入居者家財保険とは?重要性やポイントを徹底解説
火災や水漏れなど、万が一のトラブルが発生した際に家財の損失を補償してくれる「入居者家財保険」。加入することで、入居者本人だけでなく、賃貸経営を行うオーナー側にもメリットが大きい保険です。
賃貸経営を始めたばかりであれば、入居者家財保険についてあまりよく知らないという方も多いのではないでしょうか。また、入居時に家財保険への加入を義務付けていないオーナーの方もいるかもしれません。
そこで今回は、入居者家財保険の概要や重要性を解説します。加入するメリットも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
入居者家財保険とは?
はじめに、入居者家財保険とはどのような保険なのかを解説します。そもそも家財保険ってなに? という疑問を持つ方は、ここで概要を十分に理解しましょう。
入居者家財保険は「家財のみを補償する」保険
入居者家財保険は、災害や事故などで入居者の家財が損害を受けた場合に適用され、損害を受けた家財の購入費用を補償してくれます。
家財保険は火災保険の一種ですが、建物自体が受けた損害は対象外であり、あくまで入居者の家財のみを補償する保険です。そのため、建物の損害を補償するための火災保険には、賃貸経営を行うオーナー側で加入する必要があります。
どれだけ注意深い方でも、事故や災害のリスクをゼロにすることは不可能です。また、家財の損害は積み重なると予想以上に高額になることが多いため、入居者にとっても加入するメリットが大きい保険といえるでしょう。
加入するのは入居者本人
家財保険へ加入するのは、賃貸のオーナーではなく入居者本人です。加入の判断は入居者に委ねられますが、最近では入居時に家財保険への加入を義務付けるケースも多くなっています。
家財保険には一般的に二つの特約が付されており、オーナーや近隣住民への損害賠償を補償することも可能です。入居者本人にとってはもちろん、賃貸経営を行うオーナー側にもメリットが大きく、このことが加入を義務付ける要因となっています。
加入に必要な費用は?
家財保険の保険料の金額は、加入者自身が設定する保険金額によって異なります。一概にはいえませんが、一般的には年間で概ね5,000~8,000円程度が保険料の相場です。
家財保険に加入する際は、「仮に家にある家財をすべて失ってしまった場合、同等のものを購入するために必要な金額がいくらになるか」という考え方に基づいて保険金額を決定します。
しかし、実際には家財の評価額を詳細にシミュレーションして金額を算出するのは難しい場合がほとんど。そのため、各保険会社は家族構成や建物の状況によって保険料の目安を案内しています。
一方で、ミニマリストなど必要以上に家に物を置かない方であれば、一般的な家庭の保険金額よりも安く見積もることもできるでしょう。保険会社の案内を参考にしながら、入居者の生活実態に合ったプランを提案することが重要です。
また、家財保険は加入者(入居者)自身で契約の更新が必要になります。単年契約であれば毎年更新手続きをしなければならず、入居者によっては手続きを忘れて未加入状態になっているケースも少なくありません。
尚、管理会社によってはこのような事態を防ぐため、保険料の支払いを、月払いの自動口座振替にして家賃と同時に支払うことで未加入状態にならないよう対策をとっています。
家財保険の補償範囲は?
