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不動産オーナーさま向けコラム

不動産の生前贈与は相続税対策になる?メリット・デメリットを解説

2022.07.15

「不動産の生前贈与は相続税対策になるのか」という疑問を抱えている方は少なくありません。

 

相続する財産によっては、相続税は非常に高額になることから、「少しでも相続税対策をしたい」と考えている方が多いためです。

 

では、不動産の生前贈与は本当に相続税対策になるのでしょうか?

 

結論から言うと、不動産の生前贈与は相続税対策になるケースがあります。

 

ただし、相続税対策にならないケースもあるため、不動産を生前贈与する際のポイントなどを押さえておくことが必要です。

 

そこで、この記事では、不動産の生前贈与が相続税対策になる理由や、相続税対策として不動産を生前贈与する際のポイントなどについて解説します。

生前贈与は相続税対策になる

生前贈与とは、生きている間に不動産や株式、現金などの保有している財産を、他の人に譲り渡すことです。

 

この制度は、投資用不動産で活用することで、相続税対策になるケースがあります。

 

ただし、扱いを間違えるとむしろ課税額が増えるうえに、財産を譲り受ける側との合意が必要なことも知っておくようにしましょう。

生前贈与すると贈与税が課税される

生前贈与すると、相続税ではなく贈与税が課税されます。

 

贈与税とは、年間110万円の基礎控除額を超えた贈与をした際に、課税される税金のことです。

 

税率は、基礎控除額を差し引いた後の課税価格によって変動し、最高税率は「55%」、最低税率は「10%」になります。

 

なお、贈与税の税率は、以下の表で確認できるので、贈与税を計算する際の参考にしてみてください。

 

ちなみに、贈与税は、贈与する側と受け取る側の関係性によって「一般税率」と「特例税率」に分けられ、基礎控除後に課税価格と控除額が異なります。

 

【一般税率(一般贈与財産)】

 

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

 

【特例税率(特例贈与財産)】

 

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

 

出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

 

一般税率と特例税率に分かれる具体的な条件は以下です。

 

● 一般税率:直系尊属以外(夫婦間や兄弟姉妹間の贈与もしくは受け取る側の年齢が18歳未満の場合)から贈与を受けた際にかかる税率

 

● 特例税率:父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた方の年齢が、受けた年の1月1日時点で18歳以上のものが贈与を受けた際にかかる税率

 

ちなみに、一般税率と特例税率で500万円を生前贈与する際の計算は以下になります。

 

■ 一般税率

 

500万円(贈与財産)-110万円(基礎控除額)=390万円

390万円(基礎控除後の課税価格)×20%(税率)-25万円(控除額)=53万円(贈与税額)

 

■ 特例税率

 

500万円(贈与財産)-110万円(基礎控除額)=390万円

390万円(基礎控除後の課税価格)×15%(税率)-10万円(控除額)=48万5,000円(贈与税額)

 

上記の計算からわかるように、一般税率よりも特例税率のほうが、課税額が少なくなります。

贈与する金額によっては相続税対策にならない

 

前述したように、生前贈与を行うことで相続税対策になる可能性はありますが、贈与される金額によっては、相続税よりも高い金額が課税されます。

 

贈与税と相続税では、課税される金額に対する税率と基礎控除額が異なるためです。

 

相続税の税率を以下の表で確認して、上記で紹介した贈与税の税率と見比べてみましょう。

 

● 相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 

出典:No.4155 相続税の税率|国税庁

 

相続税の最高税率は贈与税の最高税率と同じ「55%」ですが、最高税率が課税される金額が相続税は「6億円超」、贈与税(一般税率)は「3,000万円超」と、大きな違いがあります。

 

また、基礎控除額に関しても、贈与税は「110万円」で、相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

 

このように、比較してみると、贈与する金額によっては、相続税よりも高額になってしまう可能性があること分かります。

 

では、実際に、1億円を相続した場合と、贈与した場合をシミュレートしてみましょう。(その他控除や特例などは利用しない)

 

■前提条件

・法定相続人は1人

・特例やその他控除は考慮しない

・贈与金額・相続金額は1億円

 

【相続税】

3,000万円+(600万円×1人(法定相続人の数))=3,600万円(基礎控除額)

1億円(相続財産)-3,600万円=6,400万円(法定相続分に応ずる取得金額)

6,400万円(法定相続分に応ずる取得金額)×30%(税率)-700万円(控除額)=1,220万円(相続税額)

 

【贈与税(一般税率)】

1億円(贈与財産)-110万円(基礎控除額)=9,890万円(課税価格)

9,890万円(課税価格)×55%(税率)-400万円(控除額)=5,039万5,000円(贈与税額)

 

上記のように、同じ1億円の贈与と相続では、課税される税金に大きな違いがあります。

不動産を生前贈与すると相続税対策になる理由

一見、贈与税の方が高額になるように感じますが、生前贈与は本当に相続税対策になるのでしょうか?

