家賃収入には消費税が課税される?賃貸経営で理解しておくべき消費税を解説
家賃収入には消費税が課税される?賃貸経営で理解しておくべき消費税を解説
賃貸物件から家賃収入を得ているオーナーの方なら、消費税を納税する必要があるのかどうかは非常に重要な問題です。
消費税は10%課税されますので、納税する義務があるのとないのとでは大きく収益が変わってきます。
この記事では、どのケースで消費税が課税されるのか、或いはどういったケースなら非課税になるのか、また課税業者となった場合には消費税をいつ支払うのか、といった点について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。
消費税の課税対象となる条件とは
消費税は、商品の販売やサービスの提供に対して課される税金です。国税である消費税と地方税である地方消費税を合わせたもので、取引額の10%が税金となります。
消費者が直接税金を納めるのではなく、納税義務者となった事業者が代わりに税金を納める「間接税」です。
納付する消費税額は、以下の計算式で算出されます。
消費税額 = 課税売上に係る消費税額 ― 課税仕入れ等に係る消費税額
課税事業者(消費税を納付する義務がある法人、個人事業主)となるのは、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。
住宅の家賃収入は課税されるのか
賃貸経営をしているなら家賃収入は消費税の課税対象となるのかについて理解しておく必要があります。
以下で詳しく解説していきましょう。
居住用の家賃収入は非課税
居住用に貸し出して家賃収入を得ている場合は、消費税は非課税です。
居住用物件の家賃は人々が生活するうえで必要不可欠な支出であることから、特別扱いされています。
国が居住用物件の家賃収入に消費税を課さない背景には、住宅確保の促進や、家賃収入を持つ個人の経済的負担を軽減させるという政策的配慮があるためです。
ただし、「居住用物件の家賃収入」と認められるには、以下二つの要件を満たす必要があります。
1.契約書に居住用であることが明記されていること
2.賃貸期間が1カ月以上であること
ちなみに、短期間のレンタルや民泊などは対象外となるため注意が必要です。
また、賃貸契約書に記載がない場合でも、居住の実態があれば、居住用と考えて消費税は非課税となります。
しかし、これを証明するための文書や証拠が必要になる可能性があります。
居住用の物件の礼金・更新料は非課税
賃貸オーナーが受け取る居住用物件の礼金・更新料も消費税はかかりません。
これも、借主の経済的負担を軽減させる目的で制定されています。
敷金は、家賃の滞納や退去時に借主が負担すべき原状回復費を担保するもので、預かり金扱いになるため消費税は非課税になります。
この点も、賃貸契約を結ぶ際の大きなメリットと言えるでしょう。
集合住宅の共益費、管理費などは非課税
居住用マンションにおける管理費や共益費は、居住するために必要な費用であり、家賃収入と同様に非課税です。
これにより、住民は生活の質を保つためのサービスを利用しやすくなります。家賃や共益費に水道光熱費が含まれている場合も消費税は課税されません。
これらの費用が直接の生活必需品であるための特例措置であるためです。
総括すれば、居住用物件から得られる不動産収入は消費税がかからないと考えていいでしょう。
しかし、その詳細な条件や適用範囲を正しく理解することが、トラブルを避けるためには必須です。
事務所・店舗の家賃収入は課税されるのか
居住用の物件は消費税が非課税ですが、事務所や店舗など事業用物件の家賃収入はどうなのか、下記の内容を参考にしてみてください。
事業用の家賃収入とは
事業用物件の家賃収入には消費税が課税されます。
事業用物件というのは、具体的に以下のような物件のことです。
● 貸店舗
● 貸事務所
● 貸倉庫
● 貸駐車場
● まかない付き下宿
● 貸別荘
事業用物件は主に事業活動をサポートするためのスペースとして利用されます。
このため、家賃収入は事業活動の一部として捉えられ、消費税の対象です。
また、店舗と住居が兼用の物件については、住居と店舗が区分されていれば、店舗部分は課税対象となります。
そのため、賃貸経営を検討する際には、物件の利用目的や区分を明確にすることが重要になります。
総額が対象
課税売上は不動産投資による収入に限らず、消費税の課税対象となる収入の合計で考える必要があります。
事業用不動産の賃貸事業のほかにも事業を行っている場合、売上の合計が1,000万円を超えると課税事業者となりますので、納税義務が発生します。
これは、小規模の事業者が消費税の対象外となることを防ぐための措置です。
課税事業者としてのステータスが確定した場合、消費税の計算、申告、納税の義務が発生するため、適切な帳簿の取り扱いや税務申告が必要となります。
その他の不動産の場合
ここまでは居住用物件と事業用物件について確認しましたが、次はその他の不動産からの収入はどうなっているのかを見ておきましょう。
店舗併設型のマンションの消費税はどうなる?
