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不動産オーナーさま向けコラム

賃貸需要が減少しても収益を維持する方法

2025.03.01

近年の日本では人口減少や高齢化が急速に進行しており、国や自治体も対策を進めていますが、特効薬は見当たらない状況です。

 

こうした現状に対して、賃貸物件オーナーも収益確保に真剣に取り組む必要がある一方で、時代の変化は新たな需要を取り込むチャンスでもあります。

 

居住者のニーズを的確に捉え、柔軟に対応することで、賃貸経営を安定させることが可能です。

 

本記事では、賃貸需要が減少する背景についてデータを交えて分析し、収益を維持するための具体的な方法やアイデアをご紹介します。

 

物件の魅力を高め、新たな需要を掘り起こし、収益性を向上させるための実践的なヒントを見つけてください。

賃貸需要減少の背景

賃貸市場を取り巻く環境は、人口動態の変化や地域ごとの需要減少により、大きな転換期を迎えています。

 

ここでは、賃貸需要減少の主な原因とその影響について詳しく解説します。

日本の人口動態とその影響

日本では、少子高齢化が進行し、総人口は減少傾向が明らかです。

 

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、2020年の総人口1億2,615万人が2070年には8,700万人にまで減少すると予測されています。 

 

特に、生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,717万人をピークに減少を続けており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)にまで減少する見込みです。 


参照:総務省「生産年齢人口の減少」

 

さらに、若年層の人口が大きく減少しており、将来的な市場の縮小リスクが上昇中です。総務省のデータによれば、15歳未満の人口割合は2023年時点で11.4%と過去最低を記録しました。

 
参照:総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)」

 

このような人口構造の変化は、賃貸市場にも影響を与え、需要の減少や空室率の上昇といった課題を引き起こす可能性があります。

空き家の増加とその影響

日本では、人口減少と高齢化が進む中で、賃貸物件の空室率が上昇しています。

 

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万戸に達し、住宅総数の13.8%を占めており、およそ7戸に1戸が空き家という状況です。

 

このうち賃貸用の空き家は430万戸で、賃貸物件の供給過剰が問題となっています。

 

地方では若年層の都市部への流出が顕著であり、空室率の上昇が賃貸市場をさらに縮小させる原因となっています。

 

一方で、都市部では競争が激化し、物件毎の差別化が求められる状況です。


参照:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果」

地方での賃貸需要の低下

地方における賃貸需要の低下は、人口減少の加速と若年層の都市部への流出が主な要因です。

 

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2023年版)」によれば、地方圏の人口は2030年までに約10%減少すると予測されています。

 

特に、地方の若年層は進学や就職を理由に都市部へ移動することが多く、これが地方の賃貸需要の減少に拍車をかける大きな要因です。

 

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」では、20~29歳の人口移動率が都市部で高く、地方の若年人口が減少している実態が明らかです。

 

この現象は、地方の不動産市場における競争を激化させる一因となっています。


参照:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」

人口減少下でも収益の確保は可能

近年の少子高齢化や都心への人口集中など、市場環境は大きく変化しつつあります。

 

しかし、こうした社会情勢の変化に合わせて物件のコンセプトや立地を見直せば、人口減少局面でも十分に安定した収益を確保することができます。

 

ここでは、その具体的な理由や戦略について説明していきましょう。

高齢者向け賃貸物件の需要拡大

日本の人口減少が進む中で、65歳以上の高齢者人口は増加傾向です。

 

総務省のデータによれば、2024年時点で高齢者人口は約3,625万人となり、総人口の29.3%を占めています。

 

このトレンドは今後も続き、高齢者向けの住宅需要が高まることが予測されます。

 

特に、バリアフリー設計や安全面に配慮した物件は高齢者にとって魅力的であり、賃貸市場での競争力を強化する重要な要素となるでしょう。


参照:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」

 

また、緊急時対応サービスや見守り機能を備えた物件も注目されています。

 

こうした特化型の賃貸物件は、高齢者の安心感を提供するだけでなく、長期的な入居者確保にもつながるのです。

単身世帯の増加による安定需要

単身世帯の増加は賃貸需要を下支えする重要な要素です。

 

総務省の「2020年国勢調査」によると、全世帯のうち約39%が単身世帯を占め、今後もその割合は増加すると予測されています。

 