 

不動産を生前贈与することで、相続税対策になる可能性はあります。

 

しかし、生前贈与で相続税対策を行うためには、相続時精算課税制度を利用するなどの条件があることを知っておかなくてはいけません。

 

ここでは、不動産を生前贈与することで、相続税対策になる理由について解説していくので、内容を理解したうえで相続税対策として生前贈与するかを検討するようにしてください。

相続時精算課税制度が利用できる

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母などの直系尊属から、18歳を超える子供または孫などの直系卑属に対して、生前贈与する際に利用できる制度です。

 

贈与時は贈与財産に対する贈与税の支払いが必要ですが、相続時は相続財産と贈与時の贈与財産の評価額を合計した金額に対する相続税額から贈与税額を精算できます。

 

しかも、この制度には、「2,500万円」の特別控除があり、生前贈与の累計金額が2,500万円を超えていない場合は贈与税がかかりません。

 

また、控除の限度額である「2,500万円」を超えた贈与も、通常の贈与税額とは異なり、一律20%の贈与税が課税されます。

 

出典:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

 

したがって、相続時精算課税制度を利用することで、課税価格次第で税額を変えずに、相続財産の先渡しを行うことが可能です。

 

つまり、贈与時から相続時までの間に不動産の価値が上昇した場合や、贈与財産から収益を得られている場合は、節税対策になります。

 

ただし、相続時精算課税制度を利用すると、相続税の減額が可能になる「小規模宅地の特例制度」が利用できないうえに、贈与税の基礎控除である「110万円」もなくなるので、課税額を計算する際は、これらを含まないように注意が必要です。

 

では、実際に、相続税時精算課税制度を利用して不動産を贈与した場合の相続税と、10年後に不動産価値が上昇して相続税時精算課税制度を利用しなかった際の相続税をシミュレートしてみましょう。

 

■前提条件

・「相続時精算課税制度」利用時の不動産の贈与額:5,000万円

・10年後に相続が発生(相続人は成人した子供1人)

・10年後に不動産価格が7,000万円に上昇したと仮定

・不動産以外の相続財産は7,000万円

 

【相続税時精算課税制度を利用して不動産を贈与した際の贈与税・相続税】

5,000万円(1年分の贈与額)−2,500万円(特別控除額)=2,500万円(課税価格)

2,500万円×20%(税率)=500万円(贈与税)

 

7,000万円(相続財産)+5,000万円(贈与財産)=1億2,000万円(相続財産と贈与財産の合計)

1億2,000万円(相続財産と贈与財産の合計)−3,600万円(基礎控除額)=8,400万円(課税価格)

8,400万円(課税価格)×30%(税率)−700万円(控除)=1,820万円(相続税額)

1,820万円(相続税額)−500万円(納付した贈与税額)=1,320万円

 

【相続税時精算課税制度を利用せず、10年後に不動産価値が上昇した際の相続税】

7,000万円(不動産を除く相続財産)+7,000万円(不動産評価額)=1億4,000万円(相続財産)

1億4,000万円(相続財産)-3,600万円(基礎控除額)=1億400万円(課税価格)

1億400万円(課税価格)×40%(税率)-1,700万円(控除)=2,460万円

 

上記のように、将来的に不動産価値が上昇した場合には、相続税時精算課税制度を利用したほうが、相続税額が低くなります。

不動産投資の受益権を渡すことで相続財産が増えなくなる

 

アパートやマンションなどの投資用不動産を子供や孫に生前贈与することによって、収益の受益権を自身から子供や孫に移すことが可能です。

 

当然、投資用不動産から将来的に得られる収益の受益権を子供や孫に渡すことは、相続財産が増えることを防ぐ効果があるため、相続税対策になります。

 

例えば、年間の利益が1,200万円あるマンションやアパートを所有している場合、毎年1,200万円以上の消費をしない限り、年月とともに財産は増えていってしまいます。

 

しかし、生前贈与することで、相続財産を増やすことなく、毎年1,200万円分の収益を受贈者である子供や孫に与えられるため、相続税対策として非常に有効です。

不動産を生前贈与する相続税対策以外のメリット

不動産を生前贈与するメリットは、相続税対策だけではありません。

 

自分の意思や好きなタイミングで、好きな相手に不動産を譲り渡すことができるのも、非常に大きなメリットです。

 

相続の場合は、遺言書を残しておかなければ、特定の相続人に不動産を譲り渡すことができません。

 

また、相続人全員の同意があれば遺言書と異なる遺産分割も可能です。

 

したがって、相続では必ずしも自身が考えている相手に不動産を譲り渡すことができない可能性があります。

 

特定の相手にどうしても不動産を譲り渡したい場合は、生前贈与を利用するようにしましょう。

不動産を生前贈与する3つのデメリット

不動産を生前贈与することは、相続税対策になる可能性があるなどのメリットがありますが、当然デメリットもあります。

 

メリットとデメリットをしっかりと把握したうえで、不動産を相続したほうが良いのか、生前贈与したほうが良いのかを判断するようにしましょう。

小規模宅地の特例を利用した相続の方が相続税対象になる可能性がある

小規模宅地の特例とは、亡くなられた方が住んでいた土地や、事業していた土地を相続するときに一定の要件を満たすことで利用できる特例制度です。

 

