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資産活用、賃貸管理、大規模修繕のダイニチ

不動産オーナーさま向けコラム

アパート・マンション経営で実施しなければならない法定点検とは?

2022.09.01

アパートやマンションなどの賃貸物件を経営している場合、建物や設備の法定点検を実施する必要があります。

 

しかし、法定点検にはさまざまな種類があり、建物の種類によって実施するべき点検の項目が異なるため、必要な点検について理解しておくことが重要です。

 

そこで、本記事では、アパート・マンション経営で実施しなければならない法定点検と費用相場、注意点について解説していきます。

 

法定点検について悩んでいる方は、本記事を参考にしてみてください。

アパート・マンション経営では法定点検が義務付けられている

 

法定点検とは、「建築基準法」や「消防法」などの法律によって義務付けられている点検のことです。

 

法律で定められた周期での「定期的な検査」と「管轄役所への報告」が義務付けられています。

 

よって、実施すべき重要な点検ですが、法定点検を行うことで以下の効果を期待できます。

 

・ 建物や設備の点検を行うことで故障や事故を未然に防ぎ、入居者の安全性を確保できる

・ 定期的な点検を行うことで、修繕にかかる出費を抑える効果も期待できる

 

なお、建物や設備の点検には「法定点検」とは別に、オーナーが自主的に行う点検である「任意点検」もあります。

 

法律で義務付けられていないため実施は任意ですが、入居者の安全や設備の保全のためには実施するべき点検です。

 

このため、任意点検についても少し紹介しましょう。

 

例えば、以下のような点検が任意点検に該当します。

 

・機械式駐車場点検

・ 自動ドア点検

・ 宅配ボックス点検

・ 防犯カメラ点検

 

法定点検が義務付けられていない設備に関しても定期的な点検を行うことで、入居者の安全を確保したうえで設備の寿命を延ばすことができます。

 

強制されるものではありませんが、自身のためにも任意点検を検討してみましょう。

アパート・マンション経営で実施しなければならない法定点検の種類

アパート・マンション経営で実施しなければならない法定点検は多数あります。

 

以下に、義務付けられた法定点検の種類の一覧表を記載していますので、確認してみてください。

 

名称 周期 関連する法令
消防用設備点検 機器点検:6か月に1回 消防法
総合点検:1年に1回
簡易専用水道管理状況検査 1年以内ごとに1回 水道法
専用水道定期水質検査 残留塩素検査:毎日 水道法
水質検査:1か月に1回
受水槽清掃:1年に1回
特定建築物定期調査 3年に1回 建築基準法

建築設備定期検査

1年に1回 建築基準法

自家用電気工作物定期点検

月次点検:1か月に1回  電気事業法 
年次点検:1年に1回
昇降機(エレベーター)定期検査 1年に1回 建築基準法

 

ちなみに、上記の点検を行うためには一定の資格が求められるため、基本的に専門業者に依頼するのが一般的です。

 

では、それぞれの項目ごとに詳しく解説していきましょう。

消防設備点検

 

 

アパート・マンションに設置してある消防設備点検は、「消防法17条3の3」によって義務付けられた法定点検です。

  

この消防点検には「機器点検」と「総合点検」の2種類があり、点検の周期も異なります。

  

機器点検の場合は、6か月に1度の点検が義務付けられており、「消防設備が適切に設置されているのか」や、「設備に損傷がないのか」などの簡易的な動作確認です。

  

一方で、総合点検は1年に1度の点検が義務付けられており、消防設備を作動させて防火機能を総合的に確認するものになります。

  

火災報知器を鳴らしたり、避難はしごを実際に使用するため、入居者への事前の周知は忘れないようにしましょう。

  

なお、消防設備の「機器点検」と「総合点検」は、点検結果をまとめて管轄の消防署に報告する必要があります。

  

報告を怠ると「30万円以下の罰金又は拘留」に処せられる可能性があるので、注意するようにしてください。

  

ちなみに、消防設備点検で点検を行う設備と点検内容は以下の通りです。

 

設備名 点検内容
消火器 設置場所の確認・動作確認・中身の交換
自動火災報知設備 専有部及び共用部の設置確認・動作確認
避難器具 格納場所の確認・動作確認
誘導灯

誘導灯が点灯しているのかの確認

避難経路から誘導灯が見えるのかの確認

非常警報設備(非常ベル・自動サイレン)

動作確認・設置場所の確認

連結送水管

ホースの劣化確認・動作確認 

 

「消防設備士」または「消防設備点検資格者」が上記の設備点検を行います。

簡易専用水道管理状況検査

簡易専用水道とは水道事業者から供給された水を受水槽に受け、ポンプを利用して施設内に給水する方式のことです。

 

受水槽の有効容量が10立方メートルを超えて設置されており、簡易専用水道を利用して水を供給している場合は、水道法に基づいた法定点検である「簡易専用水道管理状況検査」を1年に1回の周期で行う必要があります。

 

