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不動産オーナーさま向けコラム

アパート・マンション経営の税金対策10選

2022.08.15

アパート・マンション経営(賃貸経営)をしている方で、税金対策に無関心な方はいないと思います。

 

適切な税金対策を行わないと多額の税金が課税されて、利益が減ってしまうためです。

 

とはいえ、節税の方法は複数あるため、「どの節税方法が自身に適しているのかわからない」という方も多いでしょう。

 

そのため、本記事では、アパート・マンション経営(賃貸経営)の税金対策を10個紹介していきます。

 

アパート・マンション経営(賃貸経営)をしていて税金対策に悩んでいる方は、本記事を参考にしてみてください。

アパート・マンション経営でできる税金対策10選

アパート・マンション経営でできる主な税金対策を一覧でまとめてみました。

 

まずは確認してみてください。

  

税金対策 節税できる税目
減価償却を活用する 所得税・住民税
青色申告特別控除を活用する 所得税・住民税
青色事業専従者給与を活用する 所得税・住民税
経費計上を漏れなく行う 所得税・住民税

管理会社を設立する

所得税・住民税
小規模企業救済を活用する 所得税・住民税
赤字が発生した場合は損益通算を利用する 所得税・住民税
法人化する 所得税・譲渡所得税
修繕費を計上する 所得税・住民税
借地権割合と借家権割合の適用 相続税

  

上記の表に挙げた税金対策について、それぞれ詳しく解説していきましょう。

減価償却を活用する

減価償却とは設備や建物が時間経過によって劣化し低下する価値を、固定資産の価値から差し引くことができる仕組みのことです。

  

減価償却によって差し引ける金額「減価償却費」は、実際に出費が伴わない経費であるため、経費計上することで税上の不動産所得を減少させる効果があります。

  

したがって、減価償却を活用することは、所得税や住民税の税金対策として非常に有効です。

  

尚、減価償却の対象は「建物」と「設備」に限定されており、時間経過によって劣化することがない「土地」は対象にはならないので覚えておくようにしましょう。

  

ちなみに、減価償却費は、設備や建物取得に掛かった費用を法定耐用年数の期間で分割して計算します。

  

耐用年数は建物の用途や構造により異なるため、以下の表で確認してください。

 

建物の構造 建物の用途 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 住宅 22年
鉄筋コンクリート(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) 住宅 47年
木骨モルタル造のもの 住宅 20年
れんが造・石造・ブロック造のもの 住宅 38年

金属造のもの(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの)

住宅 34年
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mmを超え、4mm以下のもの) 住宅 27年
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mm以下のもの) 住宅 19年

 

出典:国税庁|耐用年数(建物/建物附属設備)

青色申告特別控除を活用する

 

青色申告とは1年間の所得金額を一定の帳簿に記帳し、その帳簿の記録に基づいて確定申告を行う制度です。

 

賃貸経営をしている方でも、青色申告で確定申告を行うことで、最大65万円の控除が可能な「青色申告特別控除」を適用できます。

 

では、年間の家賃収入が500万円、必要経費が80万円で65万円の青色申告特別控除が適用された場合の所得税と、青色申告特別控除が適用されなかった場合の所得税を比較してみましょう。

 

【青色申告特別控除が適用されたケース】

500万円(年間の家賃収入)―80万円(必要経費)-65万円(青色申告特別控除)=355万円(不動産所得)

355万円(不動産所得)×20%(所得税率※)-42万7,500円(控除額※)=28万2,500円(所得税)

※税率と控除額は、課税所得金額が330万円~694万円9,000円の場合 

 

【青色申告特別控除が適用されなかったケース】

500万円(年間の家賃収入)―80万円(必要経費)=420万円(不動産所得)

420万円(不動産所得)×20%(所得税率)-42万7,500円(控除額)=41万2,500円(所得税)

 

上記の場合、青色申告で確定申告を行い、青色申告特別控除を受けたほうが、所得税だけでも13万円抑えられることが分かります。

 

したがって、賃貸経営で税金対策をするなら、青色申告を行うことが基本です。

 

ただし、最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

 

・ 5棟10室以上の事業規模でマンション・アパート経営を行っていること

・ 現金主義ではなく取引が発生したタイミングで帳簿に記帳する発生主義で帳簿をつけること

・ e-Taxで確定申告するか、電子帳簿保存を利用すること

・ 正規の簿記で記帳をすること

・ 提出期限(その年の3月15日)までに貸借対照表および損益計算書、確定申告書を提出すること

 

出典:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

 

なお、上記の「e-Taxで確定申告するか、電子帳簿保存を利用すること」以外の要件を満たしている場合の青色申告特別控除は「事業的規模」として「最高55万円」が適用されます。一方、「5棟10室以上の事業規模で賃貸経営を行っていること」の要件を満たしていない場合の青色申告特別控除は「非事業的規模」として「最高10万円」が適用されることも知っておきましょう。

青色申告の事業専従者給与を活用する

青色事業専従者給与とは青色申告者と日常生活を行う際に生活費をともにしており、かつ業務に専従している15歳以上の家族への給与を必要経費とできる制度です。

 

給与を経費として計上できることで、税上の不動産所得を圧縮できるため節税につながります。

 

しかし、実は青色申告以外の確定申告の方法である「白色申告」でも事業専従者控除という制度を適用することで、申告者と日常生活を行う際に生活費をともにしており、かつ業務に専従している15歳以上の家族への給与を必要経費することが可能です。

 

では、何が異なるのでしょうか?

