地域格差が広がる

 

それぞれについて説明します。

外国人労働者の減少

建設現場の作業者の人手不足は長年続いています。

 

その対策のひとつとして外国人実習生を活用していましたが、新型コロナによって外国人の入国が制限され、新たに集めることが難しくなりました。

 

新型コロナが終息した後も、円安の影響で外国人労働者の確保に影響が出ています。


日本で稼ぐ賃金が母国の通貨に対して割安になってしまい、外国人労働者が集まりにくい状況が続いている状況です。

 

日本人だけでなく外国人労働者の確保が厳しくなり、人材不足に拍車がかかり、建築コストの増大につながっています。

地域格差が広がる

円安によって海外からの投資が集まり価格が上がっているのは、都市部や人気観光地に限られており、日本の不動産市場全体に影響があるわけではありません。

 

地域によっては、輸入事業者の撤退や外国人労働者の減少で空室が増加する事態が発生しているところもあります。

 

円安によって不動産市場の地域格差が広がっているのが現状です。

今後の予測と不動産業界への影響

今後の円安の動向はどうなっていくのでしょうか。不動産業界への影響と併せて予測してみましょう。

長期的には不透明

日米の金利差がある状況は当面続くことが予想されるため、現在の円安から急に円高に転換するとは考えにくいですが、長期的には不透明です。

 

安易な予測で動くのではなく、金利の動向も含めて経済状況を注意深くチェックし、行動する必要があります。

コストは高くなる

資材不足や世界情勢不安に円安が加わって木材や鉄骨、コンクリートなどの建設資材の他、ガソリン代や電気代なども値上がりしています。

 

また人手不足は解消されず、人件費はこれからも上がっていくと思われます。

 

そのため、アパート経営をしていくには初期の建築費が高くなり、修繕維持費もコストがかかるという状況になるでしょう。

 

家賃はインフレ傾向に合わせて上昇しつつありますが、相場以上に家賃を上げることは難しいため、上昇したとしても緩やかな上昇曲線になるでしょう。

 

ローンの金利は上がる可能性はありますが、上がったとしてもそれほど大きな利上げにはならないと思われます。

 

投資した金額を回収し十分な収益を上げるためには、コストと家賃のバランスを考えて慎重に検討する必要があります。

不動産市場は三極化

海外投資家の影響で一部の不動産の値上がりがニュースで取り上げられることが増えてはいますが、円安によって不動産価格全体が値上がりしているわけではありません。

 

都市部など値上がりを続けている人気物件の他は、現状維持か少しずつ値が下がっている物件とほとんど価値がない物件という三極化の状態になっています。

 

今後はこの三極化が続き、格差が広がると予想されます。

まとめ

ここまで不動産投資における円安の影響について解説しました。

 

為替の動きにはさまざまな要素が絡んでおり、簡単に予測はできません。これからの動きを注意深く見て行動する必要があります。

 

不動産投資は、円安によるインフレの影響はそれほど受けませんが、コストの上昇が続くと回収が難しくなるのは確かです。

 

経済状況を常にチェックし、リスクを考慮しながら堅実な投資を行うようにしましょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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