賃貸経営において地震保険には加入するべき?メリット・デメリットを解説
賃貸経営を始めようと考えている方の中には、地震保険に加入するべきかで悩んでいる方が数多くいます。
地震保険は火災保険と違ってローンを組む際に加入する必要がないことから、「本当に必要なのか?」といった疑問を抱える方も少なくないためです。
では、実際のところ地震保険は加入するべきなのでしょうか?
結論から言うと、賃貸経営を営むのであれば地震保険に加入するのがおすすめです。
この記事では賃貸経営における地震保険の必要性や、補償範囲などの地震保険に関する基礎知識、地震保険のメリット・デメリットについて解説していきますので、地震保険の加入を迷っている方はこの記事を参考にしてみてください。
賃貸経営をするなら地震保険に加入しておいたほうが良い
地震保険とは、火災保険では補償されない「地震・火山噴火・津波」により建物が損壊した際の損害を補償してくれる保険です。
日本は世界有数の地震大国であるため、賃貸経営をしているなら地震に対する備えは必要不可欠です。
直近15年間でも「2011年の東日本大震災・2016年の熊本地震・2018年北海道胆振東部地震」など大規模地震が複数発生しており、今後も東南海地震や首都直下型地震が起きると予想されているため、地震保険には加入しておくことをおすすめします。
ちなみに、地震保険は地震保険法に基づき政府と保険会社が共同で運用している保険のため、どこの保険会社で地震保険に加入しても補償内容や保険料に変わりがないことも覚えておいてください。
地震保険の補償範囲
地震保険に加入するなら、地震保険で補償される財産の範囲や金額を理解しておかなくてはいけません。
補償されない財産や金額の上限が設けられているためです。
ここでは、賃貸経営における地震保険の補償範囲や金額を紹介していきますので、参考にしてください。
地震保険で補償される財産
地震保険で補償される財産を以下の表にまとめたので、まずは確認してみましょう。
被害箇所 |
補償内容 |
---|---|
建物 |
壁・柱・床・天井・ドア・外壁など |
家財 |
30万円を超える貴金属・宝石・骨董品・通貨・有価証券(小切手・株券・商品券等)・自動車など |
ちなみに、地震保険は建物と家財の補償がありますが、賃貸経営をされているオーナーが
地震保険に入る場合は、基本的に建物のみの契約となります。家財は専有部を対象とするため入居者が加入します。
地震保険の補償金額
地震保険の補償額は火災保険の保険金額の「30〜50%」の範囲で決められます。
ただし、建物は「5,000万円」、家財は「1,000万円」が上限です。
なお、詳しい補償額は以下の表にまとめたので確認してください。
損害の状況 |
支払われる保険金額 | ||
---|---|---|---|
建物 | 家財 | ||
全損 |
「基礎・柱・外壁・屋根」など 主要構造部の損害額が時価額の50%以上 |
家財の被害額が 時価額の80%以上 |
設定した保険金額の 100% (時価が限度) |
焼失・流失した部分の床面積が、 建物の延床面積の70%以上 |
|||
大半損 |
「基礎・柱・外壁・屋根」など 主要構造部の損害額が時価額の40〜50%未満 |
家財の被害額が 時価額の60〜80%未満 |
設定した保険金額の 60% (時価の60%が限度) |
焼失・流失した部分の床面積が、 建物の延床面積の50%〜70%未満 |
|||
小半損 |
「基礎・柱・外壁・屋根」など 主要構造部の損害額が時価額の20〜40%未満 |
家財の被害額が 時価額の30〜80%未満 |
設定した保険金額の 30% (時価の30%が限度) |
焼失・流失した部分の床面積が、 建物の延床面積の20〜50%未満 |
|||
一部損 |
「基礎・柱・外壁・屋根」など 主要構造部の損害額が時価額の3〜20%未満 |
家財の被害額が 時価額の10〜30%未満 |
設定した保険金額の 5% (時価の5%が限度) |
全損・大半損・小半損に至らない建物が、 「床下浸水・地盤面から45cmを超える浸水」 |
このように、地震によって被害が発生した際に受け取れる金額は、設定した保険金額と建物や家財の損害の状態によって異なります。
また、建物の損害は「基礎・柱・外壁・屋根」など主要構造部に限られるため、設備に被害があった場合は補償されないことも知っておきましょう。
地震保険の保険料
保険会社ごとの地震保険料に違いはありませんが、物件の所在地や構造ごとに保険料は異なります。
地震保険の保険料の目安を以下の表にまとめたので参考にしてみてください。