 

白色申告の事業専従者控除は、金額が以下のように決められている点です。

 

・ 配偶者「86万円」

・ その他親族「50万円」

 

青色事業専従者給与は給与として出せる金額に上限が定められていないため、白色申告の事業専従者控除よりも節税効果が高いといえます。

 

ただし、青色申告特別控除の金額は自由に設定できると言っても、仕事に見合った給与でないと判断された場合は、否認される可能性があるので注意が必要です。

 

また、青色事業専従者給与を適用するためには、10室以上のアパート・マンションを経営していなければならない点も知っておきましょう。

 

出典:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

経費計上を行う

 

 

基本的な話ですが、使用した経費を適切に計上することでも税金対策が可能です。

 

マンション・アパート経営には通信費・交通費を始め以下のような経費が掛かりますが、意外と経費計上が漏れてしまう方が多いです。

 

・ 固定資産税や都市計画税、登録免許税などの税金

・ 減価償却費

・ 火災保険と地震保険の保険料

・ 経営している不動産の管理費・修繕費

・ 投資用ローンの金利

・ 管理会社への委託料

・ 現地調査や打ち合わせなどの旅費交通費

・ 管理会社との打合せなどの交際費

・ 情報収集するための新聞などの諸経費

・ 事務所や物件の水道光熱費

・ ペンやプリンター用紙などの消耗品費

 

中でも、水道光熱費や交際費などは家事消費と混同しやすいですが、必要経費として計上できます。

 

例えば、自宅を不動産賃貸業の事務所として利用している場合、事務所スペース部分の水道光熱費は不動産所得の経費として計上が可能です。

 

また、ゴルフや外食代も不動産投資に関連する人と会って情報交換しているなら交際費として計上が可能です。

管理会社を設立する

不動産を管理する会社を設立することでも税金対策ができます。

 

設立した管理会社に管理委託することで、管理にかかる費用を経費として計上できるだけでなく、設立した管理会社に資金を貯めることが可能なためです。

 

ただし、管理会社を設立して税金対策をする方法は以下のデメリットがあるため、あまりおすすめはしません。

 

・ 設立の手続きが複雑で手間と時間がかかる

・ 税務署から管理実態を問われる可能性があるため適切に自身で管理する必要がある

・ 相場を大幅に超える管理委託料を受領すると法律に違反する可能性がある

 

仮に家賃収入の管理や物件の清掃などの管理業務を行っておらず、実体がないと判断されてしまうと、経費として計上していた管理委託料を過去に遡って否認される可能性が高いです。

 

また、明らかに相場よりも高い管理委託料が支払われている場合も同様に、管理委託料を過去に遡って否認される可能性があります。

 

このような事態にならないためにも、どうしても設立した管理会社で物件の管理を行いたい場合は、日報を残したうえで賃貸物件の入出金の管理を適切に行っている記録を残しておくようにしましょう。

小規模企業共済を活用する

小規模企業共済とは従業員数が20名以下の小規模事業者の経営者や役員、個人事業主などが加入できる共済制度です。

 

廃業や退職した際の生活費を積み立てることができるうえに、掛金を全額経費として計上できるため、不動産所得が圧縮され税金対策にもなります。

 

将来に備えて資金を貯めながら節税もできるため、老後などの将来の資金に不安を感じている方はぜひ検討してみてください。

 

なお、月々の掛金は1千円から7万円までの間であれば、500円単位で自由に選択することが可能です。

 

出典:掛金について|小規模企業共済(中小機構)

赤字が発生した場合は損益通算を利用する

損益通算とは、赤字の所得を他の所得の黒字から差し引いて課税所得を求める方法です。

 

例えば、給与所得や事業所得がある状態で不動産所得に赤字が生じた場合、以下の計算式で損益通算が活用でき、払いすぎた税金の還付を受けることができます。

 

【不動産所得(赤字)=不動産からの収入-賃貸経営に関わる必要経費

損益通算後の所得=給与所得-不動産所得(赤字)】

 

とはいえ、ここまでの解説では「そもそも不動産所得が赤字では、節税以前の問題ではないか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

 

確かに資金の手出しが必要な赤字状態では、いくら節税できようとも元も子もありません。

 

しかし、実際に出費が伴わない経費である「減価償却費」によって帳簿上で赤字が発生している場合は、出費が伴わない経費で帳簿上のみ赤字になっているだけなので、実際は利益を出しながら節税することができます。

 

では、どれほどの節税効果があるのか、不動産所得が赤字になった際に損益通算を活用した場合と活用していない場合をシミュレーションで比較してみましょう。

 

