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不動産オーナーさま向けコラム

タワマン節税できなくなる理由とは? 法改正について解説

2023.10.15

昨今、ニュースや新聞記事などで「タワマン節税」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

節税のためにと、タワーマンション購入を勧められた経験がある方も多いでしょう。

 

これまで富裕層を中心とした相続税対策として、タワーマンションを購入する、いわゆる「タワマン節税」という手法が広められてきました。

 

利便性やステータス感などが相まって人気となり、タワーマンションの市場価格が高騰してきたためです。

 

しかし、この手法に対し国税庁は見直しを進めており、いきすぎた節税対策を正すという名目で、2024年1月から相続税の算出基準を改正する見通しです。

 

よって、タワマン節税を考えていた方は、今後の相続税対策について新たな検討が必要になります。

 

この記事では、タワマン節税の仕組みや、課税ルールの改正の内容、改正後の影響などについて、具体的な事例を交えて解説していきます。

 

不動産オーナーの方には、興味深いテーマだと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

タワーマンションが相続税対策になる理由

そもそもタワーマンションを購入することで、なぜ相続税を節税できるのでしょうか。

 

ここでは、タワマン節税の仕組みを解説します。

市場価格と相続税評価金額との差額

タワマン節税とは、一般の不動産よりも市場価格と相続税評価金額との差額が大きくなっていることを利用した節税対策です。

 

相続税の課税対象となる財産には以下のようなものがあります。

 

・不動産(賃貸物件、住居、事務所・店舗、農地、貸地など)
・動産(車、宝石、骨董品など)
・現金
・預貯金
・有価証券
・小切手
・貸付金
・国債
・ゴルフ会員権
・名義預金 
・生前贈与した財産(被相続人が亡くなる前「3」年以内の贈与 ※税制改正により令和6年1月1日以後は前7年以内)
・被相続人の口座から亡くなる直前に引き出した現金 など


これらの財産に対して、金額を評価する方法はそれぞれ規定されており、現金や預貯金はそのままの金額が相続税評価額となります。

 

一方、不動産の相続税評価額は、国の定めた規定で一般の取引金額の7~8割程度です。

 

不動産は価値が高く、相続人の税金の負担が大きくなりすぎることから、このような規定となっています。

 

例えば、1億円を現金で持っていればそのまま課税されますが、不動産にしておけば、7,000万円~8,000万円としての課税評価をしてもらえるという訳です。

 

当然ですが、この取引金額と課税評価額の差額が大きければ大きいほど、さらに相続税を節税することができます。

タワーマンションでは一般の不動産よりも、この差額(乖離)が大きくなっており、タワマン節税は、この仕組みを利用した節税方法です。

大きな差額が出る理由

タワーマンションで乖離が大きくなる理由は、大きく2つあります。

 

1つは、マンションの土地の評価額が、マンション全体の戸数が多いほど1戸あたりの評価額が低くなるということです。

 

マンションの評価額は、土地と建物、それぞれの方法で評価されます。土地については、敷地面積を各部屋の専有面積で割って算出するため、1棟の戸数が多いタワーマンションでは、各部屋当たりの敷地が非常に小さくなるという訳です。

 

そのため、評価額は低く計算されます。

 

もう1つの理由は、高層マンションでは高層階ほど市場価格は高額になるが、評価額においては低層階でも高層階でも変わらないということです。

 

建物の評価額は、固定資産税評価額が使われますが、面積が同じであれば1階でも30階でも同じ額になります。

 

しかし、市場価格では高層階であるほど眺望や日当たりの良さなどで人気があり高額となるため、高層階であればあるほど市場価格との差が大きくなっていきます。

 

この2つの理由から、タワーマンションの市場価格と評価額は乖離が大きくなり、高い節税効果が得られているのです。

小規模宅地の特例で、さらに減額

タワーマンションでは、「小規模宅地の特例」を使うことで、さらに相続税を節税できます。

 

住宅用地の特例では居住用の建物が建てられた敷地において、自分の居住用であれば土地の評価額が330平方メートルまで80%引き、他人に貸している場合は、200平方メートルまで50%引きになります。

 

