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資産活用、賃貸管理、大規模修繕のダイニチ

⼤規模修繕

賃貸住宅のオーナーなら知っておきたい「⼤規模修繕」①⼤規模修繕とは

アパートやマンションなどの事業用物件において収益力を維持していくためには、長期的かつ計画的な修繕が欠かせません。不具合を早期発見し、適切な時期にメンテナンスを行うことで、建物の劣化を防ぎ、住宅の性能や価値を維持することができます。部分的な修繕ではなく、外観や共用部全般を対象にした大がかりな修繕工事を「大規模修繕」といいます。

なぜ大規模修繕は必要か

鉄筋・鉄骨コンクリート造(RC造)であれ木造であれ、賃貸住宅を所有するオーナーにとって、多大な費用が必要となる大規模修繕はなかなか頭の痛い話です。

「何から手をつけるべきかわからない」

「大規模修繕をしたからといって、経営がうまくいくとは思えない」

「資金が確保できるかどうかわからない」etc.

これらは大規模修繕に踏み切れないオーナーからよく聞かれる言葉です。

 

しかしながら、近年の日本における賃貸住宅事情を鑑みると、安定的な賃貸住宅経営のためには計画的に修繕を行う大規模修繕が必要と言わざるを得ないでしょう。

というのも、現在、日本には1,800万戸を超える民間賃貸住宅があり、この先、高経年化した賃貸住宅のストックは大幅に増えると見込まれています。一方で、居住者側のニーズは多様化しており、賃貸住宅経営をめぐる社会経済情勢はさまざまに変化していくと予想されています。こうした時代の流れに対応していかなければ、所有する賃貸物件はどんどん陳腐化し、空室率の上昇や家賃水準の引き下げを強いられる恐れがあります。

 

したがって、安定した賃貸経営のためには、計画的に大規模修繕を行い、ニーズに合わせて機能性やデザイン性を向上させることが必要といえます。

修繕or改修、リニューアルorリノベーション?

大規模修繕とはどんなものかを詳しくみていく前に、混同しがちな用語について改めて確認しておきましょう。

 

まず、「修繕」と「改修」です。「修繕」とは、経年やその他の外的要因によって劣化した建物や設備の全体または一部を、支障なく利用できる状態に回復させることをいいます。その目標は、新築時の水準にまで戻すことです。

 

これに対して「改修」は、建物や設備の性能を新築時の水準よりもさらにグレードアップ(改良)させることです。社会や時代の変化によって、住宅に求められる機能やデザインは変わっていくため、新築時の水準に戻すだけでは陳腐化しかねません。そこで、修繕および改良によって建物全体の性能を時代に合わせて高めることが求められます。

 

この「改修」と同じ意味をもつのが「リニューアル」です。一方、最近よく耳にする「リノベーション」とは、「リニューアル」よりもさらに価値を向上させることを意味します。利便性や先進性など一歩先行く改修が「リノベーション」といえるでしょう。

大規模修繕の6つのメリット

では、大規模修繕を行うと、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。大きく分けて下記の6点が挙げられます。

 

 

賃貸物件における大規模修繕のメリット

1.建物の長寿命化

計画的な修繕により、事業用資産としての寿命を延ばせます。その結果、建て替えよりも利益が見込めるケースがあります。

 

2.安定した入居率

案内時の第一印象が良くなり、入居が決まりやすくなる上、安定して高い入居率を維持できます。

 

3.家賃水準の維持

住まいとしての性能・価値を維持できるため、家賃を下げなくても入居が決まりやすくなります。

 

4.安心・安全な建物の実現

手入れが行き届いた物件は、外壁タイルの落下や共用部(階段や廊下など)の劣化による転落事故などのリスクを軽減。安全な建物はオーナーにも入居者にも安心感をもたらします。

 

5.緊急工事の減少

突発的な不具合による緊急対応件数が少なくなり、それにかかっていた費用を削減することができます。

 

6.高い節税効果

大規模修繕にかかる費用は施工内容によっては減価償却できるため、設備投資を経費として計上でき、所得税や法人税を抑えられます。

 

これらのメリットを踏まえると、下記のような好循環が生まれ、安定した賃貸経営につながります。

 

国土交通省のシミュレーションでも「計画修繕が有利」

国土交通省住宅局による「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について ~計画修繕を含む投資判断の重要性~」(平成31年3月)においても、計画修繕の必要性を説いています。

 

同報告書によれば、計画修繕の実施が賃貸経営の中長期的な利回りや内部収益率にどのような影響を及ぼし得るのか、一都三県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県における県庁所在地主要区)および全国(一都三県以外の地域)それぞれで、木造とRC造別に計画修繕の有無による収益評価のシミュレーションを行いました。

それによると、長期的に計画修繕を実施したケースがいずれも有利であることが判明しました。表面利回りが5~6%程度となる家賃収入を確保できれば、実質利回りはプラスを維持。一定の家賃水準および入居率を確保しつつ、計画修繕を実施し、賃貸住宅としての質や価値を長持ちさせることは、安定した賃貸住宅経営の選択肢の1つであることを確認したと結論づけています。