1階から3階が店舗や事務所で、4階から上が居住用のマンションの場合、家賃収入についての取り扱いが異なります。
店舗部分についての家賃収入は消費税が課税されるのに対し、3階以上の住居部分は非課税となります。
このような物件に投資する場合、店舗部分と住居部分の契約を明確に分け、それぞれの部分の家賃と消費税の取り扱いを正確に明記することが必要になります。
駐車場代は要件次第で非課税
一般的に駐車場は課税対象となります。
しかし、マンション等の住宅に併設されている駐車場は、特定の条件を満たす場合非課税となることがあります。
・入居者1戸あたり1台以上の駐車場があること
・入居者が自動車を保有しているかいないかにかかわらず、全戸に駐車場が割り当てられていること
・駐車場代を家賃に含めていること
このような場合、駐車場代が家賃に組み込まれているため、駐車場代も非課税となる可能性があります。
入居者の希望によって付帯された設備の利用料は課税
マンションやアパートにおいて、家具や家電、倉庫などを追加料金で提供している場合、その使用料は課税対象となります。
課税対象となる理由は、設備やサービスが基本的な居住の必要を超える付加価値を提供すると捉えられるためです。
また、住居に基本的に付属している設備(例: エアコンや冷蔵庫)の使用料が家賃に含まれている場合、その部分は非課税となりますが、これらの設備の使用料を家賃とは別に請求する場合、その使用料には消費税が課せられることを覚えておきましょう。
不動産経営で納める消費税の計算方法
オーナーの多くは税理士に依頼して消費税を納めているため、詳しいことが分からなくても仕方ありませんが、基本的な計算方法などは知っておいた方がいいでしょう。
ここでは、不動産経営で納める消費税の計算方法を理解しておきましょう。
消費税の納税額計算の基本的な考え方
消費税の基本的な考え方は、消費者から預かった消費税額から事業者が支払った消費税額を差し引いた金額を納税するということです。
これで計算した結果、預かった金額が多ければ消費税を納付し、逆に、支払った消費税が多ければ還付を受けます。
ただし、課税事業者を選択する手続きを行っていない免税事業者は、還付の対象にならないので注意が必要です。
消費税の納税額を計算する方式
消費税の納税額を計算する方式としては、大きく分けて「原則課税」と「簡易課税」の二つの方式があります。
まず、「原則課税」は個別の取引について支払った消費税と受け取った消費税を抜き出し、その差額を計算して納税額を割り出す方式です。
一方、「簡易課税」は受け取った消費税に一定の割合(みなし仕入率)を乗じて算出する簡易な計算方式のことを言います。
「みなし仕入率」は業種ごとに6つに分類されていて、課税売上高の40%~90%に設定されています。不動産賃貸業のみなし仕入率は40%です。
不動産賃貸業は一般的に経費としてかかるものが少なく、仕入れとして払っている消費税も少ないので、簡易課税制度を適用して納税する方が有利と言われています。
つまり、家賃収入に対して40%程度の経費がかかっていているとみなして、その分の消費税は納税済みとし、残りの60%分にかかる消費税を支払うのです。
事業所得として賃貸収入に消費税が課税される場合には、その経費を計算する必要があります。
支払いをした経費には消費税が含まれていますが、それらをすべて抜き出して詳細に計算するのは非常に手間がかかる作業です。
原則課税ですべての取引をチェックすることは、中小企業にとって負担が重いということで、売上高5,000万円以下の企業を対象として簡易課税を適用することが認められています。
簡易課税制度による消費税の納税額は、以下の計算式で算出します。
納付消費税額=受け取った消費税額-(受け取った消費税額×みなし仕入率)