所在地 |
建物の構造 |
|
---|---|---|
耐火・準耐火・ 省令準耐火建物 |
耐火・準耐火・ 省令準耐火建物 |
|
鉄骨、コンクリート造など | 木造など | |
北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・栃木県・ 群馬県・新潟県・富山県・石川県・福井県・長野県・ 岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・鳥取県・ 島根県・岡山県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・ 長崎県・熊本県・鹿児島県 |
7,400円 |
12,300円 |
福島県 | 9,700円 | 19,500円 |
宮城県・山梨県・愛知県・三重県・大阪府・ 和歌山県・香川県・愛媛県・大分県・宮崎県・沖縄県 |
11,800円 |
21,200円 |
徳島県・高知県・茨城県 |
17,700円 |
41,800円 |
埼玉県 |
20,400円 |
36,600円 |
千葉県、東京都、神奈川県、静岡県 |
27,500円 |
42,200円 |
※上記の情報は2022年9月17日時点の情報になります。
なお、上記の保険料は2022年1月1日以降に契約を開始した場合の年間の金額であり、2022年1月1日以前の場合は上記の料金ではない可能性があるので、注意するようにしてください。
賃貸経営で地震保険に加入するメリット
賃貸経営で地震保険に加入するメリットとして「地震による損害を補償してくれる」のは当然ですが、実はそれ以外にもメリットがあります。
ここでは、賃貸経営において地震保険に加入するメリットを解説するので、内容をよく確認して地震保険に加入するか判断するようにしましょう。
地震によって損壊した建物の修繕費として利用できる
地震災害に備えるための保険であるため、当然のことではありますが、地震により被害を受けた建物の修繕費として受け取った保険金を利用できます。
建物の被害状況によっては多額の修繕費がかかってしまうため、当然のこととはいえ保険金を受け取って修繕費に充てられることは大きなメリットです。
なお、アパートやマンションが地震によって損害を受けて一時的に家賃収入が少なくなったり、無くなったりした場合にも役立ちます。
地震によって家賃収入が無くなって不動産投資ローンの返済に困っても、受け取った保険金をローンの支払いに充てることが可能なためです。
このため、地震の多い日本で賃貸経営をする以上、地震保険は必要不可欠なものと言えます。
ちなみに、2022年現在、地震による建物被害や家賃損失を補償できるのは地震保険だけです。
また、事業用として運営しているマンションやアパートなどの賃貸物件が地震による被害を受けても、国や自治体が補償してくれる制度もありません。
したがって、地震によるリスクを少しでも和らげたい方は、地震保険に加入するようにしましょう。
節税対策として利用できる
地震保険に加入することで節税対策にもなります。
地震保険料控除を受けることができるためです。
ただし、控除を受けられるのは、オーナー自身またはオーナーと生計を共にする配偶者・親族が賃貸物件に居住している場合に限られるので十分に注意してください。
なお、地震保険料控除の金額は以下の表にまとめているので確認しておきましょう。
区分 |
年間の支払保険料合計 |
控除額 |
---|---|---|
(1)地震保険料 |
50,000円以下 |
支払金額の全額 |
50,000円超 |
一律50,000円 |
|
(2)旧長期損害保険料
|
10,000円以下 |
支払金額の全額 |
10,000円超 |
支払金額×1/2+5,000円 |
|
20,000円以下 |
||
20,000円超 |
15,000円 |
|
(1)・(2)両方がある場合 |
- |
(1)、(2)それぞれの方法で計算した 金額の合計額(最高50,000円) |
※2022年9月17日時点の情報になります。
※旧長期損害保険料とは一定の要件を満たす2006年12月31日以前に締結された長期損害保険契約の損害保険料のことです。
上記のように、1年間で支払う保険料の合計金額によって控除額は異なります。
賃貸経営で地震保険に加入するデメリット
賃貸経営において必要性が高い地震保険ですが、当然デメリットもあります。
地震保険に加入することを検討しているなら、メリットだけでなくデメリットも理解しておくようにしましょう。
