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不動産オーナーさま向けコラム

相続時精算課税制度のメリット・デメリットとは? 2024年の法改正も解説

2023.09.15

相続時精算課税制度のメリット・デメリットとは? 2024年の法改正も解説

一般的な相続税対策として、贈与税の基礎控除を活かし、毎年110万円以内の贈与を続ける方法はよく知られており、実践している方は多いのでしょうか。

 

しかし、まとまった財産の贈与を考えている方にとっては、この方法では多額の贈与税が掛かってしまう場合があります。

 

このため、相続が発生する前にまとまった金額を贈与したい方におすすめしたい制度が、相続時精算課税制度です。

 

この制度を活用すれば、2,500万円までは非課税で贈与できます。

 

ただし、相続時に贈与分が相続財産に加算されることは知っておく必要があります。

 

また、2024年には法改正により制度が一部変更されますので、その点も視野に入れておくようにしましょう。

 

この記事では相続時精算課税制度の仕組みやメリット・デメリットについて解説したうえで、2024年に行われる法改正による変更も併せて紹介します。

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度とは、原則「60歳以上の父母または祖父母」から「18歳以上の子または孫」に対し贈与を行う際、総額2,500万円までの贈与であれば特別控除が適用され贈与税が掛からないという制度です。

 

尚、贈与する財産の種類に制限はなく、特別控除額の2,500万円を超えた分については一律20%の贈与税が掛かります。

 

ここで注意しなければならないのは、この制度を利用して贈与した財産は、相続発生時には相続財産額に加算されて相続税が計算されるということです。

 

つまり、贈与税は課税されないものの相続時に相続財産として加算されるため、免除というよりは納税の時期を先に延ばせる制度とも言えるでしょう。

 

ちなみに、この制度ができた背景には、高齢者が保有する資産を早い時期に若い世代に譲ることを促し、経済を活性化させる狙いがあります。

暦年課税(暦年贈与)との違い

暦年課税とは、1月~12月までの1年間に受けた贈与に対して課税する制度のことです。

 

年間110万円までは非課税で贈与することができるため、相続税対策の基本的な手法として多くの人が利用してきました。

 

しかし、この制度では基礎控除枠内で多額の財産を贈与するためには、長期間に渡って何度も贈与を行わなければならないというデメリットがあります。

 

一方、相続時精算課税制度を適用すれば、2,500万円までは贈与税が掛からず贈与できるため、受贈者が住宅の購入時などの多額の資金が必要なった時点で贈与することが可能になります。

 

ただし相続の際は、この制度で贈与した分を相続財産として加算して、相続税を支払う必要があるので注意が必要です。

適用できる対象者

相続時精算課税制度を利用できる対象者は以下の通りです。

 

贈与者は、「贈与を行った年の1月1日に60歳以上である父母または祖父母。」
受贈者は、「贈与を受けた年の1月1日に18歳以上である贈与者の子や孫。」

 

上記に該当していない場合は適用対象外となります。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度が自身にとってもメリットになり得るか、しっかりと見極めるようにしましょう。

2,500万円まで贈与税が非課税

最大のメリットは、2,500万円までの特別控除枠があることです。

 

一度に2,500万円の贈与をした場合だけでなく、年をまたいで複数回にわたって贈与した場合も合計2,500万円までは特別控除が適用されます。

 

また、贈与する財産に制限はなく、現金、有価証券、不動産など財産の種類を問わず贈与することが可能です。

超過分に対して一律20%課税

相続時精算課税制度を利用した贈与財産が2,500万円を超えた場合、その分の贈与財産については一律20%の贈与税が課税されます。

 

一方、暦年課税の場合は基礎控除の超過分の税率は10%から最大55%で、金額が高いほど税率が上昇します。

 

例えば、一度に3,000万円を贈与した場合、暦年課税であれば超過分の税率は45%ですが、相続時精算課税制度だと税率は20%です。贈与税額としては900万円以上の大きな差になります。
例)一度に3,000万円を贈与した場合
■暦年課税
(贈与価額の合計-110万円〈基礎控除〉)×超過累進課税率(10%~55%)-控除額=贈与税額
(3000万円-110万円)×45%-※265万円=10,355,000円
※直系尊属から18歳以上の子や孫などへ贈与した場合においての控除額

 

■相続時精算課税
(贈与価額の合計-2,500万円〈特別控除〉)×超過分=贈与税額
(3,000万円-2,500万円)×20%=1,000,000円

贈与者ごとに利用可能

相続時精算課税制度は贈与者ごとに利用できる制度です。

 

そのため、父母それぞれ2,500万円まで特別控除枠が適用できるため、合計5,000万円までが非課税で贈与できます。

 

また、父からは相続時精算課税制度で贈与を受け、母からは暦年課税制度で毎年110万円の贈与を受けることも可能です。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度にはデメリットもあるので利用を検討する際は慎重に判断しましょう。

直接の節税効果はない

2,500万円以下の財産を贈与した時の贈与税は掛かりませんが、相続時には控除を利用した贈与財産は相続財産に加算されるため、直接の節税効果はありません。

 

贈与税として課税されなかった分を相続税で課税するため、納税の時期が先送りされただけと考えることもできます。

申告の手続きが必要

相続時精算課税制度を選択すると、申告書や届出書を提出するほか、贈与のたびに贈与税の申告をする義務が生じるので注意が必要です。

「小規模宅地等の特例」は利用できなくなる

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす状況で宅地等を相続した場合、その宅地等の相続税評価額が最大80%減額される特例です。

 

相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合は、相続や遺贈ではなく贈与により土地を手に入れたとみなされるため、小規模宅地等の特例を受けることはできません。

 