(出典:「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について ~計画修繕を含む投資判断の重要性~ 【概要版】」)

計画的に修繕を行うための4つのポイント

大規模修繕を含め、計画的に修繕を行っていくためには、どのタイミングで点検と修繕を実施し、どの程度の費用が必要となるかをきちんと把握しておくことが大切です。まずは、向こう25~30年の修繕計画と収支をまとめた「長期修繕計画」を作成しましょう。専門的な知識を必要とするので、管理会社や建設会社、設計コンサルタントなど専門家に相談することをおすすめします。

 

Point1 長期修繕計画は定期的に見直しを

長期修繕計画は一度作成したら完成というものではありません。年月が経てば、実態とのズレが生じたり、災害などで劣化状況が変わったりすることがあります。また、技術の進化により、当初の計画よりも割安で修繕工事ができる場合もあれば、物価や人件費が当初の見込みよりも上昇する場合もあります。それゆえ、日常的な点検や専門家による定期点検を行い、その結果を踏まえて、長期修繕計画を定期的に見直すことが必要です。

 

Point2 こまめな点検で不具合の早期発見を

長期修繕計画によって、修繕時期の目安を把握したら、次は実際に修繕を行うタイミングを見極めましょう。それにはこまめな点検が欠かせません。日常的な点検や定期点検などにより、不具合のある箇所を発見します。早期発見できれば、部分的な修繕で済み、将来的なコストを抑える効果も期待できます。

 

 

Point3 建物診断で無駄のない修繕工事を

点検によって不具合のある箇所を発見したり、長期修繕計画による修繕時期が近づいたら、建物診断と精密な検査を行いましょう。建物や設備の劣化、損傷の程度・範囲などを詳細に把握し、その結果に基づいて、具体的な修繕内容を計画し、修繕工事を実施します。修繕のなかには、緊急性を要するものと、そうでないものがあります。現場調査によって優先順位をつけ、資金面を考慮しながら、無駄のない効果的な修繕計画を立てることが重要です。

 

Point4 工事後は記録を残して次に備える

修繕工事が終了したら、工事仕様書や設計図、現場写真などの資料はすべて保管しておきましょう。これらが次回の修繕時に大変役に立ちます。工事終了は、次の修繕に向けたスタートでもあるのです。このように、長期修繕計画に基づきながら、点検→診断→計画→工事を繰り返していくことで、安全で質の高い賃貸住宅を維持することができます。

修繕工事の発注方式は3パターン

実際に修繕工事を発注する場合、下記の3つの方式があります。それぞれメリットもあればデメリットもあるので、比較検討した上で選択することをおすすめします。

 

①管理会社一任方式

調査・設計から施工、工事監理、検査までを管理会社に一任する方式。多くの場合、管理会社から施工会社へ外注します。

 

メリット

・すべてを一括して委託するので、オーナーの手間が省けます。

・工事中のクレームや要望などの窓口が日常管理業務と同じなので、安心感があります。

・周辺物件の入居状況・家賃の動向を踏まえ、リノベーションなど効果的な投資提案を期待できます。

 

デメリット

・いわゆる丸投げになってしまうため、外注先の施工内容、発注金額等など不透明になる恐れがあります。

・中立的な立場で、設計や施工に関する定期報告ができる能力・体制のある管理会社を選ぶ必要があります。工事内容に応じて必要な有資格者を置き、工事開始後も進捗状況をしっかり確認する工事監理体制があるかがポイントとなります。

・管理会社から施工会社へ外注する場合は、管理会社への委託費用が発生します。

 

②責任施工方式

調査・設計から施工、工事監理、検査までを施工会社に一任する方式。

 

メリット

・初期の段階から施工などに配慮した検討を行うことができます。

・オーナーが1社指名での発注となるため、公募・入札方式を採用すれば、修繕費の削減を図れる可能性があります。

 

デメリット

・オーナー自らも修繕工事についての専門知識が必要となり、着工後は進捗状況をチェックしなければなりません。

・施工会社自身が設計、工事監理も行うため、中立的な立場で、設計や施工に関する定期報告ができる能力・体制のある施工会社を選ぶ必要があります。

・施工結果が施工会社の力量に左右されるため、施工会社の選定が簡単ではありません。

・1社指名での発注は、割高になる場合もあるため、施工内容と金額の内容を精査する必要があります。

 

③設計監理方式

調査・設計、施工会社の選定、工事監理を設計コンサルタントに委託し、施工は施工会社に発注する方式。

 

メリット

・専門家である設計コンサルタントが中立的な立場で診断・設計し、オーナーはアドバイスを受けて施工会社を選定できます。

・公募で施工会社を選定する場合、競争原理が働き、修繕費の削減が期待できます。

・統一仕様書による入札が可能なので、見積もりなどの比較検討がしやすいです。

 

デメリット

・設計コンサルタントが設計および工事監理を行うため、その費用が発生します。

・賃貸住宅の計画修繕に関する設計・工事監理に精通した設計コンサルタント会社が少ないことです。

大規模修繕の内容と大まかな流れ

先述したように、計画的に行う修繕工事の中でも大がかりな工事を大規模修繕といいます。実際にどんな工事を行うのか、大まかな流れとともにご紹介します。

 

