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不動産オーナーさま向けコラム

インボイス制度が賃貸経営に与える影響とは?具体的な準備も解説

2023.01.15

2023年秋からスタートすることが決まっているインボイス制度について「賃貸経営にも影響があるのか」、「どのような対応が必要になるのか」などの疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

 

関係がないと思っている方もいるかもしれませんが、インボイス制度はすべての事業者にかかわる制度変更であるため、賃貸経営を行っている方にとっても他人事ではありません。

 

したがって、インボイス制度の内容をよく把握しておく必要があります。

 

そこで、本記事ではインボイス制度の概要や賃貸経営への影響、対応などについて解説します。

 

賃貸経営を行っているオーナーの方はこの記事を参考にしてみてください。

インボイス制度の概要

インボイス制度とは「適格請求書等保存方式」とも言われており、2023年10月1日から導入されることが決まっている請求書の発行と保存にかかわる新しい制度です。

 

請求書の作成や消費税額の計算において支払った消費税額を控除する条件が変更されるため、事業内容にかかわらず基本的にすべての事業者に関係します。 

 

ここでは、インボイス制度と現行制度との違いや経過措置、導入の背景について解説するので、しっかりと理解しておくようにしましょう。

現行制度との違い

現行制度である「区分記載請求書」には、以下の項目が記載されています。

 

・事業者の氏名または名称

・取引年月日

・取引内容

・税率ごとに区分して合計した対価の額

・軽減税率の対象品目であること

・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

出典:お問合せの多いご質問(令和4年11月25日掲載)

 

一方で、インボイス(適格請求書)には、上記にくわえ以下の項目が追加されます。

 

登録番号(課税事業者のみ登録可)

適用税率

税率ごとに区分した消費税額等

 

上記のように、現在使用している請求書に3つの項目が追加されたのがインボイス制度です。

経過措置

インボイス制度は、適格請求書発行事業者以外からの仕入れを行うと消費税の控除が受けられません。

 

しかし、多くの事業者に影響がある制度であり、事業者によってはシステムの変更などが必要になり、すぐに対応できないケースもあります。

 

そのため、混乱が起きぬように適格請求書発行事業者以外からの課税仕入についても、インボイス制度の導入後6年間の経過措置が設けられています。

 

経過措置の内容は以下のとおりです。

 

・2023年10月1日〜2026年9月30日まで仕入税額相当額の80%

・2026年10月1日〜2029年9月30日まで仕入税額相当額の50%

 

尚、このように導入から3年以上経過すると控除額は変わります。

インボイス制度が導入される理由

インボイス制度が導入される背景には、軽減税率の導入と「益税」の問題解消があると言われています。

 

まず、軽減税率の導入ですが、2つの税率を並行して運用するため、税率ごとに分けて計算しなければならず、消費税額を正確に把握するのが難しくなりました。

 

また、益税は消費者が事業者に払った消費税が事業者の利益となることを指しますが、納税の免除や軽減によって合法的に納税されず手元に残った「益税」を国に納税されるようにすることも目的のひとつです。

 

これらの問題を解消するためにインボイス制度が作られました。

インボイス制度が賃貸経営オーナーに与える影響

インボイス制度がスタートすると、賃貸経営を行っているオーナーにさまざまな影響を与える可能性があります。

 

ここでは、賃貸経営のオーナーにどのような影響を受ける可能性があるのかについて解説していきます。

居住用賃貸物件のオーナーにはほとんど影響がない

先ず、マンションやアパートなど居住用不動産のオーナーの方には、それほど大きな影響はありません。

 

住宅の貸付けは消費税の非課税取引であるためです。

 

居住用賃貸物件にかかる賃料については、入居者の方が消費税申告を行っても、納付額の計算において消費税控除できません。

 

したがって、居住用賃貸物件だけを経営しているオーナーには、インボイス制度は影響しないと理解しておけば問題ないでしょう。

 

