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不動産オーナーさま向けコラム

アパート・マンションを建て替えた年の確定申告について解説(節税/税金)

2023.12.01

アパートやマンションを建て替える際、経費計上の漏れがあると、余計な税金を生じさせる可能性があります。

 

一方、経費として認められない費用を計上してしまうと、修正を強いられてしまいます。

 

そのため、どの費用が経費として認められるのか事前に確認したうえで、間違いのない確定申告を行わなければいけません。

 

この記事では、アパートやマンションを建て替えた年の確定申告における計上可能な費用と、新築費用の減価償却に関して解説します。ぜひご一読ください。

アパート・マンションの建て替えを検討するべきポイント

アパートやマンションは年月が経てば古くなり、建て替えを考える必要が出てきます。

 

では、どのようなタイミングで建て替えをするべきなのでしょうか?

 

ここでは建て替えを検討する際のポイントを解説します。

建て替え後に増収が見込める

老朽化したアパートやマンションでは、入居者が集まりにくく、家賃の値下げが必要になる可能性があります。

 

また、修繕が必要な箇所が増えるにつれ、修繕費用も大きくなります。

 

まずは、こうした家賃収入の低下と修繕費用の増加をシミュレーションし、想定している可処分所得が確保できるか否かを算出してみましょう。

 

現状の建物を維持した場合に十分な可処分所得を得るのが困難であるなら、建て替えを行い、家賃収入を増やすというのも一つの手段です。

 

建て替えに必要な費用との兼ね合いで増収が見込めるなら、建て替え計画を進めても良いでしょう。

所得が多く税金が高くなる

建物の減価償却期間が終了すると、家賃収入に対して経費として計上できる金額が少なくなり、所得の金額が上がってしまいます。

 

実際の家賃収入は変わらないのに帳簿上の所得が高くなり、所得税がその金額に対してかかるため、手取り収入が想定よりも下がることになるでしょう。

 

そのタイミングが建て替えるポイントの一つです。
建て替えることで新たに減価償却していくことができます。

 

余談ですが、他の物件を売却して一時的に所得が多くなり課税される場合も、建物の建て替えをして費用を増やし、課税金額を抑えるという方法が利用可能です。

老朽化や耐震性の問題がある

老朽化した建物を放置したままにしておくと、地震や台風などの災害発生時に、倒壊や破損によって近隣の家屋に被害を与えたり、通行人にケガを負わせたりする可能性があります。

 

万が一、そのような事態に陥ってしまうと、建物の所有者が必要な管理をしていたかどうかが問われることになり、適切な管理を怠っていたと判断されようものなら損害賠償を請求されてしまうので要注意です。

 

特に、昭和56年に建築基準法が改正される以前に建築確認の申請を受けて建てられた建物の場合は、新耐震基準を満たしていない可能性が高いので、何らかの対処を検討する必要があります。

 

適切な対策を怠り、建物の倒壊や破損で被害が発生した場合には、所有者責任は免れませんので注意してください。

 

こうしたリスクを踏まえたうえで、補修工事や耐震工事を行う費用と建て替えの費用を見比べ、後の家賃収入などもシミュレーションした上で検討するといいでしょう。

アパート・マンションの建て替えで経費になる費用

アパート・マンションの建て替えで経費として認められる費用支出は、主に下記の4つです。

 

●    立ち退き料
●    資産損失相当額
●    解体費用
●    新築費用

 

それぞれの費用について詳しく解説します。

立ち退き料

現在の物件に居住者がいる場合は、建て替えのために退去してもらう必要があり、その際の居住者への補償費用が立ち退き料です。

 

一般的に建て替えの場合の立ち退き料の相場は、引越し代・新居の敷金や礼金・不動産会社の仲介手数料などを含めて、家賃の6か月分程と言われています。

 

ただし、テナントが店舗の場合は、立ち退き料として引っ越しにかかる設備の移転費用の他、休業中の営業補償が加わるため高額になりがちなので、注意するようにしましょう。

 

なお、立ち退きの交渉は早めに行い、トラブルになりそうな場合は、弁護士などの専門家に相談して慎重に進めることをおすすめします。

資産損失

建物の減価償却期間が終わっていない状態で取り壊す場合には、償却されていない分の金額を、資産としての建物が損失したとして経費計上することが可能です。

 

つまり、築浅で減価償却があまりされていないほど資産損失は大きくなります。

 