戸数が多く所有する敷地面積が少ないタワーマンションでは、持分の土地面積の大部分、もしくはすべてが特例の適用対象となることが多いです。

 

住宅としてではなく、事業用あるいは賃貸物件として利用されている場合でも、割引率は下がりますが適用が可能ですので、対象となるケースはかなり多いでしょう。

タワマン節税で固定資産税も節税できる

タワマン節税では、相続税以外にも固定資産税を少なくすることもできます。

 

固定資産税も、200平方メートル以下の狭い住宅地に対する割引特例制度が使えるためです。

 

本来、固定資産税は不動産の評価額に対して1.4%が課せられますが、200平方メートル以下の土地については、固定資産税が1/6以下になります。

 

タワーマンションの敷地の評価額を計算する場合、マンションの敷地全体の評価額を戸数で割って計算するため、敷地の固定資産税は1/6になるケースがほとんどです。

 

これほどまで節税効果があることから、多くの人がタワマン節税を活用するようになりました。

タワーマンション相続評価額の見直しの背景

大きな節税効果のある「タワマン節税」に対し、国税庁はなぜ制度を見直そうとしているのでしょうか。

 

その背景には、市場価格と評価額に著しい乖離があり、公平性の見地からも問題があるという国税庁の考えがあります。

見直しの目的は、乖離の是正

相続税の評価額は、市場価格の8割程度に収まるのが理想だと考えられていますが、実際タワーマンションの評価額は市場価格よりもかなり低くなっています。

 

国税庁の調査によれば、市場価格と評価額の乖離率は、一戸建ての平均が1.66倍であるのに対し、20階建て以上の高層マンションは3.16倍です。

 

公平性の観点からタワーマンションも一戸建てと同程度の乖離率にしようとしているのも無理はないのかもしれません。

2017年には固定資産税の見直しも

昔の固定資産税は、建物1棟に対して課税されており、そこに課される固定資産税を床面積で割るだけで、各部屋の高さまで考慮されていませんでした。

 

法律が制定された昭和20年ごろには、高層建築がほとんどなかったため、タワーマンションのような建物は想定されていなかったのです。

 

その後、高層階は人気があり市場価格も高いのに、低層階と同じ固定資産税なのは不公平との意見が多く寄せられ、2017年に税制が改正されました。

 

タワーマンションに対する固定資産税の計算方法が変わり、高層階の固定資産税が割高に、低層階は逆に割安になりました。

 

このように、市場価格の傾向に合わせて、上層階ほど固定資産税が高くなるように定められたのです。

 

2024年の税制の見直しでは、この流れで相続税の算出方法も改正することになりました。

タワマン節税が認められなかった判例

タワーマンション購入で節税する方法が、税務署に認められなかった事例は数多くあります。

 

特に、被相続人が相続直前に不動産を購入し、相続後すぐに売却した場合はいきすぎた節税として認められにくいです。

 

そのような状況で2022年、最高裁判所が下したある判決によって、タワマン節税が大きな注目を浴びることになりました。

 

事案の具体的な内容は、総額14億円近い高額なマンションが相続財産となっており、相続財産の評価ルールに従って評価額を計算。それが約3億3000万円。

 

さらに、マンション購入費用の大半は銀行から借入れしたため、その分を控除して、相続税額を0円として申告したのです。

 

ところが、国税庁は、相続人が算出した不動産の評価額は、市場価格と比較した場合に大きな乖離があると判断しました。

 

課税の公平性の観点から増額するよう更正処分を行った結果、相続税0円だった申告が、なんと約2億4,000万円の課税額と判断。

 

この処分を不服とした相続人は、処分取り消しを求める訴訟を起こしました。

 

裁判の結果は、一審二審とも相続人側の敗訴、最高裁の判決においても、国税庁の主張が認められることになったのです。

 

この事案では、下記のような点から相続人の主張が認められませんでした。

 

・被相続人が90歳とかなりの高齢だった
・マンションの購入費用の借入れの際に、相続税対策と銀行に伝えていた
・相続した後、相続人がすぐにマンションを売却した

 

上記のような理由から、税務署側は明らかな税金逃れが目的とみなしたのです。

 

