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不動産オーナーさま向けコラム

物価上昇に伴った家賃の値上げは可能?家賃の値上げタイミングも解説

2024.01.15

日本経済では30年ほど前からデフレ状態が続いていましたが、最近になってコロナ禍後の経済正常化や原油価格の高騰、円安、国際情勢の変動、人材不足、異常気象といった様々な要因により物価上昇が見られます。

 

そのため、賃貸物件のオーナーとしては、これらの変化に対応し家賃を見直すことを検討している方も少なくないでしょう。

 

しかしながら、値上げが不当であると非難されるのを恐れたり、居住者とのトラブルを避けたいという思いから値上げに踏み切れない方も多いです。

 

そこで、本記事では家賃を上げる際の正当な理由とそうでない理由の区別、家賃交渉の進め方、そして家賃をスムーズに上げるコツをご説明します。

 

ぜひ最後までご覧になり、今後の家賃設定の参考にしてください。

近年の物価と家賃の状況

ここ数年間は物価上昇が続いており、実際私たちの生活でも物価上昇を感じることが多くなっています。


では、家賃も値上がりしているのでしょうか?


ここでは、近年の物価と家賃の現状について解説します。

近年の物価の上昇傾向

2023年6月の時点で、生鮮食品やエネルギーを含む総合指数は、前年同月比で3.3%上昇しており、2年前と比較しても、5%以上の上昇となっています。

 

また、不動産においても、新築物件の建築資材や人件費、光熱費などが値上がりしているため、新築マンションの価格は毎年上昇している状況です。

 

実際、不動産経済研究所のデータによると、2022年の首都圏の新築分譲マンションの平均価格は6,288万円であり、これは1990年のバブル期に記録された6,123万円という最高記録を上回っています。

家賃にも物価値上がりの影響が反映

物価の上昇は家賃にも影響を与えます。

 

時間差はあるものの、物価の上昇後は家賃が上がるというのが通説です。

 

実際、近年の物価上昇に伴い、家賃相場も徐々に上昇しています。

 

2年前の家賃相場と比較すると、新築物件の家賃は約5%上昇しており、特にファミリー向け物件では、2015年1月以降で最高値を更新し続けています。
参照:不動産SQUARE SITE  
           at home

家賃の値上げには正当な理由が必要

家賃の値上げは法律によって認められた賃貸物件オーナーの権利です。

 

しかし、値上げのためには正当な理由が求められます。

 

ここでは、どのような理由が正当とされるのか紹介しましょう。

正当な理由1.経済的な状況の変動

物価や人件費の上昇などの経済状況の変化は、家賃を上げるための正当な理由とみなされます。

 

物価の上昇は賃貸アパート経営にかかるコスト増加を引き起こし、オーナーの経営を圧迫する可能性があるためです。

 

物価上昇の折に安定的な賃貸経営を維持するためには、家賃の値上げが必要不可欠だと言えるでしょう。

正当な理由2.不動産物件の維持費や税金の上昇

周辺地域の開発によって利便性が向上し、固定資産税や都市計画税が増加すると、オーナーの負担も増えます。

 

このような税金の上昇は、家賃を上げる正当な理由と認められる可能性が高いです。

 

他にも、天候の影響で修繕費が増えたといった維持費の増加も、家賃値上げの正当な理由となります。

正当な理由3.周辺の家賃相場との乖離

物件のロケーション、間取り、築年数、建物の構造等によって家賃は異なります。

 

このため、一概には言えませんが、現在の家賃が周辺の類似物件の家賃と比較して低い場合の値上げは正当とみなされる可能性が高いです。

 

つまり、条件が似ている複数の物件を比較することで、値上げの正当性をより明確化することが可能です。

家賃の値上げが正当な理由と認められないケース

正当な理由に基づく家賃の値上げは認められますが、正当とは認められない理由での値上げは認められません。

 

正当な理由なく値上げを行った結果、訴訟に発展した場合、不当な値上げと判断される可能性があるため注意が必要です。

 

ここでは、どういった理由が不当な値上げになるのかを紹介しましょう。

オーナーの収入を増やすための値上げ

経済状況や税金に変動がなく、家賃が市場価格と同程度である場合に、オーナーが自身の収入を増やすことを目的に家賃を値上げするのは、一般的に不当と見なされます。

 

このような状況での家賃の増額は賃借人にとって不公平であり、合理的な理由がなければ、法的な問題を引き起こす可能性が高いです。

 

