経費にすることができる!賃貸住宅の修繕工事に備えるための共済制度について
2021年10月に賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度が認可されました。
認可によって修繕積立金を共済掛金として経費計上が可能になったため、注目を集めています。
実際、2022年5月に全国賃貸住宅修繕共済協同組合による「賃貸住宅修繕共済」の運用が開始された際には、多くの加入希望者が集まりました。
しかし、スタートしたばかりの制度であるため、不安を抱いている方も少なくありません。
そのため、本記事では賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
共済制度への加入を検討している方は、参考にしてみてください。
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度の概要
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度を簡単に説明すると、修繕共済と火災修繕共済を組み合わせた共済制度です。
ここでは、共済制度を構成している修繕共済と火災修繕共済について解説していきましょう。
また、ここでは、全国賃貸住宅修繕共済協同組合による「賃貸住宅修繕共済」を基にして解説していきます。
修繕共済
「修繕共済」とは、定期検査を行った際に対象となる劣化が発生している状態で、要件を満たす修繕工事を実施した場合に、共済金を受け取れる共済制度です。
ちなみに、賃貸住宅修繕共済の場合は、共済金を受け取るために以下の要件を満たす必要があります。
・1年前の定期検査では劣化事象が発生していなかったこと
・劣化事象が確認されてから初めて行われる修繕であること
・劣化事象を修繕するために合理的と認められた範囲であること
・定期検査日から2年以内で実施されていること
・外壁・軒裏・屋根などの対象箇所の修繕であること
・対象となる建物の築年数は木造・軽量鉄骨造の場合で築30年以内(それ以外では築40年以内)であること
上記の条件の中でも、「外壁・軒裏・屋根」の修繕に限定されている点には注意が必要です。
また、この修繕共済は掛け捨て商品のため、返戻金や満期金はありません。
火災修繕共済
「火災修繕共済」とは、「火災・落雷・破裂または爆発」によって対象の物件に損害が生じて修繕費用を支払った場合に、共済金が支払わられる共済制度です。
賃貸住宅修繕共済の場合は、1回につき最大「30万円」の共済金を受け取ることができます。
劣化による修繕だけが対象だと勘違いされがちですが、賃貸住宅修繕共済は劣化による修繕だけでなく、火災による修繕でも共済金を受け取れることを知っておいてください。
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度が設立された理由
賃貸経営を行う上で物件を適切に維持管理するためには、計画的な大規模修繕が必要不可欠です。
大規模修繕を実施するためには多額の修繕費が必要になるため、修繕費を積み立てておかなくてはいけません。
ところが、これまでは、賃貸住宅の修繕のために積立しても収益として見なされ、課税対象になっていたため、計画的な積立ができずに修繕費用が不足するという方も少なくありませんでした。
そのことを問題視して、「修繕費用不足の是正」や「長期的な建物の適切管理」を目的として設立されたのが、賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度です。
共済制度が設立されたことで、掛金の経費計上が可能になり、修繕積立金に課税されるという問題が解消されました。
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度の補償対象
賃貸住宅修繕共済の補償対象は、主に「屋根」と「外壁」です。
修繕工事であれば何でも補償される訳ではないので、補償対象を理解しておかないと大規模修繕を行った際に共済制度によって補償されないという事態になりかねません。
ここでは、賃貸住宅修繕共済の補償対象について詳しく解説していきますので、参考にしてください。
屋根
賃貸住宅修繕共済の補償対象になる工事は、屋根の「塗装・補修・防水・葺替工事」です。
例えば、劣化した屋根塗装の塗り替えや屋上防水シートの貼り替えの工事なら、共済金を受け取ることができます。
ただし、対象となる工事はあくまでも修繕工事に限定されており、物件の価値が向上するような改修は対象にならない可能性が高いので注意が必要です。
外壁
外壁の「塗装・補修・タイルの張り替え工事」も賃貸住宅修繕共済の対象です。
ただし、屋根の修繕工事と同様に、対象となる工事はあくまでも修繕工事に限定されています。
例えば、外壁塗装を「アクリル塗料」から「無機塗料」といった風にグレードアップするような改修工事は、たとえ修繕工事だとしても認められず共済金が受け取れない可能性が高いです。
このため、共済金を使って修繕工事を計画している場合は、物件価値が向上する改修工事ではなく以前の状態に戻す修繕工事を行うようにしましょう。
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度に加入するメリット
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度への加入には、「共済掛金を経費にできる」や「綿密な修繕計画が作成できる」などのメリットがあります。
ここでは、上記のメリットについて詳しく解説していきますので、共済制度への加入を検討している方は参考にしてみてください。
共済掛金を経費にできる
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度に加入する最大のメリットは、共済掛金を経費計上できることです。
共済制度ができる前までは、オーナー個人が預金で積立する必要があり、預金は経費として認められないため、修繕費積立には税金が課税されていました。
このため、共済掛金として積み立てられるようになり、損金算入が可能になったことは非常に大きなメリットと言えます。
綿密な修繕計画が作成できる
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度を利用することで、将来的に必要となる修繕費について、掛金を支払うことで積み立てることが可能となります。
また、共済に加入するためには「長期修繕計画」を作成する必要があるため、より計画的に大規模修繕を行うことができます。
このように、共済制度を利用することで必要な資金が確保できるだけでなく、否が応でも修繕計画の作成をすることになることは、賃貸経営を行なっているオーナーにとってメリットが多い制度です。
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度に加入するデメリット
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度は、賃貸経営を行うオーナーにとってメリットが多い制度ではありますが、一方で留意すべきこともあります。
ここでは、共済制度に加入する際のデメリットについて解説するので、利用を検討している方は内容をよく理解しておきましょう。
運用が開始したばかりの制度である
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度は2022年5月から運用が開始された制度です。
そのため、今後運用状況によっては制度の内容が変更される可能性もあります。
また、運用期間が少ないため、共済制度のデメリットに不透明な部分があることも考えられるので、今後、他のデメリットが出てくる可能性もあり注意が必要です。
なお、不透明な部分が判明した際や制度が変更された際には、記事の内容を更新していく予定ですので、気になる方は定期的にこの記事を確認してみてください。
支払い対象が屋根と外壁に限定されている
前述したように、賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度の共済金の支払い対象は「屋根(屋上)」と「外壁」に限定されています。
そのため、大規模修繕で修繕が必要になる可能性が高い「鉄部塗装」や「給水管の修繕」、「エレベーターの修繕」などの修繕工事は共済金の対象になりません。
とはいえ、全国賃貸住宅修繕共済協同組合も、他の修繕費にも共済制度を適用できるように制度の拡充を目指しています。
将来的に、上記で挙げた修繕工事でも共済制度が利用できるようになる可能性もあるので、適宜、確認するようにしましょう。
まとめ
賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度は、2022年5月から運用がスタートしたばかりの制度です。
共済の掛金を経費計上できるなど、賃貸経営をしているオーナーにとって大きなメリットがある一方で、現時点(2022年9月現在)では共済金の対象が「屋根」や「外壁」に限定されているといったデメリットも存在します。
このため、気になっていながらも警戒している賃貸経営のオーナーも少なくありません。
そこで、本記事では賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説してきました。
共済制度に興味がある方や加入を検討している方は、参考にしてみてください。
なお、本共済制度は運用が始まったばかりの制度であるため、今後も改善されていくことが予想されます。
改善点に限らず、思わぬデメリットが出てくる場合もあるため、情報を定期的に確認しておきましょう。
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