○前提条件

・本業の給与所得:600万円

・不動産総収入:400万円

・減価償却費などの諸経費:500万円

・基礎控除額:48万円

・社会保険料控除:86万円

・給与所得控除:164万円

 

【損益通算を利用しない場合の所得税】

600万円(給与所得)−48万円(基礎控除)−86万円(社会保険料控除)−164万円(給与所得控除)=302万円(課税所得)

302万円(課税所得)×10%(税率※)-9万7,500円(控除額※)=20万4,500円(所得税)

※税率と控除額は、課税所得金額が195万円~329万9,000円の場合 

 

【損益通算を利用した場合の所得税】

400万円(不動産総収入)-500万円(減価償却費などの諸経費)=△100万円(不動産所得)

(600万円(給与所得)−100万円(不動産所得))−48万円(基礎控除)−86万円(社会保険料控除)−164万円(給与所得控除)=202万円(損益通算後の課税所得)

202万円×10%(税率)-9万7,500円=10万4,500円(損益通算後の所得税)

 

【損益通算を利用した場合と利用していない場合の所得税の比較】

20万4,500円(給与所得のみの所得税)−10万4,500円(損益通算後の所得税)=10万円(差額)

 

上記の場合、不動産所得と給与所得を損益通算した後の所得税と、給与所得のみの所得税を比較すると、損益通算後を行ったほうが所得税だけでも10万円安くなることが分かります。

法人化する

一定以上の所得がある場合は、アパート・マンション経営を法人化したほうが所得税・住民税の負担を減らすことができます。

 

法人化することで、以下のメリットを享受できるためです。

 

・ 所得によっては節税効果が高い

・ 経費計上できる項目が多い

・ 不動産を短期売却する場合は法人のほうが個人よりも税率が低い

 

ちなみに、法人化する際の年収の目安は、「500万円から700万円程度」と言われています。

 

ただし、詳細な金額に関しては個人によって異なるため、専門家である税理士に相談するようにしてください。

修繕費を計上する

 

 

修繕費は原則として必要経費となりますが、物件の価値を高めたり、金額が大きいと資産として計上される「資本的支出」と見なされます。

 

そうなると、耐用年数に応じた減価償却の対象になるため、修繕をした期に一回で費用を計上することができません。

 

短期的には該当年の不動産所得の圧縮効果も低くなるため、節税効果は薄まります。

 

尚、資本的支出は減価償却費が計上されることによって所得の増減が緩和されるため、銀行の融資に有利となることもあります。

 

したがって、修繕工事を行う際は修繕内容が資本的支出に該当するのか、経費に該当するのかを事前に税理士や管理会社に確認したうえで行うようにしてください。

 

ちなみに、以下のような費用は経費として認められる可能性が高いです。

 

・ 建物の毀損部分の修理、畳の張り替え、外壁の塗替え

・ 金額が20万円程度の改良や交換の費用

・ 3年程度の周期で行う修理

 

一方で、物件の間取りを大幅に変更したり、耐震補強などのアップグレードの工事を行う場合は、耐久性や資産価値の向上になる工事と見なされ資本的支出に該当します。

借地権割合と借家権割合の適用

アパート・マンション経営をしている不動産を相続した場合、土地には借地権割合と借家権割合、建物には借家権割合を適用した評価額で相続税が計算されます。

 

その際に使用される計算式は以下です。

 

・ 土地評価額:自用地としての価額×(1−賃貸割合×0.3×借地権割合)

・ 建物評価額:固定資産税評価額×(1−賃貸割合×0.3)

 

このように、借地権割合と借家権割合を適用することで相続税評価額がかなり抑えられるため、更地で相続するよりも相続税が大きく節税になります。

アパート・マンション経営で節税対策を行うときの注意点

 

アパート・マンション経営で節税対策を行うときの注意点を理解しておかないと、経営や節税に失敗する可能性があります。

節税ばかりに目を向けない

アパート・マンション経営において節税は重要ですが、節税よりも前に経営が安定していることが最も重要です。

 

経営がうまくいかずに赤字が発生し、資産を減らしてしまっては意味がありません。

 

最初から節税ばかりに目を向けるのではなく、経営を安定させることを最優先にしてください。

税理士に相談する

法人化や経費計上の可否の判断は、素人では判断が難しいものが多いです。

 

税理士に相談することで、経費計上の可否や注意点、税金対策を行う上で有効な方法なども教えてもらえるため、必要経費と割り切るようにしましょう。

まとめ

 

アパート・マンション経営をする方なら、税金対策に興味の無い方はいないのではないでしょうか。

 

しかし、どの方法が自身に効果的な節税方法なのかを正確に把握しておかなくてはいけません。

 

そこで、本記事では、アパート・マンション経営の税金対策を10個紹介してきました。

 

アパート・マンション経営をしていて税金対策に悩んでいる方は、本記事を参考に自身に最適な税金対策を検討してみてください。

この記事を書いた人

DAINICHI 編集部 不動産チーム

DAINICHI 編集部 不動産チームは社内外の有識者により構成されています。不動産の投資、管理、運用、リノベーション、売却、有効活用などの方法について、様々な視点から不動産に関する有益な情報をお伝えします。

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