例えば、不動産賃貸で2,200万円(税込み)の課税賃貸収入があった場合、不動産賃貸業のみなし仕入率は40%ですから、納付消費税額=200万円-(200万円×40%)=120万円です。
簡易課税を適用することで、簡単に消費税額を計算できるようになります。
簡易課税制度を受けるには、税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。
その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出すれば、簡易課税を適用することができるのです。
「課税期間の初日の前日まで」とは決算月の最終日のことです。3月決算の法人であれば、3月31日まで、個人事業主であれば、12月31日までということになります。
家賃収入の消費税は、いつどのように支払うのか
家賃収入に対して消費税が課税される場合、いつどのように支払えばいいのかについても説明していきます。
消費税の支払い時期を理解しておかないと納税が遅れてしまう可能性もあるため、しっかりと理解しておくことが必要です。
1期目と2期目は原則、消費税が免除
事業用物件の基準期間の売上が1000万円超の場合でも、1期目と2期目は原則、消費税が免除されます。
※ただし、前年の1月から6月までの課税売上高が1,000万円超(給与支払額も含む)なら2期目は課税に、また資本金1,000万円以上の法人は1期目から課税されるので注意が必要です。
3期目以降の納税については、個人事業主と法人とでは異なります。
納税期は個人事業主の場合、対象年度の翌年の3月末まで、法人の場合は課税期間末日の翌日から2カ月以内です。
消費税をどのように支払えばよいか
消費税を支払う際は、事業者は一定の期間ごとにその税額を計算し、所轄税務署へ申告しなければなりません。消費税と地方消費税は合算して申告・納付されます。
標準税率10%の内訳は、中央政府への消費税率が7.8%、そして地方自治体への地方消費税率は2.2%となっています。
また、以下の点に注意しながら、申告・納付を行うことが必要です。
申告期限:申告期限は、決算日の翌日から2ヶ月以内です。例えば、12月決算の場合、翌年の2月末が期限となります。
納税方法:税金は、税務署の指定する金融機関、郵便局、または税務署の窓口で直接納付することができます。
税額の計算:売上から仕入れ等の税込み価格を差し引いた金額に消費税率を適用することで、納付すべき税額が計算されます。
過不足の調整:実際の売上が予想よりも多かったり少なかったりする場合、次回の申告時に過不足を調整して申告することが可能です。
税務署の指導:税務署からの指導やアドバイスを受けることができるので、不明点や困難がある場合は、所轄の税務署に相談しましょう。
定期的に消費税を計算し、適切に申告・納付することは、事業者の責任として非常に重要です。
適切な申告・納付を怠ると、過少申告加算税や延滞税などの罰則が科される可能性がありますので、注意が必要です。
まとめ
今回は家賃収入に消費税が課税されるのかというテーマについて解説してきました。
居住用物件の家賃収入には消費税が課税されないので、居住用のアパートやマンションや戸建てのオーナーの皆様は特に気にする必要はありません。
一方、オフィスや店舗、駐車場など、事業用の不動産物件の賃貸を考えている方は、消費税について詳しく理解しておくことも必要です。
また、他にも事業も行っている場合は、合算で課税対象になるケースも考えられます。
消費税について知識を深めたい賃貸物件のオーナーの方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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