また、社宅として企業に賃貸しているケースでも、住居部分は非課税であるため、基本的には影響しません。

 

ただし、駐車場の売上があり、かつ賃貸している企業が課税事業者の場合は影響があるので注意が必要です。

事業用物件のオーナーは影響を受ける

 

他方でビルや店舗など事業用不動産のオーナーの方はインボイス制度の影響を大きく受けます。

 

賃料が消費税の課税取引に該当するため、入居者側が消費税額控除を利用する可能性が高いためです。

 

仮に「適格請求書発行事業者」として登録されていない場合、入居者は適格請求書の恩恵を受けることができず、その分消費税を多く支払うことになります。

 

このため、適格請求書を発行できる物件に転居する方が賃貸する側にメリットとなってしまい、退去する事態になりかねません。

 

この問題を解決するためには、オーナーが「適格請求書発行事業者」となり、入居者に適格請求書することが必要になります。

 

もしくは、適格請求書発行事業者として登録しない場合は、消費税が増額した分の賃料を減額することになるでしょう。

 

このように、事業用不動産を経営している場合は、適格請求書発行事業者にならないと賃貸経営に悪影響を及ぼす可能性があることを理解しておいてください。

 

ちなみに、事業用不動産の入居者が免税事業者だけである場合は、消費税を納付していないため、大きな影響はなく心配は不要です。

免税事業者の場合は収益性が悪化する可能性がある

免税事業者は、消費税の課税にかかる基準期間において、売上高が1,000万円に満たない事業者のことを指します。

 

免税事業者は消費税分を利益の一部として留保することが可能です。

 

しかし、インボイス制度が導入されると、適格請求書を発行するためには課税事業者になる必要性があり、消費税のうち留保された分を納付しなければなりません。

 

このため、免税事業者から課税事業者になる場合は、請求時に本体価格のなかに消費税を組み込むことで実質的な値引きを求められるなど、収益性が低下する可能性が高いです。

事業用物件を購入する際に消費税還付が受けられない可能性がある

消費税は課税売上に係る消費税額から、課税仕入れに係る消費税額の項目別合計額を差し引いて、納付すべき消費税額を決定することになります。

 

非課税売上が多い場合や設備投資額が多い場合には、課税仕入れに係る消費税額が課税売上を上回るため、税額控除の不足が生じ、その分に相当する還付金を受け取ることが可能です。

 

おそらく多くの事業用不動産のオーナーは物件が高額であるため、購入時に上記のように消費税還付を受けることができるでしょう。

 

しかし、インボイス制度が導入され売主が適格請求書発行事業者でない場合、事業用不動産の購入にかかる課税仕入れは消費税の計算から控除できず還付を受けられません。

 

このため、インボイス制度の導入後に不動産を購入する際は売主が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認する必要があります。

インボイス制度でオーナーが行うべき準備

インボイス制度がスタートするまでに賃貸経営のオーナーが行うべき準備を紹介します。

 

あらかじめ準備しておかないと制度がスタートした後の賃貸経営に影響が出る可能性がありますので、内容をよく理解するようにしましょう。

課税売上がない場合は準備が不要

マンションやアパートなどの居住用不動産だけを経営しているオーナーは、課税売上の対象とはならないためインボイス制度導入前の準備の必要はありません。

 

ただし、将来的にオフィスビルや店舗などの事業用不動産の購入を検討しているなら、今すぐに準備しておく必要はありませんが、インボイス制度の概要などは把握しておくようにしましょう。

入居者が免税事業者の場合も準備が不要

店舗や駐車場など事業用不動産の経営しており課税売上がある場合でも、入居者が免税事業者であれば、インボイス制度の対応は必要ありません。

 

とはいえ、一般的に事業用不動産の入居者は課税事業者であることが多いため、そのようなケースは稀です。

 

また、免税事業者であったとしても、インボイス制度がスタートすることで課税事業者になるケースもあります。

 