ちなみに、簡易専用水道管理状況検査は、地方公共団体の機関または厚生労働大臣の登録を受けた簡易専用水道検査機関に依頼して検査を受けなければなりません。

 

検査を怠った場合は保健所や市区町村の担当部署の指導を受けるだけでなく、「100万円以下の罰金」に処される可能性があるため注意しましょう。

 

なお、簡易専用水道管理状況検査の検査内容は以下です。

 

検査名 検査内容
外観検査       受水槽が設置している場所の周辺の状況を検査する
水質検査

給水栓の水を検査する

(臭い・味・色・色度・濁度・残留塩素)

書類検査 水槽の清掃記録の確認などを行う

 

簡易専用水道管理状況検査を行う際は、原則として立会いが必要になることも覚えておいてください。

専用水道定期水質検査

専用水道とは、以下の条件のいずれかを満たした水道のことです。

 

・ 受水槽が100立方メートル以上

・1日の最大給水量が政令で定める基準を超えるもの居住人口が101人以上

・ 口径25ミリメートル以上の導管の全長が1,500メートルを超えるもの

 

マンションに専用水道が使用されている場合は、法定点検である「専用水道定期水質検査」を実施して水質基準に適合しているかを確認する必要があります。

 

なお、検査や点検の頻度は以下のように検査項目ごとに異なるので覚えておきましょう。

 

・ 残留塩素検査、色や濁りの確認:毎日

・ 給水栓における水質検査:1か月に1回

・ 受水槽清掃:1年に1回

 

特に、残留塩素検査・色や濁りの確認は毎日行わなければならないので、忘れないようにしてください。

 

特定建築物定期調査

 

アパートやマンションなどの共同住宅で、共同住宅として利用される部分の面積が1,000平方メートル以上の規模を超えるものは、建築基準法第2条に定められる「特殊建築物」に該当します。

 

特殊建築物に該当する建物は、3年に1回という周期で点検と報告が義務付けられており、必ず実施しなければなりません。

 

仮に特定建築物定期調査を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、「100万円以下の罰金」に処される可能性があるため注意しましょう。

 

ちなみに、特定建築物定期調査は、特定建築物調査員や一級建築士や二級建築士の資格を有している者が行う必要があり、調査内容は以下のとおりです。

 

調査項目 調査内容
敷地・地盤 

敷地の地盤沈下・傾斜の確認

敷地内の雨水の排水状況

敷地内通路の有効幅員の確認・障害物の有無

ブロック塀等の耐震対策・劣化および損傷の状況

擁壁の劣化および損傷の状況

建物の外部

基礎の沈下等の状況

外壁開口部の防火対策の状況

外装仕上げ材の劣化状況

サッシの劣化状況・はめ殺し窓のガラス固定の状況

屋上・屋根

屋上・屋根 屋上面(防水層)の劣化・損傷状況

パラペット立ち上り面・笠木の劣化・損傷状況

排水溝・ドレーンの劣化状況

屋根の防火対策及び屋根ふき材の劣化状況

建物の内部

防火区画の状況

常閉防火扉の作動の状況

壁・床・天井等の劣化および損傷の状況

居室の採光、換気の状況

アスベストの使用有無、劣化状況

避難

通路・廊下・階段・出入口の幅員確保の状況、物品放置の有無

屋上広場・避難バルコニーの確保の状況

排煙設備の維持保全の状況

非常用の進入口等の維持保全の状況

非常用の照明装置の作動状況

その他

膜構造建築物の部材等の劣化状況

免震装置の劣化状況

避雷針・避雷導線等の劣化状況

 

上記の調査を行うことで、建物の劣化状況を把握できるため、大規模修繕計画の策定や計画の修正に活かすことができます。

 

尚、特定建築物定期調査の対象については、自治体により異なります。

 

例えば「千葉県浦安市・市川市」にある建物の場合、アパートやマンションなどの共同住宅として、その他の用途を供さない場合、検査は不要とされています。

 

このように特定建築物定期調査の対象に該当するか否かは、自治体によって異なるため特定建築物定期調査の対象を知るためには、物件が所在する自治体にお問い合わせください。

建築設備定期検査

建築設備定期検査は、特定建築物定期調査と同様に共同住宅として利用される部分の面積が1,000平方メートル以上の規模を超えるアパートやマンションの場合に実施しなければならない法定点検です。

 

検査対象は建物ではなく設備を対象としており、以下の設備を検査します。

 

・ 給排水設備

・ 換気設備

・ 排煙設備

・ 非常用照明装置設備

 

上記の設備の劣化状況や作動状況などを確認して、特定行政庁に1年に1度定期報告を行います。

 

なお、建築設備定期検査は無資格ではできません。

 

検査を行うためには、以下の資格が必要です。

 

・ 一級建築士

・ 二級建築士

・ 建築設備検査員

 

したがって、建築設備定期検査を行う際は、上記の資格を有する業者に依頼するようにしてください。

 

尚、建築設備定期調査の対象についても、自治体により異なります。

 