地震保険単体では加入できない
地震保険は単体では加入できません。
火災保険に付帯して契約する必要があるためです。
そのため、地震保険料だけでなく火災保険料も支払う必要があります。
しかも、地震保険の保険料は火災保険よりも高く、金銭的な負担は大きいです。
とはいえ、火災保険は地震や噴火以外の「台風・雹(ひょう)・雪」などの自然災害や、火災によって経営している物件に損害が発生した場合に保険金を受け取ることができる点や、さらに加入が銀行の融資条件となっていることも多いため、加入しなければならないことがデメリットとは言いきれません。
地震保険だけでは建物を立て直せない可能性が高い
地震保険の補償額の上限は「建物が5,000万円」、「家財は1,000万円」で、火災保険と違って建物の修繕や立て直しのための再建費が全額補償されるわけではありません。
建物の立て直しを目的とした火災保険と違って、地震保険は「被災者の生活復興」を目的としているためです。
また、損害に応じて補償される条件が決まっているため、仮に地震によって損害が発生していたとしても基準を満たしていない場合は、保険金を受け取れない可能性もあります。
このため、地震保険は確かに加入していると安心な保険ですが、過信しすぎずに他のリスク対策も取っておくようにしましょう。
賃貸経営で地震保険に加入する際のポイント
賃貸経営で地震保険に加入する際は、いくつか押さえておいて欲しいポイントがあります。
ポイントを押さえておくことで保険料が安くなるなどのメリットがあり、加入してから失敗したと後悔することを防げるため、確認しておくようにしてください。
割引制度の利用を検討する
地震保険には4つの割引制度があります。
これらをうまく活用することで保険料を安く抑えることが可能です。
以下の表に4つの割引制度についてまとめたので確認してみてください。
割引の種類 |
対象の建物 |
割引額 | |
---|---|---|---|
建築年割引 |
1981年6月1日以降に新築された建物 |
10% |
|
耐震等級割引 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する評価方法基準に 定められた耐震等級の建物 |
耐震等級1 |
10% |
耐震等級2 |
30% |
||
国土交通省の定める 「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に 定められた耐震等級を有している建物 |
耐震等級3 |
50% |
|
免震建築物割引 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する評価方法基準に 定められた「免震建築物」の基準に満たす建物 |
50% |
|
耐震診断割引 |
地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、 改正建築基準法についての耐震基準を満たす建物 |
10% |
上記の表からもわかるように、耐震・免震性が高くなればなるほど地震による被害が抑えられる可能性が高くなるため、割引率が高くなっています。
地震保険料を抑えたい方は、耐震・免震性が高い物件を選ぶといいでしょう。
なお、これらの割引制度は併用できません。
地震保険の割引率は「最大50%」が上限です。
火災保険の内容もよく確認する
地震保険の内容はどの保険会社も変わらないため、どの保険会社を選んでも良いと勘違いされている方がいらっしゃいます。
しかし、それは間違いです。 地震保険に加入するために必要な火災保険については保険会社によって内容が異なるためです。
そのため、物件に見合った火災保険内容を確認して、複数の保険会社で比較検討することが重要になります。
仮に、火災保険の内容を確認せずに地震保険に入るためだけに火災保険に入ってしまうと、地震保険に加入するために必要のない補償に加入してしまい保険料が無駄になるため、十分に注意してください。
まとめ
この記事では、大規模地震が多く発生している日本でアパートやマンションなどの賃貸物件を経営するにあたり、地震保険に加入することをおすすめする理由について解説してきました。
賃貸経営における地震保険の必要性や、補償範囲などの地震保険に関する基礎知識、地震保険のメリット・デメリットについても詳しく解説しているので、地震保険の加入を悩んでいるのなら、この記事を参考にしてみてください。
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