したがって、小規模宅地等の特例を使って相続で土地を継承する場合と比較し、どちらが自身にとって最適であるのかを詳しくシミュレーションしてから選択することが重要です。

相続時精算課税制度を利用するのが向いているケースとは

どのようなケースで相続時精算課税制度を利用するのが良いでしょうか。

 

ケースごとに解説するので参考にしてみてください。

贈与を受ける側が多額の資金が必要になった時点で贈与したい

相続時精算課税制度の大きなメリットは、まとまった金額の資産を一度に贈与できる点です。

 

贈与を受ける側が家を購入する、事業を開始するといった多額の資産が必要な時点で、贈与税を課税されることなく贈与を受けることができます。

 

相続時精算課税制度の特別控除額の上限2,500万円を暦年課税形式で毎年110万円を贈与するとなると23年かかりますし、もし一括で贈与すれば800万円以上の贈与税が課税されるため、贈与を受ける側が多額の資金が必要になった場合は検討してみて下さい。

将来値上がる可能性が高い財産がある

相続時精算課税制度を適用して贈与する財産は、相続時には相続財産とみなし相続税の課税対象として計算しますが、その金額は贈与したときの価格が適用されます。

 

そのため、将来の値上がりが予想される有価証券や不動産などの資産であれば、結果的に相続財産の評価額を抑え、相続税を安くすることができる場合もあります。

 

例えば、保有している2,500万円の土地が周辺の開発によって価格が上昇することが予想されるケースで、子供に相続時精算課税制度を使って贈与したとしましょう。

 

相続時の価格が5,000万円まで上昇したとしても、相続財産に合算するのは2,500万円です。

 

もし、贈与者の資産がこの土地だけで、相続人が受贈者だけだったとしたら、相続時精算課税制度を使った場合の相続税は基礎控除内のため非課税です。

 

一方、同制度を使わずに5,000万円の土地を相続した場合は、基礎控除となる3,600万円を超えた1,400万円に対して相続税が課税されます。

収益物件を持っている

相続時精算課税制度は、収益物件を贈与する場合にも有効です。

 

早いタイミングで収益物件を贈与すると、収益物件から発生する賃料収益などは贈与税の課税対象とはならず、受贈者がそのまま受け取れます。

 

収益分は相続時に相続財産に加算する必要がないため、節税効果があると言えるでしょう。

2024年の法改正の内容

2024年の1月1日から税制が改正されることになりました。

 

法改正の内容について詳しく説明していきましょう。

基礎控除年間110万円が追加

相続時精算課税制度を適用した場合において、これまでなかった毎年110万円まで課税しない基礎控除が併用できるようになりました。

 

これによって、これまで2,500万円まで贈与税が非課税とされていましたが、「2,500万円+110万円×贈与をした年数」が非課税となります。

 

相続時精算課税制度を適用した際の非課税の枠が大幅に広がったと言えるでしょう。

 

ちなみに、その年の贈与額が基礎控除110万円以下の場合は申告が不要となり、生前贈与加算もされないため、相続財産にも加算されません。

贈与された物件が災害被害にあった場合の見直し

これまで相続時に相続税の課税対象となる贈与財産額は、例え価値が下がっていたとしても「贈与時の評価額」でした。

 

改正後は、基本は贈与時の評価額であるものの、贈与を受けた不動産が相続が発生した日までの間に、災害により一定以上の被害を受けた場合は、相続時に課税価格を再計算するという例外が加えられました。

暦年課税で受領した財産の相続財産への加算期間を3年から7年に

暦年課税で財産を受領していた場合、これまでは相続が発生した3年前までの贈与分を相続財産に加算していましたが、改正後はそれを7年前の分まで加算することになりました。

 

改正の緩和措置として、相続開始前4~7年の間に贈与した財産については、贈与財産4年間の合計から100万円を控除することができます。

 

したがって、歴年課税により、相続税を節税するという手法のメリットが減ることになるため、2024年以降は相続税対策を考えている人の多くが、相続時精算課税制度の利用を検討するようになると予想されます。

 

なお、制度が開始される以前の分までは遡って加算されません。

 

延長された加算期間の対象となるのは、2024年1月1日以降の生前贈与であり、2023年までの生前贈与は、3年以内の加算対象とされることはありますが、7年の加算対象とはされません。

相続時精算課税制度の手続き方法

相続時精算課税制度を利用する際の手続き方法を以下で紹介します。

手続き方法

まず、贈与を受ける側の人(受贈者)の住所がある地域を管轄する税務署に必要書類を提出します。

 

申請方法としては、インターネットを通じたe-Tax、または書面のいずれかになり、書式は国税庁のHPからダウンロードできます。

手続きの期限

相続時精算課税制度を利用する受贈者は、適用対象となる最初の贈与を受けた年の「翌年2月1日から3月15日までの間」(贈与税の申告書の提出期間)に申請する必要があります。

 

期限が過ぎてしまって申告できないという事態にならないようしてください。

必要書類

相続時精算課税制度を利用するには下記書類の提出が必要です。

 

・贈与税の申告書 
・相続時精算課税選択届出書
・受贈者および贈与者の「戸籍謄本」もしくは「戸籍抄本」

 

マイナンバー制度の導入に伴い、マイナンバーを記載した申請書等を提出した場合には、マイナンバーカードなどの本人確認書類の提示、またはコピーの提出が求められます。

まとめ

この記事では相続時精算課税制度のメリットや、2024年の法改正による変更点を紹介しました。

 

特に相続税が課税される資産を保有する方や、収益物件のオーナーの方、将来値上がりが見込まれる資産を保有する方にとっては、非常に有効な制度と言えるでしょう。

 


ただし、一度、相続時精算課税制度を使用すると、暦年課税へ変更することができなくなるため、綿密に試算し、慎重に判断をするようにしましょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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