例えば「千葉県浦安市・市川市」にある建物の場合、アパートやマンションなどの共同住宅として、その他の用途を供さない場合、検査は不要とされています。

 

このように建築設備定期調査の対象に該当するか否かは、自治体によって異なるため建築設備定期調査の対象を知るためには、物件が所在する自治体にお問い合わせください。

自家用電気工作物定期点検

屋外型の高圧受電設備が設置されているマンションは、1か月に1回の「月次点検」と1年に1度の「年次点検」の実施が義務付けられています。

 

点検内容は以下の通りです。

 
名称 調査内容
月次点検

区分開閉器などの外観を目視で点検する

電流が漏洩していないかを確認する

電圧・負荷電流を測定する

受電盤や配電盤のブレーカー温度を測定する

非常用発電機の動作を確認する

年次点検

区分開閉器などの外観を目視で点検する

絶縁抵抗を測定する

電気配線に異常が生じた際に電気系統から事故箇所を切り離せるか確認する

蓄電設備の電圧・比重・温度を測定する

非常用発電機の動作を確認する

 

上記の年次点検を行う際は、安全のため建物をすべて停電させる必要があります。

 

なお、自家用電気工作物定期点検を行うためには、電気主任技術者の資格を有していなければなりません。

 

したがって、電気主任技術者がいる会社に依頼するようにしてください。

昇降機(エレベーター)定期検査

 

昇降機(エレベーター)定期検査も建築基準法によって定められた法定点検の一つです。

 

「一級建築士・二級建築士・昇降機等検査員」が1年周期で国土交通省が定めている基準を満たしているかを調査し、特定行政庁に報告する必要があります。

 

仮に報告を怠った場合には、「100万円以下の罰金」に科せられる可能性があるため、注意が必要です。

 

なお、内容は以下の箇所に問題がないのかを調べます。

 

・ 機械室の通路

・ 階段

・ 戸の施錠

・ 室内

 

専門家が実施するため詳細を把握する必要はありませんが、知識として知っておくようにしましょう。

アパート・マンション経営で実施しなければならない法定点検の費用相場

アパートやマンション経営で義務付けられている法定点検の費用相場を以下の一覧表にまとめたので、確認してみてください。

 

名称 費用相場
消防設備点検

小規模(20戸未満):8,000〜15,000円

中規模(20〜50戸未満):25,000〜50,000円

大規模(50戸以上):70,000〜120,000円

簡易専用水道管理状況検査

16,000〜19,000円

専用水道定期水質検査

2,500〜5,000円

特定建築物定期調査

50,000〜75,000円

建築設備定期検査

40,000〜60,000円

自家用電気工作物定期点検

20,000円程度

昇降機(エレベーター)定期検査及び保守点検

フルメンテナンス契約:月額35,000円程度

POG契約(部品交換・修理は別途料金):月額20,000円程度

 

ただし、上記の費用はあくまでも目安です。

 

建物の規模などによっても費用が変わるため、詳細な費用を知りたい場合は専門業者に見積りを依頼するようにしましょう。

法定点検を業者に依頼する際のポイント

法定点検を業者に依頼する際のポイントを理解しておけば、費用を抑えたり適切な点検を行うのに役立ちます。

 

ここでは、法定点検を業者に依頼する際のポイントについて解説するので、業者を探している方は参考にしてください。

対応が親切な業者を選ぶ

 

法定点検は法律によって義務付けられた点検であるため、適切に点検を行って報告する必要があります。

 

したがって、法定点検に関する質問に対して丁寧に回答してくれる信頼できる業者に依頼することが重要です。

 

業者を選ぶ際は、担当者の対応などを確認して信頼性の高い業者に依頼するようにしましょう。

相見積りをする

法定点検を業者に依頼する際は、相見積りを行うことをおすすめします。

 

相見積りを行うことで、費用を比較できてコストが抑えられるためです。

 

また、業者の対応を比較するのにも役立ちます。

 

ただし、価格だけで選ぶのは危険です。

 

相場よりも安い価格を提示してくる会社の中には悪質な会社も存在するため、総合的に判断するようにしましょう。

法定点検を実施する際の注意点

法定点検は、アパートやマンション経営の入居者への事前告知が必要になります。

 

室内への立ち入りやエレベーターの使用禁止、火災報知器が鳴ることなどを伝えておかないとトラブルになる可能性があるためです。

 

入居者とのトラブルを避けたうえで適切な法定点検を行うためにも、チラシや掲示板などを利用して事前告知をするようにしましょう。

まとめ

 

アパートやマンション経営を経営しているなら法定点検は義務付けられているため、必ず実施する必要があります。

 

専門業社に丸投げすることでクリアすることもできますが、中にはいいかげんな業者も存在するため、必要な法定点検の種類や内容を理解しておくことが望ましいです。

 

そこで、本記事では、アパートやマンション経営経営で実施しなければならない法定点検と費用相場、注意点について解説しました。

 

アパートやマンション経営経営をしている方は、本記事を参考にしてみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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