施設賠償責任保険には加入するべき?メリット・デメリットを解説
事業用の施設・不動産を所有するオーナー・事業者にとって、施設の欠陥による万が一の事故は不安の種です。備えをしていない状態で事故が起きた場合、多額の損害賠償による経済的なダメージは計り知れません。
そこで今回は、万が一の事故に備えて施設を所有するオーナー・事業者が加入すべき「施設賠償責任保険」について解説します。加入した場合のメリット、デメリットも詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。
施設賠償責任保険とは?
はじめに、そもそも施設賠償責任保険とは何か? という疑問に答えていきます。
施設賠償責任保険の概要
施設賠償責任保険とは、自身の所有する施設の欠陥によって他者や他者の所有物に損害を与えた場合、その損害を補償する保険です。
事業用の施設というと、工場や資材置き場、スーパーなどの商業施設などが典型的な例です。また、賃貸物件やマンション・会社の事務所なども、事業用に所有していれば施設賠償責任保険の対象となります。
自身が所有する施設で事故が発生し、他者や他者の所有物に損害を与えた場合、負うべき損害賠償額は膨大な金額となります。場合によっては、事業の経営を揺るがす深刻な事態へ発展する可能性もあるでしょう。
このようなリスクを避けるためにも、施設賠償責任保険は施設を所有するすべての人に加入をお勧めすべき保険と言えるでしょう。
施設賠償責任保険の対象
施設賠償責任保険の対象となるのは、以下のようなケースです。
・施設の安全性の維持や管理の不備により発生した事故
・施設の構造上の欠陥による事故
・施設の用法に伴う仕事の遂行により発生した事故
施設賠償責任保険の対象は大きく分けて、施設の管理上発生した事故と業務の遂行上発生した事故の2種類があります。
例えば、施設の看板が倒れて人に怪我を負わせてしまったり、窓が外れて下にいた人に当たってしまったりした場合などは、施設の管理上発生した事故となります。一方、飲食店の店員が誤って客の衣服に飲み物をこぼしてしまった場合などは、業務の遂行上発生した事故にあたります。
一見事故のリスクが低いと思われる施設でも、意外なところで事故につながる可能性を秘めているため、施設賠償責任保険に加入する意義は大きいと言えるでしょう。
施設賠償責任保険の補償内容
施設賠償責任保険の補償内容は以下のような費用です。
・法律上の損害賠償金
・損害を防ぐためにかかった費用
・応急手当等にかかった費用
・訴訟対応に要した費用
最もイメージしやすいのが損害賠償金です。それに加えて、再発防止のための措置にかかった費用や、事故発生時の応急手当にかかった費用なども補償の対象となります。
また、裁判や示談交渉の必要が出てきた場合、裁判費用や弁護士費用なども施設賠償責任保険の補償対象です。このように、広い範囲をカバーする施設賠償責任保険は、加入のメリットが大きい保険と言えます。
施設賠償責任保険のメリット
ここでは、施設賠償責任保険のメリットを解説します。
コストパフォーマンスが優れている
コストパフォーマンスが優れているのは、施設賠償責任保険のメリットといえます。
施設の規模にもよりますが、施設賠償責任保険の保険料は安価で済みます。例えば、マンション1棟あたりの保険料は数千円で済む場合もあり、負担は少ないと言えるでしょう。
少ない保険料負担で多額の賠償金を支払うリスクを軽減できるため、コストパフォーマンスに非常に優れています。保険料の安さは施設賠償責任保険に加入する際の大きなメリットと言えるでしょう。
多額の損害賠償のリスクを抑えられる
多額の損害賠償のリスクを抑えられるのは、施設賠償責任保険に加入する最も大きなメリットです。
万が一、自身の所有する施設で事故が発生し、他者や他者の所有物に損害を与えた場合、発生する損害賠償額は数千万円から数億円に及ぶ場合もあります。
保険に加入していなかった場合、これらの高額な損害賠償額を自己負担しなければいけません。事業の経営を揺るがすほどの経済的なダメージを避けるためにも、施設賠償責任保険は加入すべき保険と言えます。
どんな事業者にもある賠償責任のリスクを抑えられる
どんな事業者にもある賠償責任のリスクを抑えられるのは、施設賠償責任保険のメリットのひとつです。
事故のリスクはあらゆる建物・施設に存在します。例えば、建物の劣化により壁のタイルが剥がれ落ちて、通行者に危害を与える場合もあります。
施設賠償責任保険は、建物・施設の状態に起因する事故だけでなく、業務の遂行上起こった事故も補償してくれます。保険料が低い面も考慮すれば、不動産を所有・管理しているすべての事業者にとって、加入しておくメリットは大きいと言えるでしょう。
施設賠償責任保険のデメリット
施設賠償責任保険に加入するメリットの大きさを理解した次は、施設賠償責任保険のデメリットもみていきましょう。
補償の対象外となるケースもある
事故の内容によっては、施設賠償責任保険の補償の対象外となるケースもあります。
例えば、給排水管からの漏水による下の階への被害などは施設賠償責任保険の対象とはなりません。
給排水管からの漏水は定期的なメンテナンスや修理によって防ぐことができる可能性があるため、保険会社は個々の契約者の責任と見なし、保険の対象外としています。
これをカバーするには特約(漏水補償特約など)を付ける必要が出てきます。
