アパート・マンション経営にも関わる税務調査を徹底解説
申告内容が適正かどうかを調査する税務調査。調査対象の基準は公開されておらず、アパートやマンションなどの賃貸経営をするオーナーも例外ではありません。税務調査の結果、誤りが発覚する事例も多く、不安を感じる方もいることでしょう。
しかし、適正な申告や日々の管理に気を付けていれば、恐れることはありません。そこで今回は、賃貸経営を行うオーナーが税務調査でチェックされるポイントや、日ごろの対策を紹介します。
確定申告や税務調査に対し不安があるオーナー様は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
税務調査とは?
税務調査とは、税務署などの国税庁の職員が対象者を訪問し、適正な確定申告が行われているかをチェックする調査です。会計書類や帳簿を確認したり、ヒアリングを行うことで調査が進んでいき、誤りが発覚した場合には修正し追徴追尾課税される場合もあります。
こうした税務調査の対象基準は明確に公表されていません。比較的事業規模の大きい事業所や個人事業主が対象となりやすいという意見もありますが、たとえ小規模の不動産経営を行っている場合でも、確定申告をすれば税務調査の対象となる可能性があります。
そのため、税務調査の対象となった場合でも自信を持って応じられるよう、適正な申告と日々の会計管理をしっかり行うことが大切です。
賃貸経営を行うオーナーも税務調査の対象?調査が入りやすいのはどんな人?
ここでは、税務調査の対象となりやすいオーナーの特徴を見ていきましょう。あくまで一般論ですので、参考程度に留めておいてください。
不動産を取得した場合や手放したばかりの人
不動産を取得したり手放したタイミングは、お金の動きが激しくなるため、税務調査の対象になりやすいといわれています。
会計処理も複雑になるため、申告漏れなどに注意しましょう。場合によっては不動産の購入資金の出所などが調べられるケースもあるため、不動産を購入・売却した際はとくに丁寧に帳簿をつけておく必要があります。
急激な売り上げの増減がある人
売り上げの急激な増減があった場合も、税務調査の対象になりやすいといわれています。また、経費に大きな変化があった場合も同様です。
賃貸経営の場合では、大規模な修繕工事などが当てはまります。申告段階できちんと説明できれば調査のリスクが減少するともいわれているため、数字に大きな変化があった場合は可能な限り事情や背景を明瞭に記載しましょう。
不動産投資の規模が大きい人
そもそも不動産投資の規模が大きい場合は、お金の流れも激しく会計処理も複雑なため、税務調査の対象になりやすい傾向があります。
仮に申告内容に誤りがあった場合、投資の規模に比例して追加で支払わなければならない金額も増減します。毎年確定申告を行ったすべての方を細かく調査することは不可能であるため、規模の面である程度の基準が設けられていると考えるべきでしょう。
税務調査が行われるのは7~12月
税務調査が行われる時期として多いのが7〜12月頃です。背景には、税務署職員のスケジュールの都合が関係しています。
確定申告が行われる1~3月はもちろん繁忙期です。事務処理が落ち着き、税務署の人事異動が行われる7月を迎えたあとに、税務調査が集中する傾向があります。
この時期に税務調査の対象となって慌てないためにも、日ごろからしっかり準備しておきましょう。
賃貸経営を行うオーナーが税務調査でチェックされるポイント
実際に税務調査の対象となった場合、どのような項目がチェックされるのか気になる方も多いでしょう。ここでは、賃貸経営を行うオーナーが税務調査でチェックされるポイントを解説します。
収入の計上が漏れていないか
税務調査において、収入の計上漏れはチェックされるポイントの一つです。よく指摘される項目でもあるため、注意しましょう。
不動産投資の主な収入源は家賃収入です。銀行振り込みの場合は管理がしやすいですが、現金の受け渡しで家賃を納めてもらっている場合などは申告が漏れやすい傾向にあります。そうならないよう、日ごろから丁寧に帳簿を付けることが重要です。
また、駐車場や自販機などから収入を得ている場合も、申告の際に計上しなければいけません。家賃以外の申告が漏れていないか、しっかりチェックしましょう。
消費税分がきちんと申告されているか
消費税分が適正に申告されているかどうかも、チェックされるポイントです。不動産投資における課税対象の内訳はややこしいため、とくに注意が必要といえるでしょう。
アパートやマンションの家賃や入居時の敷金・礼金・共益費などは基本的に非課税ですが、事業用のオフィスや店舗として物件を貸し出している場合の家賃は課税対象となります。用途によって課税対象かどうかが変わってくるため、注意してください。。
また、事業用で物件を貸し出している場合でも、課税売上高が1,000万円以下であれば非課税となります。不動産投資の規模が小さい場合であれば、消費税の計上は必要ありません。
物件を貸し出している用途や売り上げの規模をしっかり確認して、適正な消費税の計上を心がけましょう。
経費の計上が適切かどうか
税務調査では、経費の計上が適切かどうかも厳しくチェックされます。そのため、私的な支出を経費として計上していないかしっかりチェックしましょう。
