物価高騰時代における経営コスト削減の工夫
昨今の物価高騰は、不動産経営をしていくうえで気になる問題です。
建築資材や人件費の上昇、エネルギーコストの増加など、経営にかかるコストは上昇の一途をたどっています。
このような状況下で不動産経営を維持していくには、コスト削減のための工夫が欠かせません。
本記事では、物価高騰時代において安定した収益を確保するためのヒントや不動産経営における具体的なコスト削減の方法を詳しく解説します。
物価高騰の原因
物価高騰は複雑な要因が絡み合って進行していますが、ここでは、主に日本国内の物価上昇を引き起こした要因について、それぞれの背景と影響を整理します。
コロナ後の輸入物価上昇
コロナの感染拡大が収束に向かうと、世界的な経済活動の回復が進み、各国で需要が急増しましたが、供給網はその影響から完全には回復しきれず、生産や物流の停滞が続きます。
この供給不足が世界的な物価上昇の引き金となり、特には海上輸送や航空貨物のコストが急騰し、その影響から輸入品の価格が大幅に上昇しました。
円安
円安も物価高騰の大きな原因に挙げられますが、輸入に依存するエネルギー資源や食料品、工業用原材料などは、円安の影響で価格が跳ね上がり、企業のコスト負担が増加しました。
これが最終的には消費者物価の上昇につながることになります。
人手不足による人件費の上昇
日本では少子高齢化が進行し、労働力人口の減少が深刻な問題となっていますが、そこに起因する人件費の上昇は、企業の経営コストを増加させ、最終的には製品やサービスの価格に転嫁されるケースが増えています。
エネルギーコストの上昇
世界的な石油需要の増加により石油価格が大幅に上昇していますが、電力会社は燃料費の負担増を価格に反映せざるを得ず、電気代も急騰しています。
エネルギー価格の上昇は、企業の生産コストを押し上げ、最終的には製品やサービスの価格に転嫁される形で消費者物価の上昇につながっています。
不動産経営にかかるランニングコスト
不動産経営を継続するためには、物件の維持管理や運営に関する様々なランニングコストが発生しますが、ここでは、不動産経営にかかる主な費用について解説します。
管理委託費
物件の運営管理を不動産管理会社に委託する場合、管理委託費が発生します。
この費用には、賃貸物件の入居者募集、家賃の集金、クレーム対応、物件の清掃・維持管理などの業務が含まれ、安定した不動産運営をしていくためには、経験ある管理会社の存在が不可欠です。
固定資産税や都市計画税
不動産の所有者には、基本的には毎年固定資産税と都市計画税が課されます。(但し、都市計画税は課税されない市町村があります。例えば浦安市などは非課税です)
固定資産税は物件の評価額に基づき、不動産の保有に対する基本的な税金であり、都市計画税は市街化区域内の物件に課されます。
損害保険料
不動産経営では、建物を災害や事故から守るための損害保険料が必要です。
主な保険には火災保険と地震保険がありますが、万一の災害に備えた適切な保険加入は、安定した経営の重要な要素です。
修繕費
不動産経営では、建物の劣化や設備の故障に対応するための修繕費が発生しますが、具体的には、外壁の補修、屋根の修理、配管の交換、空調設備のメンテナンスなどです。
物件によっては、突発的な修理も必要になる場合があり、計画的な修繕積立金の確保は、物件価値の維持と経営の安定に欠かせません。
借入金の利子
不動産経営では、物件の取得や建設資金を金融機関から借り入れる場合、借入金の利子がランニングコストに含まれます。
特に長期ローンでは、金利の変動が経営に大きな影響を与えるため、借り入れ条件の見直しや繰上げ返済の検討が重要です。
経営コストを削減する工夫
物価高騰が進む中、不動産経営では収益を維持するためにコスト削減の工夫が求められます。
ここでは、経費削減や運営効率化のために実践できる具体的な対策を紹介します。
経費の計上漏れをなくす
不動産経営において、経費の計上漏れを防ぐことは重要な節税対策です。
経費として認められる支出を正確に把握し、確実に計上することで課税対象となる所得を減らせます。
代表的な経費には、修繕費、管理費、借入金の利子、保険料、広告費などがありますが、領収書や請求書を整理し、帳簿管理を徹底することで計上漏れが防止可能です。