利用することで、不動産投資用物件の評価額を50%または80%に減免することが可能なため、相続税を減額することが可能です。

 

しかし、生前贈与を利用した場合は、小規模宅地の特例が利用できません。

 

このため、不動産価値によっては、生前贈与が相続税対策にならないケースもあるので、注意するようにしてください。

不動産が値下がりすると相続税対策にならない可能性がある

 

生前贈与後に不動産の価値が値下がりした場合は、生前贈与しても相続税対策にならない可能性があります。

 

相続税時精算課税制度により、贈与時の不動産評価額で計算された相続税と支払った贈与税を精算するためです。

 

例えば、不動産の価値が6,000万円から4,000万円に値下がりをした場合、相続であれば4,000万円で計算する不動産を、6,000万円で計算することになるため、課税額が高くなります。

 

したがって、将来的に不動産価値が下がる可能性が高い不動産の場合は、生前贈与ではなく相続の検討が必要です。

 

ただし、生前贈与は不動産価値の値上がりだけでなく、将来的に得られる収益を受益者に渡し、さらに、相続財産を増やさないことで相続税対策として利用できます。

 

仮に不動産価値が少し下がったとしても、生前贈与のほうが相続税対策になるケースもあるため、注意が必要です。

不動産取得税や高い登録免許税がかかる

不動産を贈与すると、相続では支払う必要がない不動産取得税がかかります。

 

不動産取得税とは、土地や建物を取得したときに課せられる税金のことです。

 

税率は原則4%で、仮に課税標準額が5,000万円の場合は、200万円の不動産取得税が課税されます。

 

また、不動産を贈与した場合は相続した場合よりも、名義変更を行うための登録免許税が高い点にも注意が必要です。

 

具体的には、生前贈与による登録免許税は、「固定資産評価額の2%」になります。

 

例えば、固定資産評価額が3,000万円の不動産を生前贈与する場合には、「60万円」の登録免許税の支払いが必要です。

 

一方で、相続による登録免許税は「固定資産評価額の0.4%」です。

 

生前贈与の場合と同様に固定資産評価額が3,000万円の不動産を相続する場合でも、必要な登録免許税は「12万円」になります。

 

このように、不動産を生前贈与した場合は登録免許税が高くなり、不動産取得税もかかるので、これらの税金を支払ったうえでも、生前贈与のほうが相続税対策になるかを判断するようにしましょう。

不動産を生前贈与する際の手順

不動産を生前贈与する際の手順は以下になります。

 

1. 贈与税の課税方法を選択する

2. 贈与される側の合意をとったうえで贈与契約書を作成する

3. 贈与する財産を移す

4. 贈与税の申告を行う

5. 不動産取得税を納付する

6. 不動産の所有権移転登記を行って登録免許税を納付する

 

なお、不動産の所有権移転登記は必ず行うようにしてください。

登記がされていないと将来的にトラブルになる可能性があるため、怠ってはいけません、

不動産を生前贈与する際に気をつけるべき3つのポイント

不動産を生前贈与する際に気をつけるべきポイントを把握していないと、生前贈与したとしても相続税対策にならずに、損をしてしまう可能性があります。

 

そういった事態を防ぐためにも、以下で紹介するポイントをよく理解しておくようにしてください。

贈与税の申告期限を確認する

 

贈与税には申告期限があり、申告期限を過ぎてしまうと、延滞税が課されます。

 

ちなみに、申告は原則として「贈与された方が贈与された翌年の2月1日から3月15日」までにしなければならないと定められています。

 

そのため、必ず期限内に申告と納税を終わらせるようにしてください。

 

ちなみに、申告方法は、贈与を受けた方の住所を管轄している税務署に申告書を提出するか、e-Taxを利用することで可能です。

相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与が利用できない

生前贈与時に相続時精算課税制度を一度でも利用してしまうと、同じ贈与者・受贈者間で贈与を行う場合、以降のすべての贈与で年間110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与が利用できません。

 

暦年贈与は、長い期間をかけて少しずつ財産を贈与したい場合に、向いている制度です。

 

そのため、生前贈与を利用する際は、どちらの制度が自分にとって適切なのかを慎重に見極めてから生前贈与を行うようにしてください。

生前贈与された財産が遺留分を侵害している可能性がある

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる遺産取得割合のことです。

 

生前贈与した財産でも、一定の要件を満たすと遺留分と見なされます。

 

仮に遺留分と見なされた場合、他の法定相続人から遺留分相当の支払いを求められる可能性があるため注意が必要です。

まとめ

不動産の生前贈与は、うまく活用することで、相続税対策になります。

 

ただし、不動産の生前贈与を相続対策として活用するには、贈与する金額によるなど、さまざまな条件があるため注意が必要です。

 

そこで、この記事では、不動産の生前贈与が相続税対策になる理由や、注意点などについて解説してきました。

 

相続税対策として不動産の生前贈与を検討している方は、この記事を参考にしてみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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