不動産投資の修繕費はいくら?費用の目安とともに修繕の注意点などを解説
2022.02.07
不動産投資においては、例え新築物件を運用するとしても修繕費用が発生します。しかし、何にいくらかかるのかわからないことから不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
修繕は突発的に発生するものも多いため、あらかじめ費用を積み立てるなど備えておかないと、予期せぬ損失を被ることにもなりかねません。
この記事では、不動産投資において必要となる修繕の内容とともに、費用の概算などについても解説します。
修繕費の上昇によるデッドクロスに要注意

不動産投資を続けていると、大半の物件は築年数の経過とともに適正な家賃が下がっていき、修繕にかかる費用は高くなっていきます。数十年単位の長期間にわたって賃貸運用を続けていると、支出が収入を上回って赤字になる時期が来ることも想定されます。
黒字から赤字に転換する時期のことを「デッドクロス」と呼びます。デッドクロスの時期を見極めて物件を売却する計画のことを「出口戦略」と言います。不動産投資で損失を出さないためには、物件を購入する前の時点で、ある程度の出口戦略を考えておくことも必要です。
不動産投資には3種類の修繕費がある

建物の修理や設備の交換などのことをまとめて「修繕」と呼びますが、不動産投資における修繕は主に3種類あります。それぞれの時期や内容などについて解説します。
入居者入れ替え時の原状回復工事費用
不動産投資では入居者の退去に合わせて新たな入居者の募集が必要です。しかし、退去した後の住戸をそのまま次の入居者に貸し出すことはしません。入居者が退去した後には、原状回復と呼ばれる工事が必要です。
次の入居希望者に決めてもらうために内見などに対応する必要がありますが、住戸内がきれいになっている方が、内見時の印象は良くなるものです。なお、現入居者の退去前に新たな入居者が決まった場合にも、原状回復工事は必要になります。
原状回復工事の内容としては、主に以下のものが挙げられます。
住戸内壁紙の張替え
フローリングの清掃及びワックスがけ(必要に応じてフローリングの交換)
洗濯機パンや台所の排水管清掃
キッチン、浴室、トイレの清掃
フローリングやトイレの清掃などは「クリーニング」として一括りにされることも少なくありません。費用の相場は住戸の広さによって異なりますが、ワンルームから1LDKの間取りであれば、3万円前後が相場です。ハウスクリーニングとして部屋全体の清掃を実施する場合は、作業前に対応箇所を明確にしておくことが重要になります。
また、住戸内壁紙の張替えについても、使用する壁紙によって費用は異なりますが、面積1㎡あたり1,000円~1,500円が相場です。
なお、壁紙について目立った損傷や汚れがない場合は、そのまま次の入居者に賃貸することも考えられます。しかし、国土交通省の資料によると壁紙は「6年で残存価値が1円になる」とされているため、傷汚れがなくても6年が経過したら張り替えるのが適当です。
※参照:国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
設備の交換や修理の費用
住戸には様々な設備がありますが、特にエアコンや給湯器などについては部分的な修理ができないことも多い上に、交換には多額の費用がかかります。また、同様に建物の共用部分の設備も押さえておく必要があります。
設備の内容としては、主に以下のものが挙げられます。
・給湯器
・エアコン
・インターフォン
・オートロックシステム
・エレベーター
・自動ドア
・消防設備(消火器、避難ハッチ、感知器等)
・集合ポスト など
国土交通省が発行している「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によると、エアコン及び給湯器の交換目安時期は11年目~15年目です。また、交換費用についてはそれぞれ11万円とされています。
※参照:国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001231404.pdf
ただし、給湯器の方については特に、メーカーや型式などによって値段の幅が大きいため要注意です。そのほか、エアコンについては複数台設置されていれば費用が大きくなります。なお、本体の料金とは別に工事費用がかかることもあるので、上記の費用はあくまで目安として捉える必要があります。
中古マンションなどに投資する場合は、物件購入の前にエアコン及び給湯器の交換・修繕履歴について確認することが重要です。
マンションやアパートなどの大規模修繕費用
マンションやアパートなど集合住宅に投資する場合は、住戸内の修繕とは別に外壁や屋根など共用部に関する工事が発生します。分譲タイプのマンションに投資する場合は、マンションの管理組合が長期修繕計画を作成しているため、修繕の発生時期について事前に把握することが必要です。
長期修繕計画はマンションを購入する際に重要書類として売主から提供されます。マンションに投資する場合は、特に大規模修繕工事の発生時期に要注意です。なお、国土交通省は12年ごとの大規模修繕工事施工を推奨しています。
大規模修繕工事とは、マンションの外壁に足場を組み立てて、外壁のタイル交換や鉄部の塗装などを行う工事のことです。工事の費用は分譲マンションの場合は管理組合(区分所有者全員)が修繕積立金の中から負担しますが、マンションによっては工事の前に各戸の所有者から一時金として数十万円単位の費用を徴収する場合もあります。
大規模修繕工事の内容としては、主に以下のものが挙げられます。
・仮設工事
・塗装工事/貼替工事/洗浄工事
・補修工事
・シーリング工事
・防水工事
・設備工事
費用の徴収が発生する場合は、長期修繕計画に時期と徴収費用などが記載されているため、こちらも事前に確認することが重要です。
不動産投資の修繕で損をしないためのコツ

不動産投資で物件の修繕を避けることはできません。修繕費を急な出費にしないためには、日頃から計画的な運用を心掛けることが必要です。
毎月の収益から修繕用の費用を積み立てておく
既に解説した通り、賃貸運用を長期間続けていると、給湯器やエアコンなどの設備交換に加えて、時期によっては大規模修繕工事の臨時費用徴収などが発生します。
これらの費用は高額になることも多く、あらかじめ備えておかないと収益を大きく圧迫することにもなりかねません。修繕の発生時期と費用の目安を把握するとともに、毎月の収益から修繕用の費用を積み立てておくことが重要です。
給湯器やエアコンなどの設備については特に、故障してからの対応になると入居者の生活に大きな支障となり、入居者とのトラブルに発展しかねません。
また、急な対応に迫られると、複数の業者から相見積もりを取得の上比較するなどのことができなくなります。あらかじめ積み立てた修繕費用を原資にして先手の対応を取ることが重要です。
マンションの長期修繕計画などを確認する
分譲タイプのマンションに投資する場合は特に、長期修繕計画の事前確認がポイントになります。また、実際の工事施工にあたっては管理組合の理事会が時期などを決めるため、可能であれば理事会や総会といった会議の議事録なども確認しておくと役立ちます。
そのほか、投資物件を選ぶ段階で、大規模修繕工事の一時金負担があるのか聞いておくのも有効です。築年数が10年を超えている場合は特に、大規模修繕工事の発生時期と併せて事前確認しておくのが安全と言えます。
なお、一棟アパートに投資する場合は、管理会社と相談しながら修繕計画を立てておくことが重要です。その場合は業者に丸投げせずに、オーナーとして打合せを重ねながら内容を固める必要があります。
まとめ
不動産投資と修繕は切っても切れない関係にあり、修繕をなくす方法というのは存在しません。修繕によって予期せぬ赤字などを発生させないためには、計画性が重要になります。
国交省の資料や管理会社のアドバイスなどを根拠として修繕の発生時期および概算費用を見極め、毎月費用を積み立てておくことなどが有効です。
関連記事こちらの記事も合わせてどうぞ。
2024.11.01
マンションの給排水管の更新・更生工事を徹底解説
2023.10.01
高齢者向けのバリアフリーリフォームとは?ニーズとメリットを徹底解説
2023.02.15