Step1 入居者への周知と近隣へのごあいさつ

まず、大規模修繕に必要な関係官庁への申請書類を提出後、賃貸住宅の入居者に対する案内を行います。工事説明会を開催し、工事内容をはじめ、施工体制、工事工程、作業時間、安全対策、現場事務所の設置、注意とお願い事項などを伝えます。また、近隣へのごあいさつも行い、着工に移ります。

 

Step2 仮設工事

工事のための準備として、資材置き場、仮設倉庫、仮設トイレなどを設置するほか、足場や工事で使用する電力と水の引き込み、排水処理、各所の養生といった仮設の設備を設置します。これらは竣工後、すべて撤去されます。

 

Step3 下地補修工事

マンションの外壁のひび割れ、タイルの浮き、塗膜剥離などの状況を把握するため、下地調査を実施します。ひび割れであれば、大きさ、発生箇所、発生要因によってポリマーセメントペーストを擦り込んだり、エポキシ樹脂を注入したりします。その後に、コンクリート補修、タイル張補修を実施します。

 

Step4 本工事着工

・外壁塗装工事

外壁の塗膜が劣化すると、塗膜が剥がれ、その部分から雨水などが侵入し、躯体を徐々に傷めていきます。そこで、外壁に付着した汚れや既存の塗膜を除去し、劣化した部分を補修。その上で新たに塗装します。既存色から新規色にすればイメージ一新。建物全体の美観が向上します。

 

・防水工事

天候の影響を直接受ける屋上やバルコニー、外部に開放された廊下などは、とくに劣化しやすい箇所です。経年劣化によってひびが生じると、雨水が内部に入り込み、構造部に大きなダメージを与えてしまいます。そこで、不具合部分を補修した上で防水工事を行います。防水工事にはさまざまな種類があるので、メリットとデメリットを確認した上で選択する必要があります。

 

・シーリング工事

建物のつなぎ目やサッシ窓のまわりに使われるシーリング材は、建物の防水性を高め、機密性を確保する重要な役割を果たします。しかし、経年劣化によって硬化すると、こうした機能を十分に果たせなくなり、構造部に影響を与える恐れがあります。そこで、シーリング材を一新します。なお、足場の設置を必要とする部位が多いので、大規模修繕のときに建物全体のシーリング工事を行うのが一般的です。

 

・鉄部塗装工事

玄関扉、エレベーター扉、手すり、パイプスペースなど鉄製の部位は、年数が経つと錆が生じてくるものです。そのままにしておくと、見た目はもちろんのこと、耐久性がなくなり、思わぬ事故を引き起こしかねません。そこで、錆や塗膜の剥がれ、キズを除去した上で錆止め、下塗り、中塗り、上塗りを行います。耐久性はもちろん、美観も向上します。

 

・各種設備工事

給水設備、排水設備、電気設備、ガス設備、TV共同受信設備、電話・インターネット設備、排気設備、消火・防災設備などの改修工事を行います。

 

・その他工事

玄関扉や集合郵便受け、消火栓ボックスなどの補修・交換、建具・金物工事などを行います。また、LED照明器具への交換、掲示板や館銘板(建物名を表す表札)の交換なども。劣化した部分の修繕だけでなく、時代に合わせた機能を新たに取り入れることも大規模修繕ではよく行われます。

 

Step5 中間検査

本工事全体の区切りごとに中間検査を行います。工程通りに作業が進んでいるか、補修が適切に行われているかなどを確認します。

 

Step6 足場解体前検査

足場解体の直前の段階にも検査を行います。この検査では、外壁タイルや屋上の防水工事の改修確認、外壁塗装などの仕上げの確認を行います。中間検査も足場解体前検査も、問題のある箇所があれば、適切に対応します。

 

Step7 足場解体工事・清掃クリーニング

足場解体工事の後、現場周辺の清掃クリーニングを行います。地域の中で愛される賃貸物件であり続けるためにも、工事期間を通じて毎日の片付けや現場周辺の清掃は徹底しておく必要があります。

 

Step8 完了検査

上記の工程がすべて終了したところで完了検査が実施されます。その後、工事保証書、工事竣工書類などともに、建物の引渡しとなります。

 

安定した賃貸経営をめざすなら大規模修繕は不可欠

大規模修繕には多大な費用がかかるため、オーナーにとっては躊躇しがちですが、これからの賃貸住宅市場を鑑みると、安定した賃貸住宅経営には欠かせないものといえるでしょう。計画的に修繕を行えば、その費用を確保することができます。

 

必要な修繕を行わずに建物が劣化していけば、入居率が下がり、修繕や改修の費用が確保できなくなり、さらに劣化が進むという負のスパイラルに陥ってしまうでしょう。入居者が安心して暮らせる住まいを提供していくためにも、計画的な修繕は必要です。

 

しかしながら、それにまつわる業務をオーナー自らが一人で行うことは大変です。専門的な知識も必要になるため、信頼できる専門家と連携して行うことをおすすめします。

ダイニチの⼤規模修繕について

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