ちなみに、建物の減価償却期間は法定耐用年数までと決められており、木造アパートの耐用年数は22年、鉄骨造は19年〜34年、鉄筋コンクリート造は47年です。例えば、木造アパートでは新築から23年で資産価値がゼロになりますので、23年経過した物件は、資産損失として計上できる費用がなくなります。

解体費用

 

古い事業用建物(貸付物件)を解体し新しく事業用建物を建て替える場合には、解体費用を経費として計上できる可能性があります。

 

「事業用建物」の基準として不動産投資の建物については、アパートの場合は10室、貸家の場合は5棟の事業規模であることとなっています。

 

また、解体後に自宅として使用したり、更地にして売却したりする場合には認められませんので覚えておきましょう。

 

ちなみに、解体費用は建物の構造によって変動します。延べ床面積あたりの坪単価は、木造5万円、鉄骨造り(S造)7万円、鉄筋コンクリート造り(RC造)10万円が目安です。

 

ただし、建物の規模や立地、地域の人件費、隣接する建物との距離やアスベストの有無によって、目安との違いが生じるので注意しましょう。

新築費用

アパート・マンションの建て替えで一番大きな費用として計上できるものが新築費です。

 

アパート・マンションの新築費の目安は、坪単価で木造55万円~75万円、軽量鉄骨造(S造)で85万円~100万円、鉄筋コンクリート造(RC造)で90万円~120万円、鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC造)で110万円~140万円となっています。

 

当然ですが、上記はあくまで目安で建築費は建設会社や工法によって違いがあり、また、昨今の原材料費や人件費の高騰により上昇傾向となっていますので、事前に見積もりをとって確認するようにしてください。

 

なお、建物を新築する際には、建築費(付属設備費用・外構費用を含む)のほかに諸費用として、設計費・現地調査費・印紙税・登記費用・損害保険料・融資手数料などがかかります。

 

これらについても経費計上が可能です。

アパート・マンション新築費用の減価償却について

アパート・マンションの新築費用は、一度に経費計上できず、建物の構造に合わせた年数で均等に経費として計上します。これが減価償却です。

 

ここでは、アパート・マンションの新築費用の減価償却について解説します。

アパート・マンション新築費用の減価償却とは

アパートやマンションなどの不動産投資物件に対する減価償却とは、その建物が経年劣化することによって価値が減少することを会計上で認め、その減少分を経費として計上することを指します。

 

減価償却を行うことで、不動産の所有者は毎年一定額の経費を税金計算の際に控除することができ、結果として税負担を軽減することが可能です。

 

なお、新築アパート・マンションの減価償却費は、建物の取得価額と法定耐用年数に応じて計算します。

 

ただし、実際の計算方法や償却の適用には要件がありますので、具体的な計算方法や適用条件については専門家に相談しましょう。

アパート・マンションの減価償却の種類

減価償却には「減価償却」「一括減価償却」「少額減価償却資産の特例」の3種類があり、減価償却以外の2種類は以下のような制度です。

 

●   一括減価償却:取得価額が10万円以上20万円未満の資産について使用した年から3年間で償却する制度
●    少額減価償却資産の特例:取得価格30万円未満の資産について、使用した年に一括で費用計上できる制度

 

アパート・マンションの建築費は、金額的な面から上記の償却方法は用いず、法律で定められた耐用年数(法定耐用年数)に応じて減価償却することになります。

アパート・マンションの建物の種類と減価償却期間

国税庁では、建物の材質や構造によって耐用年数を定めています。これを法定耐用年数といい、法定耐用年数に応じて減価償却期間を設定します。

 

居住用建物の構造による法定耐用年数は下記のとおりです。

 

建物の構造 法定耐用年数
木造 22年
軽量鉄骨(骨格材の厚みが3mm以下) 19年
軽量鉄骨(骨格材の厚みが3mmを超え4mm以下) 27年
重量鉄骨 34年
鉄筋コンクリート造 47年

 

法定耐用年数が定められたのが昭和40年ですので、実際の耐用年数よりも短くなっていますが、会計上の概念として捉えられています。

アパート・マンションの減価償却の計算方法

アパート・マンションの建築費を減価償却する場合の計算方法について、以前は「定率法」と「定額法」のどちらかを選ぶことができましたが、平成28年の法改正により、「定率法」は廃止され「定額法」で計算することになりました。

 

例えば、建築費11,000万円の木造建築のアパートの減価償却をする場合であれば、11,000万円÷22年=500万となりますので、毎年500万円を減価償却として経費計上することになります。