特に都市部では、若者の就職や進学に伴い単身世帯の需要が高い状況が継続中ですが、この現象の背景には、核家族化や未婚率の上昇、さらには高齢者の単身世帯化が挙げられます。

 

婚姻率が減少する一方で、離婚率の上昇も単身世帯の増加を後押ししています。

 

そのため、1Kや1LDKといったコンパクトな賃貸物件の需要は底堅いです。

 

加えて、ライフスタイルの多様化により、単身世帯のニーズは多様化しています。

 

例えば、ペット可物件やインターネット環境が充実した物件への需要は顕著です。

 

これらの特徴を持つ物件は競争力を保ちやすく、単身世帯へのターゲティングが成功の鍵となります。

都心部の賃貸需要の安定性

都心部の賃貸需要は、地方からの人口移動によって安定的に支えられています。

 

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2022年には東京都で約8万人の転入超過が報告されており、他の大都市圏でも似た傾向が続いています。

 

教育機関や雇用機会が都市部に集中していることが、この流れの大きな要因です。

 

また、都市部は交通網や生活インフラが充実しているため、若者だけでなく、高齢者の移住先としても魅力的です。

 

そのため、コンパクトな1Kや1LDKの物件へのニーズは安定しています。

 

さらに、都市部の物件は公共交通機関へのアクセスや周辺環境の利便性が高く評価されるため、物件への需要の変動が比較的少ない傾向にあります。

賃貸需要が減少しても収益を減少させない工夫

少子高齢化や都市部への人口集中など、賃貸需要が長期的に減少するリスクは否めません。

 

しかし、工夫次第で入居率を維持し、安定した収益を確保する方法は多く存在します。

 

物件の設計コンセプトや設備、サービスの充実によって、入居者を惹きつける魅力ある物件を作り上げることが重要です。

 

ここでは、具体的な取り組みの事例を紹介します。

ターゲット層に特化した物件設計

賃貸市場で競争力を保つためには、ターゲット層に特化した物件設計が重要です。

 

例えば、高齢者向け物件ではバリアフリー設計や手すりの設置、緊急呼び出しボタンの導入がニーズに応える効果的な手段となり、こうした設備を整えた物件は、安心感を重視する高齢者層からの支持を得やすいといえます。

 

また、単身者向けには1Kや1LDKといったコンパクトな間取りが人気ですが、特に都市部では、通勤や通学の利便性を重視する単身世帯の需要が顕著です。

 

充実したインターネット環境や宅配ボックスなど、単身者の生活に合った設備を導入する事も効果的です。

 

また、オートロック、防犯カメラ、モニター付きインターホンなど、セキュリティを強化することで、特に女性の単身者にとって安心感を与えることができます。

 

このように、特化型物件は特定の層からの選択肢として優先されやすく、他物件との差別化を図る上で大きな競争優位性があります。

環境に配慮した物件作り

賃貸物件において環境配慮型の設備を取り入れることは、物件の魅力を高めると同時に、コスト削減にもつながる有効な戦略です。

 

例えば、断熱リフォームを行うことで冷暖房効率が向上し、入居者の光熱費を削減できます。

 

また、省エネ性能の高い給湯器やLED照明の導入は、物件全体のランニングコストの軽減にもつながります。

 

環境意識の高い入居者層をターゲットにすることで、競争が激化する市場で差別化を図ることが可能です。

 

特に若年層や子育て世帯は、持続可能性やエコへの意識が高い傾向にあります。

 

このような層に対し、省エネ性能や環境負荷の低さをアピールすれば、物件選びの際の決め手となるでしょう。

 

さらに、自治体の補助金制度を活用すれば、導入コストを抑えられる場合もあります。

 

投資リスクを最小限に抑えつつ、物件価値を向上させることが可能です。

 

環境配慮型物件への取り組みは、時代のニーズに応えつつ、安定した収益を確保するための鍵となると言えるでしょう。

スマートホーム技術の導入

スマートホーム技術を取り入れることで、利便性、快適性、安全性が向上し、入居者にとって魅力的な生活環境を提供できます。

 

例えば、スマートロックや防犯カメラは、防犯性を高めると同時に、鍵の受け渡しを簡便にし、管理の効率化にも役立ちます。

 

また、スマート照明やエアコンは、リモート操作や自動化ができ、省エネルギー性や利便性のアピールが可能です。

 