結果、あまりに極端な乖離が発生する場合などは、国税庁はその評価を変更することができるという通達をもとに判断がされました。

 

この最高裁判所の判決を機に、算出ルールの見直しが進むことになったのです。

マンションの相続評価額の新たな算出方法

マンションなどの評価の見直しについては、具体的な計算方法の案が出されています。

 

実際の物件に新しい計算方法を当てはめ、これまでの計算方法で算出される相続税額との違いを示して解説していきましょう。

算出方法の概要

今回の改正の基本的な考え方では、マンションの評価額を、市場で取引される価格の60%としています。

 

市場取引価格の60%になれば乖離率は約1.67となり、これまで低すぎたマンションの評価額が一戸建てと同程度になるのです。

 

乖離率が1.67よりも大きい物件は、60%に補正した金額を評価額にします。

 

一方で、評価額が市場取引金額より高い場合は、市場取引額で評価することとしています。

 

ちなみに、マンションの評価乖離率は、次の4つの要素で計算するので覚えておきましょう。

 

・マンションの建物の築年数
・マンションの建物の総階数
・マンション一室がある階
・マンション一室の敷地持分狭小度

補正額算出の具体例

では、実際の事例に当てはめて補正額を算出して相続税を計算してみましょう。

 

(事例案件)
所在地:東京都
総階数:43階
所在階数:23階
築年数:9年
専有面積:67.17平方メートル
市場取引価格:1億1,900万円
相続税評価額:3,720万円
乖離率:3.20倍

 

相続財産がこのマンションだけとした場合、従来の評価額で相続税を計算すると、評価額は3,720万円になります。相続額が3,000万円超~5,000万円以下の場合は、税率20%で200万円の控除がありますので、

 

3,720万円×20%-200万円=544万円 が相続税です。

 

この物件は、乖離率が3.20倍となっており、1.67倍よりも大きいため、下記のように補正します。

 

3,720万円×3.2(乖離率)×60%=約7,142万円

 

補正された評価額で計算すると、相続額が5,000万円超~1億円以下の場合は税率30%で700万円の控除となり、下記の金額が相続税です。

 

約7,142万円×30%-700万円=約1,443万円

 

つまり、従来の評価額では544万円だった相続税が、ルール改正後は1,443万円となり、899万円も上がることになります。

 

これまでより倍以上の負担になるという訳です。

マンションの相続税評価ルール改正の影響

この改正が適用されると、富裕層だけでなく、多くのマンション所有者にも影響が及ぶと予想されています。

 

ここでは、どのような影響が出てくるかを見ていきましょう。

タワマン節税の効果は少なくなる

今回のルール改正によって、課税額が大幅に上がることになります。

 

そのため、これまでのようなタワマン節税の効果は少なくなるか、場合によっては無くなってしまうでしょう。

 

また、タワマンだけでなく、一般的なマンションでも、市場取引金額と相続税評価額に乖離がある場合には、補正対象となり相続税が高くなってしまいます。

 

首都圏にあるマンションのほとんどが対象になるでしょう。

プレミアム価格の不動産物件は要注意

高層のタワーマンションだけでなく、新築マンションやデザイナーズマンションなど、プレミアム価格の物件も注意が必要になります。

 

こういった物件は、評価額と取引額の乖離が大きくなりやすく、補正対象となる可能性が高いので覚えておきましょう。

まとめ

眺望や立地の良さ、共用施設の充実、ステータス感などから、タワーマンションは人気があり、価格も高層階になるほど高額になっています。

 

この人気に加えて、相続税評価額と市場取引金額の乖離を利用した節税効果があったため、これまで爆発的に売り上げを伸ばしてきました。

 

しかし、今回の評価ルールの見直しによって、安易なタワマン節税は難しくなるため、今後のマンション市場に影響が出る可能性が高いと言われています。

 

タワマン節税を検討していた方や、すでにタワーマンションを所有している方にとっては、他人事では済まされない状況でしょう。

 

そのため、この記事では、タワマン節税の仕組みや、課税ルールの改正の内容、改正後の影響などについて、具体的な事例を交えて解説してきました。

 

この記事を参考に、タワマン節税について改めて考えてみましょう。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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