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賃貸住宅のオーナーなら知っておきたい「大規模修繕」⑥マンションの2回目以降の大規模修繕で押さえておくべきポイント

大規模修繕は1回だけでなく定期的に実施しなければなりません。
そのため、仮に1回目の大規模修繕を経験していたとしても、2回目以降の大規模修繕について不安や疑問を抱えている人は数多くいます。
2回目以降の大規模修繕には、1回目にはない注意点が多く、よく理解しておかないと失敗してしまう可能性が高いためです。
したがって、この記事では1回目と2回目の大規模修繕の違いや、2回目以降の大規模修繕の注意点などについて詳しく解説していきます。
2回目以降の大規模修繕を実施する際の参考にしてみてください。
1回目の大規模修繕との違い
2回目の大規模修繕は、1回目と同様の修繕ではありません。2回目は最初の大規模修繕時よりも築年数が長くなっており、劣化している箇所が多いためです。
そこでここでは、2回目の大規模修繕と1回目の大規模修繕の主な違いについて説明していきます。
1回目よりも修繕箇所が増える
2回目の大規模修繕は1回目と比較すると、修繕箇所が増えるケースが多いです。1回目は2回目よりも建物の経過年数が少なく、建物や設備の老朽化が進んでいないため、2回目の大規模修繕に先送りできる工事が数多く存在するためです。
実際に、国土交通省が2018年5月に公表した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を確認しても1回目より「給水設備」や「健具・金物等」の工事が多くなっています。
出典:国土交通省 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(https://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf)
このように、1回目と2回目の大規模修繕では、修繕箇所が増えたことにより、費用が増えるケースも多いです。
1回目のノウハウを活かせる
2回目の大規模修繕は1回目のノウハウを活かすことが出来ます。
すでに大規模修繕を経験しているため、住民との打ち合わせや管理会社、建築会社との打ち合わせなど、様々な手続きを経験しているためです。
例えば、スケジュール感なども1回目の大規模修繕を参考にして進めることが可能です。
また、「工事の見積書の精査や工事内容の確認」、「どの会社に依頼するか」についてのポイントなども理解しているため、スムーズに業者の選定もできます。
さらに、1回目の大規模修繕の反省点を活かすこともできるので、2回目の大規模修繕は1回目よりも成功する可能性が高いです。
ただし、1回目の大規模修繕が完了した際に、反省点の洗い出しを行っていないと、同じ失敗を繰り返してしまう可能性があります。
このため、1回目の大規模修繕の経験を活かせるように改善点などを振り返るようにしましょう。
2回目の大規模修繕の主な工事内容
2回目の大規模修繕は、1回目よりも経年劣化が進んでいるため、1回目では工事しなかった場所や1回目よりも大規模に修繕しなければならない箇所などが存在します。
では、具体的にどのような修繕が必要なのでしょうか?
ここでは2回目の大規模修繕で行う主な工事内容について紹介していきます。
屋上防水
1回目の大規模修繕では、一部の補修で問題なかった屋上防水も、経年劣化によって全体的に修繕しなければならなくなります。
そのため、2回目の大規模修繕では、屋上防水の工事が大規模になるケースが多いです。
そのため、費用も高額になることが多く、事前に準備しておく必要があります。
なお、1回目の大規模修繕の際に徹底的に屋上防水を修繕した場合には、2回目の大規模修繕でも劣化がさほど進んでおらず、部分補修で済むケースも珍しくありません。
金物類
金物類とは「集合郵便受け・掲示板・宅配ロッカー」などのことで、20年以上経過すると、サビや破損などが増えてしまいます。そのため、2回目の大規模修繕での取り替えが必要です。
ただし、住民が普段から使用する場所であるため、不具合が発生していたり、サビがひどいなど支障がきたしている状況であれば、大規模修繕を検討していない段階でも対応することをおすすめします。
また、宅配ロッカーが設置されていないマンションの場合は、住民からの要望を確認し新しい設備として設置することで、入居率の向上や退去率の低下を期待することが可能です。
エレベーターのリニューアル
エレベーターの寿命は20年〜25年といわれており、2回目の大規模修繕ではエレベーターのリニューアルが必要になるケースが多いです。
この際、リニューアルにかかる費用は、高額で工事の方式によって費用は異なりますが、500万円〜1,500万円程度が相場になります。
ただし、特に適正な保守点検を行っていない場合は、エレベーターの寿命は短くなり、早期に入れ替えが必要になってしまうので要注意です
なお、エレベーターのリニューアル方式には、以下の3つの種類があります。
全撤去型リニューアル方式 | 準撤去型リニューアル方式 | 制御部品型リニューアル方式 | |
---|---|---|---|
内容 | 既存のエレベーターをすべて入れ替える方法 | エレベーターの主要部以外の取り替える方法 | エレベーターの制御関連のみ取り替える方法 |
工事費 | 1,200万円~1,500万円 | 700万円~1,000万円 | 500万円~700万円 |
上記のように、方式によって工事費が大きく変わってくるため、予算と照らし合わして最適な方式を選ぶようにしましょう。
貯水槽や消防設備などの設備関係
貯水槽や消防設備などの設備関係も、20年〜25年程度で取り替えを行う必要があるケースが多いです。
こういった設備が劣化すると、安定した水の供給ができなくなったり、火事になった際に設備が使用できないといった事態になりかねません。
そのような事態にならないためにも、設備を適切な状態にしておかなくてはならず、1回目の大規模修繕の際には必要がなかった設備の入れ替えや修繕を行う必要が出てきます。
2回目以降の大規模修繕の実施時期