また、税理士の助言を受けて、見落としがちな経費も適切に計上すると良いでしょう。
管理委託の範囲を少なくする
管理会社への業務委託の内容を見直し、一部の管理業務を自分で行うと、依頼費用の削減につながります。
物件の簡単な点検や軽微な修理をオーナー自身が対応すれば、無駄な支出を避けられ、物件の状況も把握しやすくなります。
ただし、こうした方法には注意が必要です。
専門知識や経験が不足することで、問題解決が長引いたり、結果的に余計なコストが発生したりする懸念があります。
また、管理業務の負担増により、本業やプライベートが圧迫される可能性もあります。
必要な作業はプロに任せ、コスト削減と業務量のバランスを保つことが大切です。
管理会社の変更
管理会社の切り替えはコスト削減の有効な手段です。
現行のサービスや料金を他社と比較し、契約条件や手数料体系を検討することで、無駄な出費を減らし、管理品質を高めることも可能です。
ただし、変更にはデメリットもあります。
新しい管理会社や担当者が物件特性やオーナーの経営方針等を理解するまでは、期待した効果が得られない場合もあります。
また、新たな管理会社との契約手続きや移行期間には手間と時間を要し、一時的に管理品質が低下する恐れがあるため、メリット・デメリットを考慮して選択してください。
予防保全を行う
物件の定期的なメンテナンスを実施し、劣化や故障の兆候を早期に発見すれば、深刻なトラブルを未然に防ぐことが可能です。
具体的には、屋根や外壁のひび割れ点検、水回りの配管確認、空調設備の定期清掃などが挙げられます。
これらの小規模な点検と修理は費用が比較的安く、問題に早期に対応すると、トータルでは大きなコスト削減につながります。
計画的なメンテナンススケジュールを立ててプロの点検サービスを活用すれば、資産価値の維持とランニングコストの削減が実現可能です。
リノベーションや設備の入れ替えを行う
不動産物件のリノベーションや設備の入れ替えは、経営コスト削減と収益向上の両面で効果的です。
物件の内装や外装のリニューアル、老朽化した設備の交換を行うと、物件の魅力が向上し、家賃の値上げにつなげられる場合もあります。
例えば、古いキッチンや浴室を最新型に交換したり、壁紙や床材を一新したりすることで入居者が決まりやすくなります。
また、LED照明などの省エネ型の設備に変更すると、物件の光熱費が削減され運営コストの抑制に有効です。
それぞれ初期投資は必要ですが、資産価値の維持・向上を図りながら長期的な経営安定を目指せます。
物価高騰時代の不動産経営の注意点
物価が高騰する時代には、不動産経営においても環境の変化に対応することが求められます。
ここでは、経営の安定化を図るために特に注意すべきポイントを解説します。
金利の動向に注意する
物価高騰時にはインフレ抑制のために、金利が引き上げられる傾向がありますが、そうなると借入金の利子が増加し、ローン返済額が上昇するリスクが高まります。
このため、金利動向を常に注視し、借り換えのタイミングを見極めることが重要です。
特に変動金利で借り入れている場合、金利が上昇すると返済負担が増えるため、固定金利への切り替えも検討すべきです。
また、金利上昇リスクに備えて繰上げ返済や、収益物件の見直しを行い、不動産経営の安定化を図るのも良いでしょう。
計画的な資金管理が、長期的な経営にとって重要です。
家賃値上げも検討する
物価高騰時には、家賃の値上げも不動産経営の重要な選択肢となります。
物価が上昇すると、管理費や修繕費などの経営コストも増加するため、適切な家賃設定をする必要があります。
家賃を見直す際には、周辺の市場動向を調査し、地域の相場と比較することが不可欠です。
家賃の値上げは収益の安定化と経営維持のための正当な手法です。
まとめ
物価高騰時代の不動産経営では、コスト管理と収益向上の両立が不可欠です。
本記事を参考にしてコスト削減と付加価値のアップに取り組んでいくことをおすすめします。
そして、長期的な視点でコスト管理計画を立て、変動する経済状況に柔軟に対応することで競争力のある不動産経営が実現できます。
信頼できる管理会社や専門家のサポートを受け、資産価値の維持・向上に努めるのが成功のカギといえるでしょう。
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