尚、保険会社によっては施設賠償責任保険の補償対象になっている場合もあります。
ただし、補償されるのは他人に損害を与えた際に支払われる賠償金のみです。水漏れした給水管の修理代は補償されません。また、自室の水道から漏水させ階下の部屋を水浸しにした場合も居住者の責任となり施設賠償責任保険からは保険金は支払われません。この場合は居住者が加入する個人賠償責任保険が対応します。
また飲食店であれば、提供した飲食物に起因する食中毒なども施設賠償責任保険の補償の対象外です。こうした対象外の補償をカバーするには、別の保険と組み合わせる必要があります。
施設そのものの損害や従業員の損害は補償されない
施設賠償責任保険では、施設そのものの損害や自社の従業員の損害は補償されない点に注意が必要です。
施設賠償責任保険の補償は、あくまで第三者や第三者の財物に対して損害を与えてしまったケースが対象となります。自社の従業員がケガを負った場合や、自社の財物に損害が生じた場合は補償されません。
そのため、自社の建物や設備に対しては火災保険、従業員に対しては傷害保険など、個別に損害を補償してくれる保険と組み合わせて加入するのがお勧めです。
施設賠償責任保険の対象となる事例を紹介
ここでは、施設賠償責任保険の対象となる事例を一部紹介します。加入を検討する際の参考にしてみてください。
・管理する施設の老朽化によって壁が倒壊し、通行人にケガを負わせてしまった
・施設のガス爆発により来客者に死傷者が発生し、近隣の建物や車両などに損害を与えてしまった
・飲食店で従業員が誤って客に飲み物をこぼし、衣服を汚し、あるいは火傷を負わせてしまった
・店舗の看板が落下してしまい、下にいた通行人にケガを負わせてしまった
・自転車で配達中の従業員が運転操作を誤って通行人にぶつかり、ケガを負わせてしまった
・保育園の遊具の老朽化により、遊んでいた園児にケガを負わせてしまった
上記のように、施設賠償責任保険の対象となるのは
➀施設の安全性の維持・管理の不備や、構造上の欠陥に起因して発生した事故
②施設の用法に伴う仕事の遂行上発生した事故
この二つのケースにあてはまる場合です。
一方で、施設賠償責任保険の補償にあてはまらないケースは以下のような事例です。
・給排水管の破損による水漏れで階下与えた損害
・施設の新築や改修・修理・取り壊しなどの工事に際する損害
・自社の従業員や車両に対しての損害
・自然災害によって生じた損害
・販売商品や提供する飲食物によって発生した食中毒による損害
上記のようなケースをカバーするためには、他の保険と組み合わせて加入しておく必要があります。
ただ、施設賠償責任保険は施設を管理するうえで想定される事故の多くを対象としているため、加入するメリットは非常に大きい保険と言えるでしょう。
施設賠償責任保険には加入するべき?
ここまで施設賠償責任保険のメリット・デメリットを紹介してきました。それらを踏まえて施設賠償責任保険は施設を所有、管理するすべての事業者が加入するべきと言えるでしょう。
施設賠償責任保険には自社の従業員や施設・設備など、補償の対象外となるケースも存在しますが、それらを考慮しても非常に広い範囲でリスクをカバーしてくれます。一方で、保険料の負担少なく、コストパフォーマンスの良い保険です。
保険に加入せずに事故が発生してしまった場合、その経済的なダメージは計り知れません。施設賠償責任保険は、業種を問わず、施設を所有、管理するすべての事業者が加入しておくべき保険と言えるでしょう。
施設賠償責任保険の手続の流れ
施設賠償責任保険は保険会社に申し込むことで手続きが可能です。最近ではインターネットでの申し込みが可能な保険会社も多く、見積もりの依頼から手続きまでインターネットで完結できます。
インターネットで申し込む際は、以下の書類を準備しておきましょう。
・会社、契約者の住所がわかるもの
・保険の対象となる物件・施設の住所がわかるもの
・支払いに使用する銀行口座情報やクレジットカード情報が分かるもの
・業種や売上高が分かるもの
準備ができたら、まずは見積もりを依頼し、その内容を比較、分析したうえで、契約する保険会社を決定します。その後、申し込み画面で必要な内容を入力し、指示に従って手続きを完了させましょう。
また、インターネット以外にも、保険会社の代理店で手続きする方法があります。インターネットよりも手間がかかり、時間のしばりもありますが、不明な点をその都度教えてもらうことができるため、初心者にはお勧めです。
保険会社の中には、事前に書類を取り寄せて記入しておける会社もあるため、手間を減らしたい場合は事前に問い合わせて書類を準備しておきましょう。
まとめ
今回は、施設賠償責任保険の内容について、メリット・デメリットを踏まえて解説しました。
施設を所有、管理する事業者であれば、施設賠償責任保険へ加入するメリットは大きいと言えるでしょう。会社の事務所など一見リスクが低そうな施設でも、リスクに対して万全の備えはしておきたいものです。
不動産を所有、管理しているオーナー・事業者で、施設賠償責任保険に未加入の方は、本記事を参考に施設賠償責任保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
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