ここでは、家財保険の補償範囲を詳しく解説します。家財保険では一般的にイメージする家財のほぼすべてが対象となりますが、一部対象外となるケースや事例も存在するため、しっかりチェックしましょう。
家財保険が適用される損害
家財保険が適用される損害は、主に以下のような事例です。
・火災
・水漏れ
・台風や大雨などの災害
・破損・汚損
・盗難
家財保険が適用されるケースとして多いのが、火災や水漏れなどの損害です。入居者本人の過失により発生した損害でも補償の対象となるため、万が一の際の心強い味方となります。
また、台風や大雨などの災害で自宅が浸水した場合の損害も対象です。物件のある地域や周辺状況によって、浸水のリスクなども変わってくるため、自治体のハザードマップなどを確認し参考にしてみましょう。
代表的な損害は上記のような事例ですが、その他にも模様替え中に家電商品を落としてしまった場合なども家財保険の対象となります。このように、家財を対象とした広い範囲の損害をカバーしているのが家財保険の特徴です。
家財保険の対象となる家財
家財保険の対象となるのは、主に以下のような家財です。
・家具
・家電
・食器
・衣類
・貴金属
上記のように、自宅にある家財のほぼすべてが対象となります。これらの家財は一つひとつがそれほど高価ではなくても、積み重なると予想よりも遥かに高額となる場合が多く、万が一を考えた場合、家財保険への加入は必須といえるでしょう。
一方、通貨や小切手・印紙・切手火災のなどは家財保険で適用される家財には含まれません。また、貴金属や美術品などの家財は高額になる傾向があるため、上限金額が定められている場合もあるため注意しましょう。
一般的な家財保険の特約
ここでは、一般的な家財保険に付される特約を解説します。特約に加入するメリットは非常に大きく、オーナー側にとっても重要なポイントであるため、十分に理解しておきましょう。
借家人賠償責任保険
借家人賠償責任保険は、火災や人災などによって家財だけでなく建物自体に損害を与えてしまった場合に、オーナーに対して発生した損害賠償を補償してくれる保険です。
例えば、入居者が火の不始末で火災を起こしてしまい、室内の一部分を燃やしてしまったケースなどが当てはまります。火災の要因としてよほどの重過失がなければ損害賠償が発生しないケースもありますが、そのような場合でも損害部分の原状回復に高額な修繕費がかかります。
たとえボヤであっても、原因をつくった入居者、部屋を貸しているオーナーそれぞれに大きなリスクが発生するのです。そのため、最近では借家人賠償責任保険と家財保険はセットで加入することが義務付けられる場合がほとんど。これにより原状回復が不可能となるリスクを大幅に減らすことができます。
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険は、近隣住民などの第三者に対して負った損害賠償を補償する保険です。
入居者の重過失により火災や水漏れが発生した際には、近隣住民などの第三者に対して法律上の損害賠償が発生する場合があります。このような損害賠償をカバーする保険に加入していないと、支払い額が自身の資力を上回ってしまう可能性も考えられるでしょう。
住民同士の深刻なトラブルに発展した場合、今後の賃貸経営に支障が出ることも考えられます。そのため、個人賠償責任保険は家財保険とセットで加入してもらう意義が大きい保険なのです。
家財保険に加入してもらうメリットは?重要性を解説
万が一の事故やトラブルを想定すると、入居者に家財保険へ加入してもらうことはオーナー側にとっても大きなメリットがあります。ここでは、家財保険に加入してもらうメリットや重要性を見ていきましょう。
オーナーへの損害賠償を補償してくれる
上記で解説した借家人賠償責任保険の特約により、オーナーに対して発生した損害賠償を補償することが可能になります。これは入居者のみならず、オーナー側にとっても大きなメリットといえるでしょう。
仮に入居者が家財保険に加入していない状態で火災や水漏れなどを引き起こしてしまった場合、高額な損害賠償を支払えなくなる可能性も出てきます。また、重過失が認められず損害賠償が発生しなかった場合、退去時の原状回復が行われず、賃貸経営に大きな影響を及ぼすこともあります。
このような原因から、入居者とのトラブルに発展するケースもあります。裁判や調停にもつれ込んだ場合、精神的な負担にもつながるため、入居者には積極的に家財保険への加入を勧めるべきといえるでしょう。
近隣住民など第三者への損害賠償の補償も可能
