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不動産オーナーさま向けコラム

賃貸経営における立ち退き要求の方法とは?手順や費用についても解説

2023.06.01

賃貸経営のオーナーは、入居者との家賃トラブルや建物の老朽化による建て替えなどに際し入居者に立ち退きを要求しなければいけません。とはいえ、初めて立ち退きを要求する場合、どのような手順を踏めばいいのか分からず、トラブルに発展するのではないかと心配ではないでしょうか。

 

そこで、今回は賃貸経営における立ち退き要求の方法を解説します。手順や費用についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

立ち退きの要求が可能となる「正当事由」

入居者に対して立ち退き要求を行うには、その前提として「正当事由」が必要です。ここでは、立ち退き要求の正当事由にはどのようなものがあるかを解説します。

家賃の長期滞納など入居者に問題がある場合

入居者の長期にわたる家賃の滞納は、立ち退き要求における正当事由の一つです。

 

民法では、当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方は催告を行い、それでも履行されなければ契約の解除が可能としています。この場合、オーナーから入居者に対して立ち退き料の支払い義務は発生しません。

 

家賃の滞納のほか、第三者へのまた貸しや近隣住民への重大な迷惑行為なども立ち退き要求の正当事由になることがあります。

契約期間が満了した場合

契約期間の満了も、立ち退き要求の正当事由の一つです。

 

当然ながら、賃貸借契約には契約期間が存在します。契約期間が満了となり、契約が終了すれば、オーナーは入居者に対して立ち退きを要求することが可能となります。

 

ただし、契約期間が満了した際に契約が終了できるかどうかは、契約の種類によって異なります。更新を前提とした「普通借家契約」の場合、賃借人は契約解除に別途正当事由が必要ですが、「定期借家契約」の場合は基本的に更新をせず契約を終了させることが可能です。

 

賃貸借契約の種類によって、期間満了が、立ち退きの正当事由になるかどうかが異なるため、現状の契約形態を事前に確認しておくことが必要です。

建物の老朽化などで危険性が高い場合

建物の老朽化などにより入居者の居住に危険が伴う場合は、立ち退きの正当事由として認められるケースもあります。

 

しかし、これを正当事由とする場合は、居住の危険性が高いことを示す具体的かつ合理的な事由が必要です。根拠が十分でない場合、あるいは入居者がその物件を必要とする事情によっては、正当事由として認められないケースもあります。

 

建物の老朽化を事由にする場合は、早めに弁護士などの専門家に相談し、正当事由として認められるかどうかを判断してもらうことが重要です。

 

また、建物の老朽化が進み建て替えを視野に入れ始めたら、新規の入居募集に対しては、前述した「定期借家契約」に切り替えていくのも一つの方法です。

立ち退き交渉を進める手順

ここでは実際に立ち退き要求を進める手順を解説します。手順を間違えるとトラブルに発展する可能性もあるため、しっかりチェックしておきましょう。

立ち退き通知書を作成し立ち退きを要求する

 

まずは立ち退き通知書を作成し、理由を明確に示した上で立ち退きを要求しましょう。


書類の作成に不安がある場合は弁護士や不動産会社に相談するのも一つの手です。郵送で送る方法もありますが、直接持参すれば意図が伝わりやすくなります。

 

入居者には、遅くても立ち退きを希望する日の半年前までには通知しておきます。入居者は次の入居先を探すなど、準備する期間が必要なためです。

入居者に口頭で説明を行う

書面で立ち退き要求を通知した後は、可能な限り入居者に直接説明を行いましょう。

 

書面のみの説明だと立ち退きを要求する理由や意図を伝えきれず、トラブルに発展してしまうケースもあります。そのため書面での通知後、なるべく早い段階で直接説明しておくことが望ましいと言えます。

 

直接交渉する際は一方的に話すのではなく、入居者の事情もしっかりと確認しましょう。立ち退きが難しい場合、その理由を親身に理解していくことで解決策が提示できる場合もあります。

立ち退き料の交渉や立ち退き時期について協議する

 

立ち退きを通知し、入居者の事情も確認することができたら、立ち退き料や立ち退き時期の交渉に移ります。

 

上記の正当事由以外で立ち退きを要求する場合、一般的にオーナーから入居者へ立ち退き料の支払いが必要です。立退料の相場は事由や入居者の事情によって異なるため、交渉の進め方が重要となってきます。

 

事前に転居先の候補をリサーチしておき、入居者の希望に合いそうな物件を提案することで、交渉がスムーズに進む場合もあるため、転居先の候補をリサーチする際は、不動産会社に相談してみるのもお勧めです。