オーナーがどうしても値上げをしたい場合は、正当な理由を見つける必要があります。

周辺の家賃相場とかけ離れた値上げ

周辺の家賃相場が上昇した場合、その変動に伴い家賃を調整することは一般的に認められています。

 

しかし、市場相場よりも大幅に上回る額に設定することは認められません。

 

不当に高い家賃設定は、賃貸市場における不公平を生じさせる可能性があり、場合によっては法的な措置を受けるリスクがあります。

 

そのため、オーナーは周辺の物件と比較し、市場の動向を踏まえた適正な家賃設定を行わなければなりません。

契約書に家賃の値上げを行わないと記載がある場合

賃貸借契約書に家賃の値上げを行わないと明示的に記載されている場合、その期間中の値上げはできません。

 

「そのような契約があるの?」と思うかもしれませんが、賃貸借契約ではしばしば一定期間家賃を固定する特約条件を設けることができます。

 

こういった場合は、社会状況の変化があったとしても、契約の条項に基づき契約期間中の家賃の値上げは許されません。

 

賃貸人(オーナー)と賃借人(入居者)の間での公平な契約関係を維持するために重要な側面であり、契約の信頼性を確保するために不可欠なため、やむを得ないと言えるでしょう。

家賃値上げで発生するリスク

家賃を値上げすることは、一室あたりの収入増加を見込むことができ、賃貸経営の経済状況を改善できますが、入居者がこれを受け入れてくれない場合は、様々なリスクが生じます。

 

ここでは、家賃の値上げに伴うリスクについて見ていきましょう。

退去者が増えて家賃収入が少なくなる

家賃の上昇は、入居者の経済的負担を増大させるため、物件の実際の物件の価値に見合わないと感じさせる可能性が高いです。

 

そうなってしまうと、経済的な理由により入居者が退去を選択することが予想されます。

 

値上げが原因で退去者が増加すると、空室率の上昇に繋がるため、一室あたりの家賃を増やすことができたとしても、全体的な家賃収入が減少するでしょう。

 

したがって、家賃の値上げを実施する前に、その影響を十分に検討し、長期的な視点で賃貸物件の収益性を考慮することが重要です。

値上げ交渉がまとまらず揉める

家賃の値上げを通告したものの、交渉が決裂した場合、一方的な値上げはできません。

 

一方的に値上げしてしまうと、法的な対応が必要になることもあり、訴訟に発展した際は弁護士費用などの追加コストや精神的なストレスを伴います。

 

このため、慎重に値上げを検討することが必要です。

滞納・夜逃げが発生する

家賃の値上げが極端になると、賃料滞納のリスクが上昇し、最悪のケースとして、入居者が「夜逃げ」をしてしまう可能性が生じます。

 

夜逃げが発生すると、法的に契約を解除した上で新しい入居者を見つけるとなると相当な時間を要するだけでなく、退去者が放置した家財の撤去や処分にもコストが掛かってしまうでしょう。

 

これらの追加コストは、家賃収入の減少と相まって、オーナーにとってさらなる経済的負担をもたらします。

 

このため、家賃を値上げする際には、入居者の反応や可能性のある最悪のシナリオを考慮することが不可欠です。

家賃の値上げを成功させるコツ

 

家賃の交渉が長引いたり、訴訟に発展したりする事態は避けたいものです。

 

家賃値上げをスムーズに進めるためにも、以下のコツを知っておくようにしましょう。

値上げの理由を丁寧に説明する

家賃の値上げを伝える際は、なぜ今値上げが必要なのかを正当な理由と共に丁寧に説明することが大切です。

 

客観的なデータを用いて説明を行い、入居者が値上げを納得できるよう努める必要もあります。

 

さらに、入居者の意見に耳を傾け理解を示せば、多くの場合に交渉を円滑に進めることができるでしょう。

入居者が受け入れやすい家賃にする

新しい家賃が入居者に受け入れやすいかどうかが、交渉の成否に影響します。

 

大幅な値上げは抵抗感を生むため、周辺の家賃相場を考慮して妥当な家賃を設定するようにしましょう。

入居者にメリットのある条件で交渉する

家賃の値上げはオーナーにはメリットがありますが、入居者にとっては負担の増加です。

 

このため、入居者が反対するのも無理はありません。

 

しかし、更新料を減額するなど、入居者の負担を一時的に軽減するメリットを提示することで、交渉を有利に進めることができるでしょう。

 

ちなみに、物件の設備や内装などの改善によるメリット提供も有効です。

信頼できる管理会社に任せる

信頼できる管理会社に値上げ交渉を任せると、スムーズに進む可能性が高まります。

 