家財保険では、上記で解説した個人賠償責任保険の特約により、近隣住民など第三者への損害賠償の補償が可能です。住民同士の深刻なトラブルを防ぐことにもつながり、賃貸経営におけるオーナーの負担も軽減することができます。
例えば、火災が発生した際に出火原因における重大な過失が認められなかった場合は、損害賠償が発生しない事例も存在します。このとき、入居者が家財保険に加入していれば、損害賠償の支払いがなくても家財の損失分を補償することが可能です。
損害を与えてしまった場合はもちろん、損害が与えられた場合の損失をカバーしてくれる家財保険は、賃貸に住むすべての入居者が加入するべき保険といえるでしょう
入居時に家財保険への加入を義務付ける事例も多い
最近では、入居時に家財保険への加入を義務付けるケースも増えてきています。事故や災害などの万が一のリスクに備えて、原状回復の費用を確実に支払ってもらうためにも、家財保険への加入の義務化は自然な流れといえるでしょう。
反対に、賃貸経営を行っていて入居時に家財保険への加入を義務付けていない場合は、損害賠償や原状回復の修繕費が入居者の資力を上回ってしまうリスクに注意が必要です。
本来、保険への加入は任意であるため、入居時の条件として掲げていなければ、途中から保険への加入を強制させることは難しいといえます。
家財保険は入居者にとっても加入のメリットが非常に大きい保険であるため、十分に説明したうえで加入を促すのも一つの方法です。すべての入居者に家財保険へ加入してもらえば、オーナーにとっても安心につながります。
オーナー側が加入するべき火災保険の特約
家財保険は火災保険の一種であり、入居者が加入する保険です。一方、万が一の事故や災害を想定して、オーナー側が加入する火災保険は、どのような基準で選べばよいのか気になる方も多いでしょう。ここでは、オーナー側が加入するべき火災保険の特約を紹介します。
家主費用特約
家主費用特約は孤独死・自殺・犯罪などが原因で発生した原状回復や遺品整理にかかる費用を補償してくれる特約です。加えて、次の入居者を募集できる状態になるまでの家賃も補償対象になります。
近年の高齢化による孤独死のリスクは、賃貸経営を行うオーナーにとって深刻な問題です。高齢者の一人暮らしの場合、孤独死の発見には時間がかかってしまうケースも多く、原状回復が困難となる可能性も高いといえます。
また、そもそも親族がいないという事例も数多く存在します。この場合、遺品整理や原状回復にかかる費用はオーナー負担となってしまうため、家主費用特約に加入するメリットは大きいといえるでしょう。
家賃収入特約
家賃収入特約は、火災などの事故やトラブルによって損害が発生した場合の家賃の損失を補償する特約です。こちらも賃貸経営を行うオーナーであれば、加入するべき特約といえるでしょう。
火災などの事故による建物や家財の損失は、通常の火災保険でカバーできます。しかし、修理や建て替えの期間に得られなくなった家賃収入は補償の対象外です。
家賃収入特約に加入していれば、この期間の家賃収入を補償してくれるのです。万が一の事故の場合を想定して、賃貸経営のメインの収入である家賃収入の損失をカバーできる家賃収入特約は、オーナー側が加入しておくべき特約だといえるでしょう。
施設賠償責任特約
施設賠償責任特約は、施設の管理上の不備で発生した事故により、他者や他者の所有物に与えた損害を補償する特約です。
施設賠償責任特約が適用される事例として、マンションやアパートの外壁が崩れ、通行人に怪我を負わせた場合などが当てはまります。怪我の状態によっては損害賠償金額が非常に高額となるケースも多く、支払い金額が資力の範囲を上回ってしまうこともあるでしょう。
賃貸経営を行う以上、施設の管理上の理由で他者や他者の所有物に損害を与えてしまう可能性はゼロではありません。万が一の事態に備えて、施設賠償責任特約の加入をおすすめします。
まとめ
今回は、入居者家財保険の概要や入居者へ加入してもらうメリットを解説しました。
入居者に家財保険へ加入してもらうことで、賃貸経営を行うオーナー側のリスクも大幅に減らすことが可能です。また、特約を付けることでオーナーや近隣住民への損害賠償も補償することができ、トラブルの深刻化や原状復帰の不履行を防ぐこともできます。
家財保険への加入は、いまや必須といえるでしょう。だからこそ、賃貸経営を行うオーナーにおいても、家財保険の補償内容やメリットを十分に理解し、入居者から納得を得たうえで家財保険に加入してもらうことが重要です。
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