退去手続きを行い、期日までに立ち退きを完了させる

立ち退き料や退去日の交渉がまとまったら、必要な退去手続きを行い、立ち退きを完了させます。

 

交渉がまとまらず、調停や裁判などの手段によって解決せざるを得ないケースの場合、弁護士費用や裁判費用で出費がかさんでしまいます。

 

調停や裁判までもつれ込むのを避けたい、または交渉に自信がない場合は、早めに弁護士に相談することが重要です。代理交渉を依頼した方が、結果的に費用が安くなる場合も多くあります。

立ち退きにかかる費用

ここでは、立ち退きにかかる費用の内訳を解説します。

立ち退き費用の内訳

立ち退き料の支払いについて、具体的な金額については法律で定められていません。

 

そのため、移転先の賃貸借契約にかかる初期費用や引っ越し費用に加えて、事由によっては迷惑料なども含んだ金額が立ち退き料の内訳となります。一概には言えませんが、家賃の6〜12カ月程度の金額と考えておけばいいでしょう。

立ち退き交渉を弁護士に代行してもらうのにかかる費用

立ち退き交渉を弁護士に依頼する際に発生する費用は、法律事務所によって異なりますが、


一般的には100万円前後と言われています。その内訳は以下の通りです。

 

・着手金:40万円~70万円程度
・報酬:50万円~80万円程度

 

弁護士費用には着手金と報酬の二つの費用が発生します。決して安い金額とは言えませんが、交渉が決裂して裁判にもつれるケースや、立ち退き料が高額になるケースも踏まえて考えると、弁護士に交渉を依頼した方が結果的に正解、というケースも少なくありません。

立ち退き費用をできるだけ抑えるポイント

これまで解説したように、立ち退き要求の際には多額の費用が発生します。そのため、これらの立ち退き料をいかに抑えることができるかが重要となります。

 

以下で、立ち退き料をできるだけ抑えるポイントを解説します。

入居者数を少なくしてから着手する

新規の入居者の募集を止めて、入居者数を少なくしてから立ち退き交渉に着手することで、交渉の手間や立ち退き料を少なくすることが可能となります。

 

ただ、この方法は自然退去を促す時間的な余裕が必要となります。また、入居者が減ることで、その期間の家賃収入が減少してしまうことも理解しておかなければなりません。

 

空室率が7〜8割程度になったタイミングが、立ち退き要求に着手する目安です。

代替物件を提供する

複数の物件を管理するオーナーであれば、代替物件を提供することで立ち退き料を抑えることができます。

 

これまで解説したように、立ち退きに際して必要となるのは、転居先への引っ越し費用に加え、転居先を探す負担などに応じた迷惑料などです。

 

同じオーナーが管理する物件を提供することができれば、立ち退き料の負担軽減につながるでしょう。

原状回復を免除する

原状回復を免除することで、立ち退き料を安く抑えることが可能な場合があります。

 

賃貸借契約上では、退去時に原状回復することが義務付けられています。しかし、建物の老朽化による建て替えや取り壊しなどを理由に立ち退きを要求する場合は、原状回復の必要はありません。

 

そのため、原状回復が必要ないことを交渉材料とすることで、立ち退き料の削減につながるケースもあります。

退去までの家賃を免除する

 

立ち退き料を安く抑えるために、退去までの家賃を免除する方法もあります。家賃を免除することで入居者の負担を減らし、その分、転居の費用に充てることが可能となります。

 

また、入居の際に預かった敷金を前倒しで返金するのも一つの手です。こうしたメリットを積極的にアピールし、立ち退き料の交渉を有利に進めましょう。

交渉の際は入居者と真摯に向き合う

 立ち退き要求の交渉の際は、入居者と真摯に向き合うことが重要です。そうすることで立ち退き料が安くなる場合もあります。

 

立ち退き料の相場は法律で定められていません。そのため、賃貸物件の管理者であるオーナーと入居者の協議によって金額が決定されます。

 

協議によって金額が決まる以上、交渉は当事者の感情によって左右されます。口頭での説明不足はもちろん、相手方の事情に配慮せず、一方的にこちらの言い分だけを伝えてしまうと、交渉が難航し、裁判や調停にもつれ込んでしまう可能性が高まると言えるでしょう

 

その結果、裁判費用や弁護士費用など出費がかさんでしまうケースも。互いに少ない負担で合意するためにも、交渉の過程においては真摯に対応することが重要です。

まとめ

今回は、賃貸経営における立ち退き要求の方法や必要な手順、費用について解説しました。

 

立ち退き要求を行う際、交渉をスムーズに進めるための重要なポイントがいくつか存在します。ぜひ本記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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