このように、入居者に課税事業者になる予定がある可能性もあるため、入居者が免税事業者であっても、なにも対応しなくて良いわけではないことを理解しておきましょう。

入居者が課税事業者の場合は準備が必要

消費税の課税対象となる売り上げがあり、入居者が課税事業者の場合には、インボイス制度に対応する必要があります。

 

入居者から適格請求書の発行を希望するなら、課税事業者になって適格請求書発行事業者への登録が必要です。

 

ただし、適格請求書発行事業者になることで物件の競争力を保つメリットがあるものの、収益性が悪化する可能性があります。

 

したがって、個別に入居者と話し合って対応の検討が必要です。

 

なお、免税事業者のまま、賃料減額で対応するにしても経過措置が設けられているため、いきなり消費税額全額を値下げする必要はありません。

すでに自社が課税事業者の場合は登録が必要

 

すでにオーナーが課税事業者の場合は、適格請求書発行事業者の登録が必要になります。

 

具体的には、インボイス制度開始前に以下の対応が必要です。

 

・適格請求書発行事業者の申請と登録番号の取得

・インボイスに対応した請求書発行のシステムの導入

・入居者に免税事業者がいる場合の検討や対応と必要に応じて免税事業者との協議

 

スムーズな移行を実現するためには、インボイス制度開始前に十分な準備を行う必要があるため、余裕を持って準備するようにしてください。

インボイス制度の対応を決めるときのポイント

賃貸経営のオーナーがインボイス制度の対応を決めるポイントを解説します。

 

理解しておかないと制度がスタートした後に不利益を被ったり、賃貸経営が不安定になったりする可能性があるため、しっかりと内容を理解しておきましょう。

簡易課税制度の利用を検討する

簡易課税制度は、実際の課税仕入れに関係なく基準期間の課税売上高が5,000万円までなら、課税売上にかかる消費税から課税売上の一定割合(不動産業の場合は40%)を差し引くことを認めるものです。

 

インボイス制度の導入により、事業用不動産のオーナーには消費税負担が増えるため、利益を減少させる可能性がありますが、その対策として簡易課税制度を活用することが有効です。

 

例えば、12万円の消費税を受け取った場合で簡易課税制度を利用していると、納税する必要がある消費税は5万2,000円になります。

 

一方で、課税事業者になると12万円の消費税を納付しなければなりません。

 

このため、簡易課税制度を利用したほうが得になります。

 

ただし、課税期間の開始前に、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前提出する必要があるため、注意するようにしてください。

入居者と話し合いを行う

入居者とインボイス制度を導入した後の対応について話し合うことも重要です。

 

例えば、入居者が免税事業者の場合でも、インボイス制度が開始することで課税事業者になる可能性があります。

 

一方、入居者が簡易課税事業者のみであれば、適格請求書発行事業者でなくても、消費税控除ができないというデメリットが生じません。

 

上記のケースでは課税事業者になる必要がないため、入居者に簡易課税事業者や免税事業者にあたるのか確認するようにしましょう。

経過措置を考慮して考える

インボイス制度はすでに説明しているように経過措置が設けられています。

 

入居者と話し合いをして賃料減額の対応が可能な場合は、すぐに課税事業者になるのではなく、免税事業者でいたほうがメリットの多い可能性があります。

 

ただし、経過措置は期間が決められており、その期間によって控除額も変わります。

 

そのため、段階的に対応を変えていくようにしましょう。

まとめ

 

インボイス制度は請求書の発行や保存に関する新しい制度です。

 

賃貸経営しているオーナーの方にも影響があるため、制度の内容を正確に理解しておく必要があります。

 

また、制度がスタートするまでに準備すべきことも多いため、どのような準備が必要なのかを理解しておくことも重要です。

 

そのため、本記事ではインボイス制度の概要や賃貸経営への影響、対応などについて詳しく解説しました。

 

賃貸経営を営んでおりインボイス制度について悩んでいる方は参考にしてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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