経験豊富な管理会社は交渉のポイントを熟知しており、エリアの家賃情報にも詳しいためです。

 

また、管理会社を通じて交渉を進めることでオーナーの負担を軽減できるので、積極的に活用するようにしましょう。

家賃値上げのプロセス

家賃を値上げするにあたっては、適切なプロセスに沿って進めることが重要です。

 

ここでは、そのステップを解説していきましょう。

1.家賃の値上げ額と値上げ時期を決定する

家賃の値上げを実施するには、まず周囲の物件との比較分析を行い、維持管理にかかる経費の増加を調査することが欠かせません。

 

新しく設定される家賃は、入居者にとって受け入れがたい金額であってはならず、同時に近隣の家賃相場にも合致するよう検討する必要があります。

 

また、値上げを通知した後は、入居者が新しい家賃について慎重に検討し、必要に応じて対応を考えることができるように、適切な時間を与えることが大切です。

2.入居者へ家賃を値上げしたい旨の連絡をする

家賃の値上げに関する通知は、値上げの額、予定されている時期、そして値上げの理由を明確に記載し、入居者が何らかの疑問や不服を感じた場合に対応するための連絡先も示すことが必要です。

3.入居者と家賃値上げの交渉をする

もし入居者が家賃の値上げに難色を示す場合は、個別に交渉を行い、家賃値上げの背景やその妥当性を、適切な資料を交えてわかりやすく説明することが必要です。

 

交渉を通じて、互いの理解と納得を得ることを目指しましょう。

4.話し合いがまとまったら合意書を作成する

入居者との交渉が成立し、家賃の値上げの合意を得られた場合は、その内容を詳細に記した合意書を作成し、両当事者が保有します。

 

将来的な誤解や紛争を防ぐためにも必ず作成するようにしましょう。

5.話し合いがまとまらない場合は法的手段をとる

万が一、交渉が不調に終わり、双方が合意に至らない場合は、簡易裁判所での調停を始めとするいくつかの法的手段を検討します。

 

ただし、訴訟は最終手段として考慮されるものであり、その過程のすべては詳細に記録しておくようにしましょう。

 

これにより、法的な手段が必要になった場合もスムーズに対処できます。

家賃の値上げ交渉がまとまらない場合の法的手段

前述したように、家賃値上げの交渉がまとまらない場合に、一方的に値上げすることはできません。

 

どうしても値上げが必要な場合は、最終的に法的な手段をとって解決する必要があります。

 

ここでは、値上げ交渉がまとまらない場合に、どのような法的手段が取れるのかを解説します。

簡易裁判所で調停を行う

簡易裁判所において行われる調停は、公正な第三者である調停委員が関与し、双方の当事者間で意見交換を行うプロセスです。

 

調停を通じて争いを抱える当事者たちは、法的な枠組みの中でお互いの立場を理解し、合意に至る可能性が高まります。

 

訴訟に比べ迅速かつ経済的な解決を図ることが可能であり、多くの場合、当事者間の関係を保ちながら紛争を平和的に解決するための優れた選択肢です。

訴訟を起こす

調停を経ても紛争が解決に至らない場合、当事者は訴訟という形で、正式に裁判所に訴えを起こすことが可能です。

 

訴訟は法的な判断を求める公式な手段であり、結果として法的拘束力のある判決が下されます。

 

しかしながら、訴訟を行うことは多額の費用が発生するだけでなく、長期間にわたる手続きが必要です。

 

また、訴訟はしばしば両当事者間の関係をさらに悪化させることがあります。

 

そのため、訴訟に踏み切る前には、可能なかぎり交渉や和解を含む他の解決方法を探求することをおすすめします。

 

これにより、無駄な時間と費用を避け、より効率的かつ平和的な解決を図ることが期待できます。

まとめ

ここ数年、物価の上昇が続いていることから、家賃の値上げを考えているオーナーも多いのではないでしょうか。

 

しかし、値上げ交渉は繊細で、簡単ではありません。もしも入居者との話がこじれてしまうと、訴訟にまで発展するケースも考えられます。

 

このため、決して正当な理由なく一方的に値上げを主張することがないように、注意しながら交渉をしていくことが重要です。

 

まずは、物件周辺の家賃相場の調査などを行い、しっかりとデータを集めて、賃借人に値上げはやむを得ないということが伝わる材料を揃えていきましょう。

 

そのうえで、信頼できる管理会社に相談しながら丁寧に話を進めていくことで、スムーズに話がまとまる可能性が高まります。

 

家賃の値上げを検討している方は、この記事を参考にしてみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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