不動産投資においてとくに指摘を受けやすいのが接待費や交際費の項目です。不動産投資でこれらの項目が経費として必要な場面は少ないと考えられているため、厳しくチェックされるポイントといえるでしょう。
管理会社や不動産会社との打ち合わせの際の飲食代は経費として認められますが、1人での食事や家族・友人との食事など、不動産投資と関係のない飲食代は当然ながら計上できません。
接待費や交際費として計上する際は、経費として適切であることを証明するために「誰とどんな打ち合わせをしたのか」をメモしておくとよいでしょう。
不動産オーナーがするべき税務調査への対策
税務調査の対象となった場合にチェックされるポイントが理解できたら、それに向けた対策をとることで、自信を持って税務調査に応じることができるはずです。ここからは、不動産オーナーがするべき税務調査への対策を解説します。
会計処理を丁寧に行う
税務調査に向けた対策として、日ごろの会計処理を丁寧に行うことが重要です。
当たり前のように感じるかもしれませんが、これができずに申告期限ギリギリで帳簿を付け、不完全な資料をもとに誤った申告をしてしまうケースが数多く報告されています。
日ごろから丁寧に管理をしておけば、確定申告の時期に焦る必要もなくなり、正確な申告が可能になるでしょう。
また、私的な計上が疑われる可能性が高い経費は、適切な経費であることを示すためにできるだけ証拠を残しておくのがおすすめです。とくに交際費や接待費などの項目は厳しくチェックされるポイントであるため、記録を詳しく残しておきましょう。
意図的な脱税は絶対にしない
当然ですが、申告内容を誤魔化すなど、意図的な脱税は絶対にしないことを心がけましょう。
故意に売り上げを隠す「所得隠し」や、私的な経費計上を行った場合、税務調査で発覚する可能性は極めて高いといえます。このような事実が発覚すると、加算税などのペナルティが発生し、場合によっては刑事罰が課されるケースもあるため注意が必要です。
税務調査は、確定申告を行ったすべての方が対象となる可能性があります。売り上げの規模が少ないからといって、意図的に虚偽の申告を行うことは絶対に避けましょう。
不動産に強い税理士に確定申告の立ち合いをしてもらう
適正な申告を行っていれば、必要以上に税務調査を恐れる必要はありません。
不動産に強い税理士に確定申告の立ち合いや相談を依頼すれば、より安心して確定申告の手続きを行うことができます。
税理士に依頼した場合、適正な申告を手助けしてくれる他にも、節税効果の最大化や時間の節約といったメリットも発生します。反対にデメリットは、依頼した際に費用が発生することですが、最近では数万円で請け負ってくれる税理士も増えてきています。
依頼する時期や税理士によって価格や対応に差はありますが、時間対効果や節税効果などを踏まえて検討した場合、税理士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。申告にまつわる作業や帳簿の管理が苦手な方には、とくにおすすめです。
税理士に依頼した場合の費用
「確定申告書だけ準備してほしい」「帳簿の作成から申告まで一貫して管理してもらいたい」など、税理士への依頼範囲で費用は大きく異なります。もちろん、同じ依頼内容でも税理士によって金額も変わってきますので、慎重に検討しましょう。
申告書の作成のみであれば数万円程度
申告書の作成のみであれば、数万円程度の費用で済む場合がほとんどです。この場合、記帳は依頼者自身で行う必要があります。
記帳の経験が少ない場合は、それ自体難易度が高いと感じるでしょう。しかし、インターネット上で取得できる会計ソフトなどを活用すれば、知識や経験があまりない方でもわかりやすい帳簿の作成が可能となる場合もあります。
税理士に依頼する場合、記帳からお願いするかどうかで費用が大幅に変わってくるため、こうした会計ソフトを利用して帳簿の作成を自身で行うのもおすすめの方法です。
帳簿の作成から依頼する場合は数万~数十万
税理士に帳簿の作成から依頼する場合は、数万~数十万円の費用が必要です。事業規模や年間売上高によって税理士の業務量が変わってくるため、費用にも大きく影響します。
目安として、年間売り上げが500万円に満たない場合は、10万円以内の費用で請け負ってくれる税理士が多い印象です。500万〜1,000万円ではおよそ15万円、1,000万円以上の場合は、およそ20万円以上が依頼料の目安となります。
もちろん、上記の金額はあくまで一例であるため、税理士に依頼する場合は複数の選択肢から比較するのがおすすめです。税理士との相性も重要となってくるため、総合的に検討して依頼する税理士を決定しましょう。
まとめ
今回は、アパート・マンション経営にも関わる税務調査でチェックされるポイントや日ごろの対策について解説しました。
一昔前までは、不動産投資を行う個人事業主が税務調査の対象となる可能性は限りなく低いといわれていましたが、最近では不動産オーナーが税務調査の対象となる事例も増えてきています。
日々の適切な会計管理の積み重ねが、申告の精度につながります。管理や申告がいい加減な方ほど、税務調査は不安なものです。本記事を参考にしっかりと対策し、税務調査の対象となっても自信を持って応じられるよう準備しておきましょう。
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