建物と建物付属設備を分けて減価償却すべきか

建物と建物付属設備は耐用年数が異なります。

 

それぞれを分けて減価償却することについて解説します。

建物付属設備と耐用年数

 

建物には様々な設備が付属していますが、設備の耐用年数は建物の耐用年数とは異なります。

 

例えば、以下の通りです。

 

●   ガス設備:15年
●    給排水設備:15年
●    電気設備:蓄電池電源設備6年
●    エレベータ:17年
●    家庭用エアコン:6年 など

 

上記のように、建物本体よりも短く設定されています。

 

建物と設備を一体と考えて建物の耐用年数で減価償却することもできますが、建物と付属する設備をそれぞれ別の耐用年数で減価償却費として計上する方法が一般的です。

建物と建物付属設備を分けて減価償却するメリット

アパート・マンションを建て替えて新築した場合、新しい物件であることから入居率が高まり、家賃も高めに設定できます。そのため新築後の一定期間は家賃収入が多くなるのが一般的です。

 

この家賃収入が多くなる一定期間の間に、少しでも多く償却できれば、節税的なメリットが生まれます。

 

その点、建物と建物付属設備を分けて減価償却すると、設備の耐用年数は短く設定されているため、新築後一定期間の減価償却の金額を増やすことが可能です。

アパート・マンションの減価償却が終わった後について

アパート・マンションの減価償却が終わった後どうなるのか、また減価償却が終わる前にできる対策にはどういったことがあるのかを紹介します。

 

アパート・マンションの減価償却が終わった方やもうすぐ終わるという方は参考にしてみてください。

アパート・マンションの減価償却が終わったらどうなるのか

減価償却が終わると計上できる経費が一気に少なくなり、税金が急増してしまいます。

 

税金は賃貸収入から経費を引いた額に対して課税されるため、減価償却が終わることで課税所得が増え、税金の負担額が増えてしまうのです。

 

しかも、減価償却が終わる頃になると築年数も経っていて、その建物から得られる家賃収入も下がっていますので、何らかの対策が必要になるでしょう。

アパート・マンションの減価償却が終わる前にできる対策

建物の減価償却が終わる前にできる対策としては、「建て替える」「売却する」「新たな物件を購入する」「大規模修繕工事をする」があります。

 

●    建て替える:立地がよく、アパート・マンションの需要が見込めるのであれば、建て替えがおすすめ。すでにローンが終わっているのであれば、新築に合わせて新たにローンを組みやすくなる。
●    売却する:これから先も家賃収入が見込める物件であれば、減価償却が終わった時点で収益物件として売却し、売却益を得る。
●    新たな物件を購入する:新たに別の物件を購入することでその建物分を減価償却し、税金が増えた分を新たな家賃収入で補うことができる場合におすすめの方法。
●    大規模修繕工事をする:新たに償却資産を生み所得税減と家賃収入増を目指す。

 

減価償却が終わる前に上記の方法をよく検討してください。

アパート・マンションを建て替えたときに確定申告で注意すべきポイント

アパート・マンションを建て替えた場合、普段の確定申告とは異なるため、注意すべきポイントを理解しておく必要があります。

 

確定申告でトラブルになったり、損をしたりしないためにも解説する内容を理解しておくようにしましょう。

契約書や領収書を必ず残す

※領収証にはインボイス番号の記入が必要です。

 

確定申告をスムーズに行うために、契約書や領収書は必ず手元に残しておきましょう。

 

書類を紛失したり計上を忘れたりすると、余計な税金を負担することになります。

 

しっかり節税するためにまとめて保管しておくことが大切です。

赤字の場合も申告する

アパート・マンションの建て替えによって赤字になったとしても必ず確定申告しましょう。

 

赤字になったとしても、赤字分を他の収入の所得からマイナスして課税額を減らすことができます。特にサラリーマンが副業で運用している場合、確定申告で還付を受けられますので、忘れずに申告することが重要です。

 

また、その他の所得がない場合も「純損失の繰越控除」により、赤字を3年間繰り越すことができますので、覚えておきましょう。

まとめ

ここまで、アパート・マンションを建て替えた年の確定申告について、経費になる費用を中心に解説しました。

 

不動産の賃貸経営では税金対策は非常に重要です。

 

経費にできる費用はしっかり計上するようにし、効率的に資産形成をしていきましょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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