特に若い世代やITに親しんだ層に人気が高まるでしょう。

 

さらに、スマートホームの導入は、他物件との差別化が図れ、空室リスクの軽減や家賃設定の向上につながります。

 

初期投資は必要ですが、長期的な競争力の向上や入居者満足度の向上を考えると、賃貸経営における有効な投資といえます。

新たな需要を掘り起こした事例

人口減少や都市集中化によって、従来の賃貸需要が伸び悩む一方、新しいライフスタイルや社会情勢の変化に着目して新たな需要を掘り起こす動きが活発化しています。

 

ターゲットを従来とは異なる層に広げたり、環境や働き方の多様化に対応したりすることで、安定的な収益を実現する事例が増えてきています。

 

外国人労働者向け市場の開拓

日本で働く外国人労働者が増加する中、彼らを対象とした賃貸物件への需要が高まっています。

 

多言語対応の契約手続きはもちろん、文化や習慣の違いに配慮した間取り設計や設備、さらにはトラブル時のサポート体制を整えることで、高い入居率を維持する成功事例が増えています。 

 

具体的には、多言語対応のスタッフや契約書を用意したり、生活習慣に合わせたキッチンやバスルーム設計を行ったりすることが挙げられます。

 

また、入居後の生活を支援するサービスを提供することで、外国人入居者にとって「安心して暮らせる物件」という付加価値を生み出すことが可能です。

 

こうしたきめ細かな対応により、安定した集客と高い満足度を得られるケースが増えています。

地方での新たな働き方への対応

リモートワークの普及に伴い、都会を離れて地方で働きながら生活するスタイルが注目されています。

 

豊かな自然や静かな環境を好む人々にとって、地方の物件には大きな魅力があります。

 

こうしたニーズに対応するためには、高速インターネット回線の整備が欠かせません。 

 

さらに、地方自治体による移住支援や補助金制度を活用すれば、リモートワーカーに対して家賃補助や引っ越し支援などのメリットを提供できる場合もあります。

 

これにより、都会では得られない住環境と経済的支援をセットで提供し、結果的に入居者の長期定着や地域の活性化にもつながります。

収益を維持するための注意点

少子高齢化や経済情勢の変化によって、賃貸需要が不安定化するリスクは否めません。

 

しかし、事前に空室リスクに備えたり、堅実な資金管理を行ったりすることで、収益を安定的に維持することが可能です。

 

ここでは、収益確保に向けて押さえておきたいポイントと、具体的な対策について解説します。

空室リスクを最小限に抑える

空室リスクを軽減するためには、市場調査を行い、適切な賃料設定が重要です。

 

また、状況にあわせて短期間で賃料を見直せる仕組みを導入すると変動する需要にも柔軟に対応可能です。

 

さらに、長期入居を促進する工夫として、住環境の改善や付帯サービスの充実が挙げられます。

 

定期的なメンテナンスや入居者のニーズに合った設備の提供は、満足度向上につながり、安定した賃貸経営が可能になります。

堅実な資金計画とリスク管理を行う

安定した賃貸経営には、空室リスクを考慮した保守的な収益予測が欠かせません。

 

地域の需要動向や過去の入居率を参考に、現実的な収益モデルを作成することが重要です。

 

これによって想定外の空室が発生しても、経営を安定的に維持する体制が整います。

 

さらに、定期的な修繕費や突発的なトラブルに備え、予備資金を計画的に積み立てることも大切です。

 

長期修繕計画を立て、設備や建物の寿命を見据えた費用配分を行うと良いでしょう。

 

こうした対策をしておくことで、予期せぬ出費が収益を圧迫する事態を未然に防ぐことが可能です。

まとめ

日本の賃貸市場は人口減少や高齢化の影響を受け、地方を中心に空室率の上昇や需要の減少が顕著になっています。

 

このような環境下でも収益を維持するには、ターゲット層に特化した物件設計や環境配慮型のリフォーム、スマートホーム技術の導入など、差別化を図る取り組みが重要です。

 

また、高齢者や単身世帯、外国人労働者、リモートワーカーなど新たな需要層への対応も鍵となります。

 

賃貸オーナーは市場の変化を敏感に察知し、入居者ニーズを捉えて積極的に実践することが求められるでしょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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