2回目のマンションの大規模修繕を行う時期は、国土交通省が公表している「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、築26~33年前後に実施していることが多いです。
大規模修繕 工事回数 | 築年数 | |||
---|---|---|---|---|
下位25% | 中央値 | 上位25% | 平均 | |
1回目(n=473) | 13.0年 | 14.0年 | 16.0年 | 16.3年 |
2回目(n=249) | 26.0年 | 28.0年 | 33.0年 | 29.5年 |
3回目以上(n=151) | 37.0年 | 40.0年 | 45.0年 | 40.7年 |
出典:国土交通省 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(https://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf)
しかし、一般的に大規模修繕の実施は、外壁塗装などの耐用年数を加味して12年周期で行うのが良いとされています。この周期に則ると、2回目の大規模修繕の目安は築24年です。
とはいえ、不動産の立地環境や1回目の大規模修繕の工事内容など、様々な要因によって修繕時期は前後するため、よく検討することが重要になります。
実際の実施時期に関しては、建物診断を実施して不動産の劣化状況を確認してから実施するようにしましょう。
2回目以降の大規模修繕で注意するべきポイント

2回目以降の大規模修繕で注意するべきポイントを理解しておかないと、費用が足りないという事態や入居者が退去してしまうといった事態になりかねません。
1回目の大規模修繕とは違って経年劣化が進み、建物の見栄えが悪くなってしまうなど、不動産の魅力がさらに下がってしまうためです。
そこで、ここではそういった事態にならないために押さえておくべきポイントを紹介していきます。
建物診断など専門業者に診断してもらう
2回目の大規模修繕は、1回目よりもさらに適切なタイミングで必要な工事を行うことが重要になります。
修繕時期が遅れてしまうと、建物の劣化が進行してしまい、いざ大規模修繕をする際に多額の費用がかかってしまうためです。
建物診断を実施して、大規模修繕の実施時期が遅れないようにすることが重要になります。
工事の優先順位を決める
2回目の大規模修繕は工事の優先順位を決めて、必要な工事のみを行うことが重要です。
修繕箇所が増える傾向にあるため、多額の費用がかかってしまうケースが多く、費用が足りないという事態になるケースも少なくないためです。
そういった事態にならないためにも、工事の優先順位を決めておいて、必要性が低い工事を実施せずに費用を抑えるようにしてください。
ただし、安易に工事を先送りしてしまうと、3回目の大規模修繕の費用が膨大になってしまうため、必ず専門家に相談して優先順位を決めることが重要です。
設備のグレードを上げる
設備のグレードを上げることも、2回目以降の大規模修繕で重要なポイントになります。
1回目では導入したくてもできなかった設備も、年月が経過していることにより、1回目の大規模修繕のときよりも、設備の値段が下がり、比較的安価に導入できる可能性があるためです。
新しくグレードの高い設備が導入出来れば、入居者の満足度も上がるため、退去率の低下も期待できます。
入居者のニーズを汲み取る
2回目以降の大規模修繕では、入居者のニーズを汲みとり、設備や共有部分の工事を行うことも重要です。
例えば、年月の経過とともに入居者が高齢化していくため、手すりの設置や段差をなくすといったバリアフリー化が喜ばれます。
このように、入居者のニーズを汲み取り改善することで、退去が増える心配が減るばかりか、さらなる入居者が増えることが期待できます。
このため、2回目の大規模修繕では建物の劣化や不具合の修繕だけでなく、入居者が快適に暮らせるような工事を行うことも検討してみてください。